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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第42話 偉大な勇者

「嘘だろ…ゲッターチームが…あのゲッターチームが…」

 ボスから告げられたのは一番聞きたくない真実であった。あのゲッターチームが襲撃してきた謎の勢力との闘いの末に破壊され、そして…武蔵が死んだとの報告であった。

「兜…」
「ははっ、これで残ったのは俺だけか…畜生! 折角平和になったのにこんなのって…あんまりじゃねぇか!」

 壁を殴りつけて甲児は悲しみにくれた。その光景をシローとはやては見ていた。

「兄貴…」
「甲児さん」
「悪ぃ、ちょっと俺夜風に当たってくる」

 そう言って甲児は一人通路を歩き去って行った。その背中はとても辛そうにも見えた。もうこの日本を守れるのは自分しか居ない。
 その辛いプレッシャーに甲児は今押し潰されそうになっているのだ。
 そんな時、突如天井の蛍光灯が一瞬消える。何だと辺りを見回す一同。その時、何処からか声が聞こえてきた。

【間も無くこの世の終わりが来る】

 そんな言葉が聞こえてきた。不気味な言い分であった。

「あぁ、あの預言者の声だ!」
「預言者? 何だよそれ」
「良いから早く来い!」

 ボスに続いて三人は外に出る。其処は光子力研究所の廃墟であった。そして、その一際大きな瓦礫の上にその老人は立っていた。石の様に冷たい色合いの肌をした白髪の老人であった。

「お前はあの時の預言者!」
「遂に墓場から古代の亡霊たちが現れた。東京も攻撃を受けたがマジンガーZの奮闘のお陰で壊滅は免れた」
「あったりまえだろう! 俺の兄貴が必死に戦ったんだ!」

 シローが拳を握って預言者に向かい叫ぶ。しかし、それに対し預言者は静かに三人を見ながら淡々と続ける。

「しかし奴等は大群を率いて再度来るだろう。その攻撃の前にマジンガーZは倒れ、この世は死と暗黒が覆い尽くすだろう」
「ふ、ふざけんじゃねぇ! 兄貴が負ける訳ねぇじゃねぇか! 出鱈目言うんじゃねぇよ!」

 シローが涙目になりながら叫ぶ。それを聞いた後、預言者は消え去ってしまった。

「き、消えてもうた」
「一体何者なんだぁあの爺は?」

ボスは仕切りに首を傾げていた。因みにいうと、はやては終始ボスに背負われてる状態であった。





     ***




「暗黒大将軍様! 東京は壊滅いたしました!」

 下半身が虎の化け物であるゴーゴン大公は跪き戦況の報告を述べた。その目の前には一際巨大な巨人が不機嫌そうに座っていた。

「黙れ! その為に余の誇る七つの軍団が倒されたではないか! あのロボットはなんだ?」
「申し訳ありません、あれはマジンガーZと言うロボットでして、かつてDr.ヘルが勝てなかったロボットに御座います」
「何故それを黙っていた! この愚か者!」
「な、何卒お許しを!」

 ゴーゴン大公が深く頭を下げる。それに対し暗黒大将軍は静かに立ち上がり歩み始める。

「余に逆らうとは小癪な! 我等七つの軍団は無敵なのだ! 今からそのロボットをミケーネ帝国地上侵略の生贄とする! 出でよ、獣魔将軍!」
「お呼びで御座いましょうか?」

 通路の奥から現れたのは不気味な姿をした怪物が居た。
 全身に七つの軍団の特徴が取り付けられた怪物であった。

「獣魔将軍。貴様を司令長官に任命する! 直ちに日本に赴きそのマジンガーZを倒し、人間達を皆殺しにして我等ミケーネ人の頭上に太陽の輝きを取り戻すのだ!」
「はっ、直ちに日本へ向います!」




     ***




 地球の危機の知らせは彼等時空管理局にも伝わっていた。しかし、彼等は地球には来なかった。嫌、来られなかった。

「何故ですか? 何故地球に増援を送って下さらないのですか?」

 リンディは机を叩き目の前に居る高官達を睨む。それに対し、高官達は難しい顔をしていた。

「何度も言うがねぇリンディ艦長。彼等の狙いは地球だけだ。我等時空管理局としては辺境の惑星一つの為に貴重な戦力を割く訳にはいかんのだよ」

 高官達の答えは余りにも冷たい言葉であった。
 辺境の惑星。彼等時空管理局からしてみれば地球などそう呼べるのだろう。
 第97管理惑星。それが彼等の言う地球なのだろう。
 そして、彼等からしてみれば地球のみを狙う奴等相手に貴重な戦力を使う訳にはいかない。それが返答であった。

