SAO<風を操る剣士>
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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第五章 オレンジギルド
第34話 作戦
前書き
いつもの通り、タイトルが思い浮かばない……
※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。
「お婆ちゃん、チョコレートドーナッツ6つくれ」
「ハイよ! はい、ドーナッツ………まいどあり~」
NPCが出してくれた俺が注文したドーナッツを受け取ってからお金を払った後、店を背にして歩き出すと、後ろからNPCのお婆ちゃんの元気な声が聞こえる。
午後五時……犯罪者ギルドを探していた俺達だったが、フィールドを探してもそれらしいオレンジアイコンのプレイヤーは見つからなかった。
当然だけど、そんな簡単に見つかる所にいる訳無いよな……犯罪者が街の中をうろうろする訳にもいかないし、隠れるんだったらフィールドのはずなんだが…
まぁ、そのまま日が暮れるまで見つからず、俺達は街に帰ってきた。
その歩いている途中に俺は裏路地の入り口(つまり歩く幅が狭く、そして暗くて分かりにくい為に人がいないような道)を見つけた俺は、アルゴから買った情報の中にこの層の裏口に売っているという、隠れた名店『お婆の手作りチョコレートドーナッツ』という店がある事を思い出した。
なので、シリカとキリトには入り口の近くにあったベンチで待っててもらうよう言って、俺が三人分のドーナッツを買いに来たのだ。
…そういえば、チョコドーナッツの『チョコ』で思い出したけど、シリカから貰ったバレンタインのチョコのお返しどうしよう。……そのままシリカと同じように手作りチョコっていうのもなぁ。
それに、お互い誕生日に去年の分を入れたプレゼントをする、って約束したけど……結婚してアイテムストレージが一緒だから、プレゼントもなぁ。
と、裏路地を歩きながらシリカに贈る物で悩んでいると、そんな考えを一時中断させるような内容の喋り声が微かに聞こえた。
『ロザリアさん。まだターゲットのパーティー、お金貯まらねぇのかな? 俺、そろそろ金欠でよぉ。いい加減に早く人斬って、美味い物食べてぇだけどなぁ』
……ロザリア……、それって確かキリトが探す時に言っていた、あの男から聞いたギルドのリーダーの名前だったような…
俺はドコからこの声が聞こえるのか耳を澄まし確認すると、声の出所は俺の横にあるドアからのようだ。
…俺はダンジョンで上げられたスキルの全てが、熟練度800を超えた。つまり当然《聞き耳》スキルも800を超えており(シリカの《聞き耳》スキルは750を超えた)、《閉じられたドア》の音も現実世界ほどじゃないが普通に聞こえるようになった。(多分マスターしたら宿屋で普通にしていても、隣の部屋で誰かが騒いでいたら聞こえるようになると思う)
でもやはり宿屋などではプライバシーがあると思い、部屋に行く時は急いで部屋に入る。
しかし宿屋ならまだ良い、問題は街だ。街では普通のプレイヤー以上に音が聞こえてしまうので、うるさいったらありゃあしない。…多分、このうるささも《聞き耳》スキルがあまり取る人がいない理由だと思う。
俺の場合、シリカのファンが最近圏外に出ると、オレンジになる覚悟で隠れながら俺に向って《投剣》スキルで攻撃してくる事がある。…なので、その攻撃を音で察知して避けたり(当たっても死にはしないけど、やっぱり当たりたくはない)、ファンを《索敵》に《システム外スキル》の《聴音》を加えて見つけやすくする為に《聞き耳》を上げている。(そんな事してくる奴は大抵、物凄く《隠蔽》スキルを上げている為)
…ちなみにシリカが上げている《聞き耳》や《隠蔽》スキルなどの、地味な熟練度を上げるものはすべて俺と一緒に上げている。
シリカ曰く『あんな地味なスキル上げは、一人じゃ出来ません!』と、言っていた。……まぁ俺も同じようなもんだけどな。シリカが一緒にやってくれなかったら、こんなに速く熟練度は上がらなかったと思う。
けど、こうやって《聞き耳》スキルを上げてドアを開けなくても聞こえるようになったが、街の中を歩いてる時では外の声やドアまでの距離で、ドアの中の声なんてほとんど聞こえない。
