自由気ままにリリカル記
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七話~無印一歩手前~3月15日修正
入学時に色々あったが、それから特に魔法関係の出来事は何も起きず、無事に小学三年生へと俺達は進級した。
津神や、神白、佛坂などの(見た目が)キラキラ転生者も入学時から何も変わることなく毎日ナデポ、ニコポを元気に発動している。二年間使い続けてきたにも拘らず、全くコントロール出来ていないようだが……いや、神白は地味にコントロール出来ている、か?
まあ、そのおかげで聖祥の比較的ニコポ、ナデポに耐性がある生徒――主に原作キャラ――のストレス過多を招いているようだ。
俺のこの二年の日々は学校ではキラキラ転生者共の尻ぬぐい、それ以外では家具を買ったり、東雲と適当に図書館へ繰り出したり、戦闘技術をなまらせないようにしたり、ルナがなんとか食べ物を食べれるようにしたが、その時に衝撃的なことが分かったり……
と、まあこんな感じのことをしていたが、もう原作が始まる時期である。
そして、そろそろキラキラ転生者共の尻ぬぐいをいい加減止めたくなってきた俺だ。
あいつらは毎日三人で寄ってたかって、同級生のみならず聖祥の全学年をニコポ、ナデポで洗脳にしやがるため、俺一人ではフォローが間に合わなくなってきたのだ。っていうか無理。最早イタチごっこってレベルじゃねえよ。
かたや、笑いかけたり撫でるだけで、おとせる。かたや目を数秒合わせるか魔力を流し込む。それも気づかれないように。
やり方だけを見ると十分俺の解呪する速度の方が上になることも可能にも思えるが、実態は全く違う。
いくら俺が異世界でもそうだったが、隠密行動を得意としていても他人に何をしているか気づかれずに解呪するには少々時間がいる。
だから堂々と洗脳出来るあいつらの方が速度が上なのだ。非情にむかつくことだが。
しかも、そのフォローのお陰で日々解呪や無音歩行、気配を背景と同化させることが上達していき、今となってはあの恭也さんに気づかれずに背後から驚かすことも可能となってしまった。いつもの鍛錬ありがとうございます。
―――もっと崇めなさい!!―――
やめろ。
そこで以前は、少しでも洗脳が集中しやすそうな原作キャラの近くに注意を払っておくためにもなんとかして思い出そうとして……。気合で思い出せたのだが、既に俺は原作の何人かと仲良くなっていたらしい。月村や高町、リニス、特に……今は名前が無いが管制人格なんてその最たる例だ。
そして、今現在も俺に憑いている幽霊。アリシア・テスタロッサ。原作主要キャラのフェイト・テスタロッサの元となった少女ともよく話す仲だ。
まあ、最近は少しうるさい気もするが。
―――失礼な! 私はうるさくないよ!!―――
ほら、こうやって体の内側から語りかけてくる。
なんでも誰かに憑いていないと、感情の制御が出来ないらしく、当初何のあてもなく自身の母の近くをふわふわ浮いていたら、五感――味覚は幽霊になった時点で無かったらしいが――が徐々に狂っていく感じがして、後少しで自分が自分じゃなくなったかもしれないと、俺の体から頭だけ出して話していた。
まあ、そんなことはおいといて、
キラキラ転生者――金髪や銀髪のイケメンの転生者達――は俺が懸念していた思慮深く、常に先を読んで行動する厄介なタイプではなくどうやら全員がおつむが弱いタイプの転生者らしい。……いや、明らかにそうだ。と断定することは出来ず、あいつらの考えが読みづらいのだが……特に神白は時々誰もいない所でぼんやりと何かを思案する様子を見せるから更に分からない。まあ、佛坂なんかは、誰か分からない人物に何度気絶させられても「最近貧血気味か……? 授業中に倒れたらなのは達が心配してしまうぜ!」と嬉しそうに一人言を言うのだからおつむが弱いのは間違いない。だが、少しは学習しろと言いたい。
そして嬉しい事が判明して、どうやらニコポ、ナデポは洗脳、解呪を繰り返す毎に耐性が出来上がっていくらしく、女子の何人かの中にはキラキラ転生者の事を見て、多少嫌な顔をする人も現れてきている。ぶっちゃけ、このことが俺が尻ぬぐいを止めたいと思った理由でもある。そもそもただの善意でやっているのだから勝手に止めてもいいだろう。もし万が一学級崩壊を起こしかけた時だけまた解呪を再開すればいいさ。
そんなただ解呪し続けるという単純で長い作業をやめようかと思う俺は今、クラス表が張り出されている場所に他の生徒と一緒に眺めていた。
「ふむ……二組か」
三年のクラス割り振りを見て呟く。俺は原作組の集まっている一組とは違い、逆に高町、月村、バニングス、神白、津神、佛坂、縁、蒼也という、俺が見るにハーレム気質、というより女性にモテそうな要素が盛り込まれているのに、原作介入を拒む蒼也にとっては最悪に面倒くさそうな展開となっている。
何か原作組にお節介を焼こうとしたらキラキラ転生者がホイホイやってきて、原作組とは関わりたくないと無視を決め込んでも、あいつのことだからいつのまにか原作組の興味を惹くことを無意識にしているだろうと思う。絶対あいつ図書館とかで無意識に八神はやてと仲良くしてるよ。だって管制人格がそんなことぼやいてたし。「蒼也という魔導士……我が主の心の支えになってくれればいいのだが」とかね。
それにしても、完成人格がいる真っ暗な場所でも外の様子を見ることは出来るのな。
ふと、背後に見知った気配を感じた。
――背後からは絶対に近寄るな――
お前はどこの何サーティーンなんだよ。
――アリシアサーティーン!!――
さて、恐らく背後で驚いた気配を出しているのは紫少女だと思うが。
……驚いた気配? 何故?
