トリコ~食に魅了された蒼い閃光~
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第四話 激闘
前書き
この主人公は戯言シリーズが好きみたいです。
いざバロンタイガーを狩りにあの忌まわしき場所へと向かう。俺が嘲笑れたその場所でリベンジを果たすのだ。果たすつもりだったんだけど……。
「…………場所、どこだっけ?」
我ながらカッコつかねぇな。そう出会った場所がまったく思い出せない。
エレキバナナが実っている場所は分かるんだけど、目的の場所から迷いながら何時間もかけてエレキバナナエリアにたどり着いたため、よく分からない。
「だ、だっせぇ。俺だっせぇ~」
何が忌まわしき場所だよ。何がリベンジを果たすだよ。覚えてないって……まぁ仕方がないことだけど。でもだっせぇ~。
とりあえず、今日はその場所を探すことから始めるとするか。その道中にでもレベル3の奴がいれば目標は一応達成だからな。
そう思い直したとき、この二週間でさらに磨かれた危機察知能力が警報を上げた。
瞬時に臨戦態勢を取り、辺りを注意深く見渡す。見渡すのだが、敵が出てくる気配がまったくない。どういうことだ。まさかの危機察知能力の故障か?ちっ故障してやがるっ!みたいなスカウターパターンか?
するとそんな俺の杞憂を晴らしてくれるように羽が空を切るような音が聞こえてくる。おい、まさか今回の敵は。
「うわっ……あんな巨体で飛んでやがる」
空を見上げると絶命した獲物を口に咥えながら、斑模様が特徴的でその巨体にしては小さめな翼を持っているドラゴンがこちらに一直線に向かってくる。目測で体長五メートルはある。そして奴の瞳を見れば俺を標的にしていることぐらいすぐに分かる。
それにあれは確か……シャクレノドン!?
この二週間の間に少しは手帳を読みながら勉強して覚えている動物がいる。特に原作に少しでも出てきたやつはすぐに記憶した。そしてシャクレノドンはその原作に出てきた奴だ。まぁ出てきたと言ってもトリコに瞬殺されてしまったが。
「それでも、俺にとっては強敵だな。確か翼竜獣類で捕獲レベルは4……毒の類は持っていないが、はたして勝てるのか」
しかし、そんな自身の言葉とは裏腹に逃亡せず奴がこちらに着くのを待ちわびた。
何故ならばあれは確かに強い。シャクレノドン以上の大きさの獲物を軽々と口に咥えながら移動しているのだ。それだけでいかに奴が強いかが分かる。
だが奴を見ても不思議と負ける気がしなかった。この感情は俺の驕りなのだろうか……否!断じて否! 大丈夫、確かに目標としていた捕獲レベルより高いがこの感じは初めてザリガニフィッシュと出会ったときと同じ感覚だ。決して侮らず油断せずにいけば勝てるっ!
それにこれから先、目的の獲物よりもさらに上のレベルの敵を遭遇することなどざらにあるだろう。その初めてが今だったというわけだ。大丈夫、俺なら勝てる。余裕とはまではいかないが勝てる。そう自分を鼓舞する。
ドンッと地響きをたて、軽く砂埃が舞った場所を見てみればシャクレノドンが威風堂々と佇んでいた。
そして口に咥えていた獲物をゆっくりと地面に横たえる。乱雑にしない所から見るに獲物に敬意を称してるのか、それとも俺に対して余裕を見せているのかは分からない。
どんな獲物を仕留めたのかと気になり見てみると……あれはバロンタイガー!? それもただのバロンタイガーじゃない
あの傷跡は……間違いなく俺の目的だったあのバロンタイガーだった
あの時、堂々と森を横行闊歩していた姿は今は見る影もなく絶命している。あいつが負けた?だとしたらこのシャクレノドンはどれだけ……。
ふと気がつくと自分が震えているのが分かる。しかし、それは恐怖によるものではなく武者震いだ。そう、あの時勝てる気がしなかったバロンタイガーにすら勝利したこいつ相手に俺は……勝てるとさえ思っている。
わずか二週間ばかりでここまで強くなった自分自身に歓喜している。この力をぶつけたいと、そしてこいつを喰らいたいと思っている。
思わず口元がニヤケて釣り上がる。しかし、頭は冷静に。この感覚は懐かしい。昔喧嘩を手伝っていたとき友人に言われたことを思い出す。こういうときの俺の顔は冷たくニヒルである意味俺より怖いってね。多分今の俺はそんな表情をしてるのだろう。
――――さぁ、狩りの時間だ。殺して解して並べて揃えて喰らってやるよ。
side out
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
百五十センチにも満たない少年と対峙しているのは五メートルを越す巨大なシャクレノドン。常人ならまず目を疑う光景。しかし少年は逃げ出そうともせず堂々と毅然とした態度でいる。そんな小さな獲物にも関わらず相手の獣は対等な相手とばかりに獰猛に威嚇を繰り返している。