しかし今はほとんど人がいなくて、道の幅も狭いので歩いていただけで男達の声が聞こえてしまったのだ。
気になるワードが聞こえた俺は、男達の会話をよく聞く為にドアに耳を近づけて集中して聞き始める。……集中したりターゲットしたりすれば、現実世界よりも音は良く聞けるので、声がクリアに俺の耳に聞こえ始めた。今なら男達が小声で喋っていても会話が聞こえるだろう。
『ロザリアさんにメッセージ送って、あとどれ位だか聞いてみようかな』
『まぁ待てって……今ロザリアさんは《風見鶏亭》って所でターゲットと一緒に居る筈だ。今送ると、後で怒られるぞ』
『そうだな。じゃあ、もう暫く経ったらにするか』
『その方が良いぜ』
男二人の会話を聞くのをここまでにして、男達が《聞き耳》スキルを上げてるかもしれないので、俺はドアからそ~と離れる。
……《風見鶏亭》だって! 俺達が予約した宿屋じゃないか! ……道理で見つからないはずだ。多分、俺達と入れ違いだったんだな。
それに、フィールドでメンバーが一人も見つからなかった理由も分かった。
この男達のように、こういう目立たない路地の空き巣の部屋でじっとしていれば、フィールドよりも目立たないですむ。
それに空き巣に閉じこもれば、《聞き耳》スキルがないとほとんど見つからないからな。あ……他にも《索敵》スキルが980以上あれば人が居ることも分かるか…。
まぁどちらにしたって、すぐ近くに犯罪者ギルドがいるのに違いはない……のだが、ココで俺がドアを《解錠》スキルで開けて(宝箱を開ける為にダンジョンで上げていた)、男達を捕まえても良いんだけど、それじゃあ全員が揃う前に他のメンバーに知られて、逃げられる可能性がある。…《回廊結晶》も一つしかないしな。
……仕方ない。全員集める為に俺達の誰かが囮になって、犯罪者を誘き出すか。
その為には早く《風見鶏亭》に帰って、俺達の誰かがターゲットよりレアアイテムとコルを持っていること、または取りに行くことを知らせないと。……それに弱そうじゃなきゃ襲ってもこないけど……これは俺達は全員OKだろう。それに俺とシリカは今、いつもの装備じゃないし。
となると、早く知らせた方が良いな。
そう思い、帰る道を走り出してから、走りながらウィンドウを出す。……そして、シリカに夫婦だけが使用可能な、《音声通話》…いわゆる電話をかけた。
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シュウさんに『ちょっと待ってて』と言われて、ベンチで待つこと10分。
あたしはキリトさんと並んでベンチに座り、《長期クエスト》のことなどを話していた。……《長期クエスト》に関して話してはいても、《フィールドボス》などの話し難い話はしてないけど。
「へ~、だから暫くフレンドリストから探しても、居場所も分からなかったんだな」
「そうなんですよ」
「……そういえばシリカ、一つ聞いて良いか?」
そんな話をしていると、キリトさんがあたしに少し聞きにくそうに聞いてきた。
「なんですか?」
「シュウがいないから聞くけど……シリカはシュウのドコを好きになったんだ?」
「……へ?」
キリトさんの予想もしていなかった質問に、ついヘンな声を出してしまった。
いったいどうしてキリトさんは、こんな事を聞いてきたんだろう。
「えっと……突然どうしたんですか?」
「いや、別にヘンな意味はないぞ。……ただ、結婚までいくカップルは少ないから、気になっただけで…」
「ああ、そういう事ですか」
確かにそう言われるとあたしも、知り合いに結婚した人がいたら同じような質問をしたかもしれない。
けど、結婚した理由と言われても……
「理由は……勢い……ですかね」
「……勢い?」
「はい……だってシュウさん、あたしに告白すると同時にプロポーズしてきたんです。……だから、その告白された嬉しさに勢いがついて、結婚……ですかね」
「……本当に勢いだな。それは…」
本当はあたしから告白したり、他にも色々の理由は有るんだけど……そこは伏せておく事にした。
「あと、好きになった理由でしたっけ? う~ん、口にするのは難しいんですけど……シュウさんといると安心するというか……その……ご、ごめんなさい……よ、良く分かりません」