「え。 門音君は違うクラスなの!?」
「ああ、そうだよ。月村さんと一緒のクラスになれなくて残念だなあ……とでも言うと思ったのかね?」
「うん。それに今年こそはその左腕の布の中身を見せて貰うって決めてたのに…」
「だから前から言っているように、この世には邪竜という世界を滅亡へと導く悪しき輩がいてだな……それが俺の左腕に封じられているからこの布を外すことは出来ないんだ。残念だったな」
――厨二乙――
……うっす。
「もう。そんなこといつまでもしてると……いつか私以外に友達いなくなるよ」
そう言って頬を膨らませる月村を苦笑しながら肩を竦め、二組の教室へと入る。
外すと絶対に驚くから左腕の手袋は外せないね。その布を取っても何も無いから。
――本当に何も無いよねー――
無言で肯定の意を返す。
昔、まだそこまで込み入ったことまで話す程仲良くなかった頃に、月村に聞かれたのでそんな本当の答えを出してみたのだが、彼女としては、お気に召さなかったらしく、それ以来定期的にあの手この手で中身を見ようと挑んで来る。手袋を掴んでから少女とは思えない程の握力で引っ張ったり、俺が外す時を見るためか学校にいる間は四六時中こちらをガン見していたこともある。
いつだったか昼休みに居眠りしている所をカッターで切ろうとしていたのには驚いた。
まあ、その程度じゃこれは傷一つつかないけど。
―――邦助の布は世界いちいいいいいいいいいいい!!―――
うん、少し落ち着け。
―――はい―――
肌触り最高で何の布で出来ているか分からない俺の二の腕から左手までをすっぽりと覆う手袋。ちゃんとこの中身を当ててくれれば、素直に見せるつもりだが今まで当てられたことは、今頃神様の下で遊んでいるであろう親友達以外に気づかれたことはない。
―――私は中に住み着いているから全部丸見えだけどね―――
そりゃ反則だからなしな。
さてと、毎年恒例の自己紹介の時間がやってきたようだし、またいつものようにやるか。
「俺の名前は門音邦介。趣味は読書。特技は左腕から邪王滅殺拳を放つことだ。だが、見せろと言われてもやらないぜ? 俺が本気を出すと地球を壊しちまうからな……っふ」
……こんなもんで良いだろうか?
内心ある種の高揚感に襲われながらクラスを見渡して鼻で笑う。ここは重要だ。
すると、女子達は冷たい目で俺を一瞥し、男子達は若干イラついたような顔をする。計画通りである。
中二的なキャラを作るのが最近地味に楽しいということもあるが、これはある意味ではちょっとした訓練でもある。
少しでも他者にインパクトを与えて常に誰かの目が俺に集まるようにしている状態で、俺は誰にも見つからないことは出来るのか、ということだ。二年の頃から始めているが中々上手くいかない。偶に目覚めてしまった熱狂的な男子が常に俺の動向を見張っているのだが、そいつの目を掻い潜りながら過ごすっていうのもドキドキして楽しいもんだ。
……何故か月村に対しては高確率で見つかってしまうのは気にしないでおきたい。何故か屋上にある梯子を上った先の場所で日なたぼっこしている所に謎の機械を持ちながら現れたことは記憶から忘れてしまいたい。何の悪夢だ。
昼休み昼食をすぐに食べ終わって、気配を隠しながら一組の教室へと向かう。
原作三人娘は屋上で弁当を食べていて、キラキラ転生者は元気にストーキングでもしているのか騒がしい奴らはいない。キラキラ転生者の煩さは群を抜くものがある。月村と話す際には勿論キラキラ転生者、特に神白と津神が突っ掛かってくるのだが勿論の如くモブと認識されており、魔力持ちとは気づかれていない。
もしかするとあいつらは元々魔力索敵技術が低いのかもしれない。
そして、教室の隅で本を無表情で読んでいる黒髪の少年、二年来の友人の東雲蒼也(しののめ そうや)を見つけ、目の前の席に座る。
「っよ、蒼也。今までは運良く離れていたのに今年になって運を使い果たしたな」
「……はぁ」
(何しにきたんだ)
蒼也が溜め息を吐いてこちらを若干半眼で睨みながら念話を送ってくる。やはり随分と御機嫌斜めなようだ、この転生者は。
「まあ、チェスでもしようぜ?」
(最近は余裕が出てきたから少し暇になったんだ)
(お前は呑気だな)
「……」
無言で表情を変えずに俺が懐から出して机に置いたチェス板から駒を取って並べ始める。
(それで、最近はどうなんだ)
(んー? まあ、いい感じに中二病の話し方が楽しくなってきてるよ)
(……うつすなよ?)