「……失礼します」

 リンディは強い失望感を胸に抱いたまま部屋を後にした。今、地球では大変な事態になっているのは明白だ。かつて共に戦った仲間達が今危機に晒されている。しかし、今の自分達はそれを助ける事が出来ない。
 それがとても歯痒く思えたのだ。
 重い足取りのままリンディがやってきたのは、修理中のアースラの艦内であった。

「艦長、どうでした?」
「駄目、皆辺境の惑星には戦力を出せないの一点張りだったわ」
「そうですか…」

 オペレーターのエイミィはそれを聞いた途端激しく落胆した。今のアースラは緊急修理中である。どんなに早くても後1週間は動けない。それが、今のアースラの、そして時空管理局の現状でもあった。




     ***




 甲児は一人ある部屋に来ていた。それは、かつて甲児の部屋だった場所だ。今では廃墟と化してしまい見る影もない。
 その部屋の中にある自分のデスクに座り、甲児は引き出しを開けた。其処にあったのは一冊の分厚い本であった。
 それを取り出して開く。その中には二枚の写真が映っていた。
 一枚は甲児の祖父である兜十蔵。もう一人は黒い髪に髭を生やした立派な男性であった。

「お父さん…お爺ちゃん…もう間も無く新たな敵の総攻撃が始まります。ですが、マジンガーZは深く傷ついています。仲間達は皆倒れ、戦えるのは僕一人になってしまいました」

 まるで懺悔でもするかの様に甲児は写真に向かい淡々と語り続けた。

「正直言って…僕は戦うのが怖い…でも、僕は戦わないといけません! 例え死ぬ事になったとしても、僕は戦いに向います。幼いシローや、生死の境を彷徨ってるなのはを残して逝く事を…許して下さい」

 静かにそう言い、甲児は本を閉じる。そして、静かに肩を震わせていた。その後姿を静かに、そっとさやかは見つめていた。その目にはうっすらと涙が滲んでいた。




     ***




 太平洋上を飛行し、謎のロボット軍団が押し寄せていた。

「マジンガーZは深く傷ついている。今こそ奴を倒し、地上人を皆殺しにし、我等ミケーネ人の頭上に太陽の輝きを取り戻すのだ!」

 先頭を飛び走る獣魔将軍が叫ぶ。それを聞き、大勢のロボット軍団が雄叫びをあげる。
 今、死神が鎌を持って鉄の巨人を切り殺そうと日本目掛けて飛んできていたのだ。
 だが、それに対しマジンガーZは深く傷ついたままであった。




     ***




 パイロットスーツを身に纏った甲児。彼の目にもう迷いはなかった。今戦えるのが自分一人だと言うのなら、最期の最期まで戦い抜くのみ。その覚悟で居たのだ。

「そうだ、せめてアイツの所に行くか…」

 そう言って甲児がやってきたのは、なのはの眠っている医務室だった。扉を開けると、其処には未だに眠ったままのなのはが居た。生死の境を彷徨い、必死に死神と戦ってるなのは。そんななのはの手をそっと甲児は握り締めた。

「なのは…お前は俺の事をお兄ちゃんと呼んでくれた。俺もお前の事は妹みたいに思ってたよ……」

 強くなのはの手を握り締める。微かに彼女の手の温もりが伝わってくる。何時しか、甲児は目一杯から涙を流していた。

「……なのは、大人になっても、俺みたいな馬鹿な奴を彼氏に持つんじゃねぇぞ……あばよ。元気でな」

 そう告げ、甲児は医務室を出た。もう思い残す事はない。甲児はそそくさとマジンガーZの待つ格納庫へと向う。

「待ち給え甲児君!」

 そんな甲児を止める。弓教授であった。弓教授が甲児の肩を掴んで止める。

「出動させて下さい。俺が行かなければ日本は終わりになってしまうんです!」
「マジンガーZの修理はまだ終わってない! その状態で行けば、確実に君は死ぬ事になるんだぞ!」
「覚悟は出来てます。今俺が戦わなければ、この地球は奴等の物になってしまうんです! 戦って、戦って、それでも勝てない時は…マジンガーZと共に……死ぬだけです!」

 そう告げて、甲児は弓教授の手を払い除けて走り去っていった。呼び止めた教授の言葉を無視して甲児は走っていった。
 格納庫内に置かれているジェットパイルダーを見つける。それに飛び乗ろうとした時、後ろから声が聞こえた。