「いや、俺もヘンなこと聞いちゃって……ごめん」
う~、なんだか自分で言ってて恥かしくなってきたよ。
恥かしさで顔が赤くなってるのが、自分で分かるくらい顔が熱い。
そうやって、キリトさんと顔を赤くしながら話してながら5分ほど経ち、やっと顔の熱さも収まってきた頃に、シュウさんからの《音声通話》のコールがかかってきた。
結婚はプレイヤー同士の関係の最高位で、その利点はフレンドやギルドに入った時の利点よりはるかに高い。
結婚での利点は主に3つで、《音声通話》はその夫婦になる際の利点の一つ。
他にも《ストレージ容量の拡張ボーナス》と、ギルドに入ると僅かに戦闘力が上がるのと同じで《戦闘力の向上ボーナス》というのがある。……でも戦闘力の向上に関しては、ギルドに入るよりは上がるけど、それでも僅かな事に違いはない。
《音声通話》もフレンドになるといつでも送れるようになる、メッセージの上位版だと思う。
「ごめんなさい、キリトさん……シュウさんから電話がかかってきたんで、出ますね」
あたしはキリトさんにそう言って、通話開始のボタンを押す。……すると、
『シリカ、今すぐ帰れる用意をしておいてくれ』
あたしにだけ聞こえるシュウさんの声は、急いでいるのかいつもよりも早口に聞こえた。
急いでいるという事は何かあったと思い、あたしは素直にキリトさんに
「キリトさん、すぐに帰れる用意をしてください」
と言って、あたしも服を整えながらシュウさんに改めて理由を聞く。
…帰る用意といっても外のベンチに座っていただけだから、服を整えるくらいしかないんだよね。キリトさんもだけど。
そう思いながらも口には出さず、シュウさんの言葉に真面目に耳を傾ける。
『犯罪者ギルドのリーダの居場所が分かった。説明は後でするから、シリカは自分の事がバレないように……そうだな、髪をおろす程度で良いからしておいてくれ』
「……分かりました」
その後、キリトさんに今のシュウさんとの会話の内容を説明してから、髪をおろしたのとシュウさんが帰って来たのは、ほぼ同時だった。
======================
俺はシリカの寝る時の部屋でしか見られない髪型に少し違和感を感じながらも、《風見鶏亭》に向いながら二人にドーナッツを渡し、説明をし終わる頃に《風見鶏亭》に到着する。
そして俺が入り口のドアを開けて、さっき話した作戦が開始される。
まず最初にキリトには俺とシリカの部屋に向ってもらう。
その部屋に向うキリトを見届けた後、俺とシリカは《聞き耳》スキルを使って、プレイヤー達の会話を聞いてロザリアを探す。
すると、真っ赤な髪を派手にカールさせた女性に向って『ロザリアさん』と呼ぶ声が聞こえた。
…あの位置だと、カウンターの方が良いか。
そう思い、シリカと一緒にカウンターに座る。どうやらシリカも同じ事を思ったらしい。
座ったあと、俺はウィンドウを出し、メッセージを打ち込み送信しない状態の文章を可視モードにしないで、シリカに見せる。
こうすればメッセージの受信と送信にかかる余計な時間が無くなり、妻であるシリカ以外に内容が知られる事はない。…打つ時間はかかるけどな。
『シリカ、作戦の時に使うシリカの偽名は何が良い?』
すると同じようにシリカも俺に見せて、
『シュウさんに任せます』
……俺任せかよ。まぁ考えてなかった俺も悪いかもしれないけど……どうなっても知らないぞ。
そして、作戦実行。…俺はロザリアにワザと聞こえるくらいの声で言う。
「ケーコ、そういえば知ってるか? お前みたいな、ビーストテイマー専用のレアアイテムがあるって話し」
「……………う、ううん、知らない」
……シリカ、確実に今の間の間に『もうちょっと捻って下さいよ…』とか思ってたな。
それでも俺は言葉を続ける。
「いや、なんでも使い魔用の蘇生アイテムがあるんだってよ」
「あ、聞いたことあるかも……でも、それって使い魔が死んでないと取れないって言う話じゃ…」
「いや、こないだ他のビーストテイマーが行ったら、ゲットできたらしい。……なぁ、明日それ取りに行かないか? もし蘇生する機会がなくても、そのアイテム物凄く高く売れるらしいしさ」
「……うん、じゃあ行ってみよっか。シュウ」
シリカ…もといケーコが頷くと、俺達は何も頼まないのは可笑しいと思われると思い、キリトを待たせているので部屋に持ち込む為に、お持ち帰りで色々と頼む。