この場を明らかに支配している一人と一匹の緊迫した空気にあてられてか周囲に隠れ潜んでいた動物達は巻き添えを食うまいと慌てて逃げ出している。このことからこの場には彼ら以上の強者はいなかったのだろう。
そして最後の一匹が逃げ出した際に木の枝が折れて地に落ちる。
その落下音が静寂とした場に新たな展開を告げる合図となった。
―――瞬間、両者共に動き出した。
シャクレノドンはその巨体を生かし前傾姿勢から突撃を駆ける。対して少年は真っ向勝負では不利と即座に判断し冷静にカウンターを狙う。強靭な足腰から繰り出される巨躯な体当たりは常人なら避けれることなく一瞬で死を迎えるだろう。
しかしその少年は常人とはかけ離れた身体能力を駆使してギリギリの回避に成功した。あえて際どい避け方をしたのは己が手に宿す蒼雷をぶつけるため。
そして少年は指先で相手を貫く貫手と呼ばれる技で獣の首筋を迷うことなく貫く……はずだった。
だが獣の首筋には硬い脂肪に厚く覆われていたため貫くことはできずにいた。
その刹那とも言える一瞬少年は確かに動揺し硬直した。百戦錬磨の獣はその機をみすみす逃すことはなく反撃に打って出た。
繰り出されるは分厚い尾の攻撃。タイヤのように硬く、しなやかな尻尾は空気を切り裂き少年の腹部を殴打した。
「――ッッ!?」
そのあまりの衝撃に少年は呼吸ができず、そのまま海辺へと一直線に吹き飛んだ。砂場に身体を何度も打ち付けながらも中々勢いが止まらず、やっとのことで止まったときは相手との距離が二十メートル以上開いていた。
少年はうつ伏せの状態で横隔膜から何か異物がせり上がるような異変を受け、その何かを砂場に吐き出した。出てきたものは自身の血であった。
まるでペットボトル一本分はあろうかという多量の血に、何より吐血という経験がなかったため動揺するも、そんな時間はないとばかりに彼の第六感が働いた。
うつ伏せの状態から振り返ることなく四脚動物のように手足を駆使して真横へと飛んだ。そして数秒もしない内にその行動が正解だったと気づく。
直後、少年がいた場所から爆音が鳴り響いた。数秒前まで彼が倒れ込んでいた位置は砂埃が巻き上がり大きなクレーターが作られていた。
そうシャクレノドンは空高くから、自慢の身体で押しつぶさんとプレスをかけていたのだ。その光景に彼はもはや冷や汗かどうかも分からない汗をかき、息を呑んだ。
砂埃が晴れるとそこにはシャクレノドンが追い詰めたぞとばかりに笑みを浮かべていた。
そんな追い詰められた状態でも少年は諦めの色を見せなかった。勝負が始まった時と何ら変わりなく堂々と佇んでいる。
しかしシャクレノドンはそれがやせ我慢であることを見抜いていた。彼は今倒れてしまいたいほどダメージを受けているということを。そしてそれは自然界でよく目にする擬態と似たような行為だと。
シャクレノドンはこの勝負に決着をつけるため、再び突撃を仕掛けた。避けられるであろうことは最初のカウンターですで分かっている。しかし自身はそのカウンター攻撃に耐えられることも知っている。尚且つ相手は重傷を負い、身体を動かすことすらままならない。この勝負もらった、そう獣は確信していた。
しかし、少年は先ほどまでとは違い真っ向から突撃を仕掛けてきた。そのことにシャクレノドンは驚きながらもやはり勝算はこちらにあると思い突進のスピードを緩めることはなかった。
凄まじい速度で交差した少年と獣は夕暮れの海を背にしたまま静止した。そして――結果が訪れる。
……地に伏せたのは胴体が真っ二つに切り裂かれた獣のほうだった。
「―――勝った。勝ったんだ。俺が……生き残ったんだぁあああああああ!!!」
勝利の雄叫びを上げている少年の足元には大量の【砂鉄】があった。
そう彼は砂場に飛ばされたときに電気によって地中の砂鉄を集め強固なブレードを作り上げていた。そしてそれを地中のお互いが交差する場所の近くに隠し、勝負の瞬間ブレードを引き上げ、さらにはその表面を振動させてシャクレノドンを切断した。
「漫画やアニメって偉大だなぁ。有難う、御坂さん」
こうして激闘とも呼べる闘いはパクリ技で幕を閉じたのだった。
後書き
この作品の主人公は電気、勘、パクリ、多少のエロさで構成されています。
残念ながら無人島生活&十歳程度なので欲求が湧いてこず主人公のエロさを描写として中々書けませんが。ちなみに名前がまだ出てこないのは、たいした理由ではありませんが一応あります。でも本当に大した理由ではないです。
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