「甲児君!」
「さやかさん」

 振り返った時、さやかは手に箱を持っていた。

「甲児君…これ」
「これは?」
「シローちゃんと、なのはちゃんが…甲児君の為に…」
「……」

 甲児は黙ってそれを手に取った。言葉がなかった。箱を受け取り、さやかを見た。その時のさやかは泣いていた。知っていたからだ。
 甲児が死地に赴くと言う事を。そして、それを止める事は出来ないと言う事を。
 それを悟ったさやかは、一人目元を覆い隠し走り去っていった。その後姿を甲児は黙って見送った。
 一人パイルダーに乗り込む甲児。その中で渡された箱を開ける。中には小さなオルゴールが入れられていた。
 蓋を開けると綺麗な音色が聞こえてくる。とても心地よい音色であった。

「シロー、なのは……有難うよ」

 二人に感謝し、甲児は発進する。ボロボロの状態のZとドッキングし、再びZの目に光が灯る。

「Z、お前と俺は一心同体だ! 死ぬ時は、一緒に死のうぜ!」

 決意を胸にマジンガーZは走った。同じように傷ついたジェットスクランダーとドッキングし、マジンガーZは大空に舞い上がる。
 だが、その突如、放たれたソーサーがZの翼を切り裂く。

「うわぁぁぁぁぁ!」

 飛行能力を失ったZはそのまま地面に激突する。其処へ現れたのは最初に出会った悪霊の怪物であった。

「出たな化け物め!」

 悪霊の怪物に向かい光子力ビームを放つ。だが、その光線は悪霊の怪物の体を空しく通り過ぎ、背後の岩山にぶつかるだけに終わった。

「ハハハ、無駄な抵抗は止せ! お前の武器は私には通じん! それよりマジンガーZ、後ろを見ろ!」
「何? ……あぁ!」

 振り返った甲児の目の前に映ったのは怪物の大軍勢とその中央に立つ巨大な怪物であった。
 その怪物の姿も異質と言えば異質であった。
 昆虫、爬虫類、悪霊、魚、獣、鳥、人。それらの部位が合さったような巨大な怪物であった。

「貴様がマジンガーZか? ワシは暗黒代将軍の右腕獣魔将軍だ! 貴様を地獄の底へ叩き落す為にやってきた!」
「何! ふざけるんじゃねぇ! これでも食らいやがれ!」

 叫ぶとばかりに光子力ビームを放つ。だが、その攻撃を全く物ともせず獣魔将軍の右腕に取り付けられた悪霊の牙がZの片目を破壊する。

「うわっ!」
「愚か者め、実力の差が分からんと見えるな。一斉攻撃開始! このガラクタを鉄くずに変えてやれい!」

 それを皮切りに怪物軍団の総攻撃が開始された。
 次々と繰り出される攻撃の荒波。
 ミサイルが、溶解液が、熱線が、破壊光線が、次々と放たれる。その攻撃をZは避ける事が出来ず浴び続ける事となった。

「つ…強い…手も足も出ない…」

 圧倒的であった。圧倒的な力の差が目の前にあった。気がつけばZは既に両腕を失い、最早両足で地面に立てる状態ではなかった。それでもZは立とうとする。例え傷つき倒れようとも何度でも立ち上がろうとする。
 だが、それを敵が許す筈がなかった。

「死に損ないめ! これでも食らえ!」

 無情にも振り下ろされる獣魔将軍の斧が一閃する。斜め一文字に振り下ろされたそれはZの右肩から入り切り裂かれる。
 切られた箇所から流血の如くオイルが噴出す。
 そして、それを最期にZは倒れてしまった。もうZに動く力は残っていない。戦う力もない。今、甲児と人類の目の前に広がっているのは絶望だけであった。




     ***




 遠く、噴火する火山を老人は見つめていた。

「マジンガーZが倒れ、世界が滅びようとしている。だが、見殺しには出来ん!」

 老人がそう言う。そして顔に手を掛けると思い切り顔を引っ張った。その中から出てきたのはかつて甲児が写真で見た男性と同じ顔であった。

「出撃せよ! ブレーンコンドル!」

 男の叫びと共に火山の中から一機の赤い戦闘機が現れた。

「剣鉄也よ! 時は来た。偉大な勇者を目覚めさせ、暗黒大将軍と七つの軍団を叩きのめせ!」

 男が見守る中、ブレーンコンドルは空を縦横無尽に飛びまわる。そして、それそ操縦していた青年は叫ぶ。

「マジーンGO!」

 その時、海面を割り、中から現れたのは鉄の魔神であった。マジンガーZよりも大きく、雄雄しき姿をしたその巨人とブレーンコンドルが合体する。

「ファイヤーON! スクランブルダッシュ!」

 鉄の巨人の背中から翼が現れ、大空へと舞い上がっていく。

「戦え、鉄也! 敵を打ち砕け、偉大な勇者! その名も、グレートマジンガー!」




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

今、新たな鉄の巨人が目覚めた。それを皮切りに、人類の反撃が開始される。

次回「立ち上がれ!不屈の戦士達」お楽しみに 
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