…ついでにデザートとして、チーズケーキも人数分頼んでおこう。
そしてそんな頼んでいる間も、《聞き耳》スキルのターゲットに指定したロザリアの喋る言葉に集中を切らさずにいると、
「ふぅ~ん、良いこと聞いちゃった…」
俺達でもターゲットしていないと聞こえなかったくらいの声で呟いたのが聞こえた。
……一応、作戦成功…だな。まだ、上手くいったとは決まってないけど…
その後、暫く俺達はロザリアの会話を聞き、ロザイアたちが帰ってから少しして食べ物が来たので、それを受けって二階に上っていった。
なんで俺とシリカががこんな話をしていたかというと、誘き出す作戦だったのだ。
今の俺とシリカの格好は中層プレイヤーに見えない事はない。
それならば、こんなレアアイテムの話を弱そうな子供(自分で子供に見える事を認めるのは嫌だけど)のプレイヤー二人がしていたら、さっき男達が話していた内容からして、そのリーダーが見逃すはずがないと思ったのだ。
なので、シリカが《竜使いシリカ》である事を知られてはいけない為、偽名を使い、髪型をおろしてもらい、ピナを服の中に入れて顔だけ出してもらっている。……これなら近くで見ない限り、使い魔がいると分かっても《フェザーリドラ》とは分からないだろう。
あと、俺は名前は知られて無いはずなので、シリカが名前を出してもOKだった……けど、シリカに名前を呼び捨てにされると、何かヘンな感じだなぁ。
ちなみに、アイテムの話はアルゴに聞いて、話した内容に関しては嘘半分だ。
いや、正確に言うと『死んだ使い魔の主人が行かないとゲットできない』と言われてるけど、実際に取りに行ったプレイヤーがまだ居ない為か良く分からない……だそうだ。それと、お金の事は本当な。
二階に上がり部屋に入る同時に、キリトはさっきあげたドーナッツを食べ終わったとこだった。
そして食べ終わってから俺達に気付き、
「お帰り……どうだった?」
「まだ分からん。でも、手ごたえはあった」
言葉をかけてくるキリトに素直に感想を返して、キリトの近くのテーブルに買ってきた食べ物を置く。
「ほら、まだ夜ご飯食べてないだろ? 食べようぜ」
「なに、シュウたちの奢り?」
「バカ……キリトが食べた分だけお金は貰うよ。ちゃんと全部、値段覚えてるし」
「……マジかよ……まぁ良いけどさ。それじゃあ、貰うぞ」
そう言ってキリトは食べ物を取り、その後に俺達も取って食べ始めた。
====================
ご飯も食べ終わって少しした頃、俺とキリトの《索敵》でゆっくりと歩くプレイヤーを見つけた。
…こんなに不自然な歩き方をして、自分の部屋に戻る奴はいないだろう。だとすると……
「来たな……シリカ、俺に合わせろ」
「はい」
そう言って俺達は全員黙り、そいつが来るのをキリトは俺のベット、俺とシリカはドアの前で待つ。
そして近づいてきたと分かり、またさっきの演技を再開する。
「ケーコ、明日は朝ご飯食べたあと行こうぜ」
「そうだね。それじゃ、もうそろそろ寝ようか……でも、その前に……」
シリカが言葉をちぎるのと同時に、俺とシリカは入り口から同時に出て、
「「……外にいる人に帰ってもらってからだ(ね)!!」」
と言うと、もう外にいたであろうプレイヤーは階段を下りているところだった。
……カンがいいな。俺達が出てくるのが分かったみたいだ。
そして再び部屋に入りキリトに向けて、
「キリト、明日はお前は先にこの宿屋を出てくれ。《思い出の丘》には、後でメッセージを送るからその時間に俺達よりも先についててくれ」
「……待ち伏せか……分かった。それじゃ、また明日な……お休み」
お願いを言った後、キリトは素直にお願いを聞き受けてくれた。
そして、そのまま部屋を出て、自分の部屋に戻って行った。
……さてと……
「俺達も、本当にそろそろ寝るとするか」
そう言いながら俺はまたベットを動かして、シリカのベットに近づける。
「そうですね。……お休みなさい、シュウさん」
「ああ、お休み」
言葉を交わしあい、結婚してからの毎日行なっているのと同じように、今日も手を握り合って俺達は眠りに落ちた。
後書き
感想や間違いの指摘、待ってます。
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