(いつかうつしてやるさ。そして元気にハーレムでも築いときな)
(……俺なんかが原作組に惚れられることもないだろうし、俺も惚れることはない)
(またまたあ、お堅い奴だな蒼也は。……まあ、ちゃんと原作組の動向くらいは教えてくれよ。何か異変があって地球が無くなりました。じゃ、洒落にならないしね)
(ああ。元からそのつもりだ)
(ありがと。それで、キラキラ転生者はどんな感じ? いつも通り暴走してる?)
(テストでバニングスに絡まれた時に奴らは来た)
(うん……ご愁傷様)
「おっと……。もう残り五分か。それじゃ、また明日も暇だったらチェスをしようぜ?」
「……面倒だ」
仏頂面の蒼也を苦笑して見ながら教室を出る。
(邦介。頼りにしてる)
……蒼也との信頼関係は上々だ。もう少ししたら親友と呼んでも良いかもしれない。
ああ、そうだ。確かあいつ剣の扱いに少し困っていたようだからちょっとくらいは教えても良いかな?
今考えてみれば、蒼也と戦ったことは一度もないな。今度戦ってみるのもいいかもしれない。蒼也がどんな特典を持ってるのかもしらないが、どれほどの実力を持っているか知りたい。
『お帰りなさい、マスター。クラスはどうでした?』
「ああ、俺は高町組とは一切一緒のクラスにならずに蒼也が単身でキラキラ転生者達と一緒にそこに放り込まれているよ」
『それは……蒼也さんにはご愁傷様としか言えませんね。あの方の性格上確か魔法関係にはあまり巻き込まれたくないって言いそうですよね?』
「まあね。だけど、いつかはその気持ちも変わって『あいつらを守ってやるんだ……!』みたいな考えに変わっているよ」
家のソファーに座ってルナの手入れをしながら会話をする。その際に二年前に拾った猫のリニスが背中が太ももにヒラリと飛び乗る。そして、俺の腹からアリシアが顔だけ出してリニスの頭に首を乗せる。
しかし、リニスもルナもアリシアの存在には気づかない。
「……ん? ちょっと頭が重いですね」
「気のせいだよ」
「そ、そうですか……」
可笑しいなあ、とばかりにリニスは首を捻る。
まあ、アリシアが見えない時点で気のせいに違いはないのだよ。
―――……むぅ。少し寂しいなあ―――
誰にも言わないで欲しいって言ったのはアリシアの方だろう?
なんでも、誰にも知られずにやりとげなければならないことがあるらしいが。
―――そうだけど……―――
まあ、俺も手伝えることなら手伝ってやるよ。まあ、内容を教えてくれればだけど。
「それで、蒼也というのは……どのような人物なんですか?」
そして喋った。あの時拾った猫が唐突に喋りだしたのには驚いたが使い魔が喋ると考えれば当たり前のように普通であった。
後に気付いたことだったが、原作キャラで、尚且つ死ぬ予定だった方の原作キャラだった。
「んー……面倒くさがりで真面目で、慎重な癖にお人好しって感じかな? 後、表情筋固まりかけてんじゃねえかってくらい表情は変化しないな」
実際に固まりかけているとは本人談のこと。
「なんというか……よく分からない人物ですね」
「まあ、そうなるよなあ」
『しかし、良い人物ではすーありますよ』
「言える。……まあ、いつかあいつが高町を落とすことを夢見ながら……寝るか」
『……はい』
後書き
幽霊を思いつきで文章中にぶち込んでみたら違和感が凄い。
現在テスト中だから、改訂するときには文章に馴染めるようにしたいと思います。
文章に違和感があれば、言ってください。私の文章力で修正できるなら修正します。
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