DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
グランバニアよ、私は帰ってきた!
「「「お父さん!」」」「「「リュカ!」」」「「リュー君!」」
私達を包む光が消え、視力が戻り焦点を合わせると、喧しい女共がお父さん目掛けて駆け寄ってきた!
そんな中、他の女共を押し退けて、自分一人だけ抱き付く美少女が1人…
リュリュお姉ちゃんである!
変態的だとは思っていたが、この一年ちょっとで強引性も身に着けましたね。
「ずっる~い!リュリュちゃん卑怯すぎー!」
頭の揺るそうな口調なのはスノウ。
「そうよ!お母さんを差し置いて何て事を…親不孝でしょ!」
口調も頭脳も一般だが、実は何処かおかしいシスター・フレア。
「うるさーい!私は女王様なのよ…私が最優先なの!」
あぁ…この騒がしさ…私は帰ってきたんだわ。
………って“女王”と言いましたか?
「お兄ちゃん会いたかったわ!私、お兄ちゃんが居なくて寂しかったの♥」
どういう事なのか聞こうと思ったら、大好きなポピーお姉ちゃんが現れて、お兄ちゃんにご挨拶ですぅ♥
「夜、一緒に寝てくれるお兄ちゃんが居なくて、身体が疼いちゃってるの……だ・か・ら・お願い!!」
巨乳を押し付けて、ありもしない禁断愛を彼女さんに見せつけます。
以前の青虫童貞野郎だったら、『バ、バカ!そ、そんな事…し、した事ないだろ!!(汗)』って疑わしい行動を取っただろうけど…
別世界の大冒険で、お兄ちゃんは成長したのです!
「僕もだポピー!!」
「え!?」
お兄ちゃんは人目を憚ることなく、ポピーお姉ちゃんを抱き寄せ、愛おしそうに頬擦りをかまします。
「会えなくなって初めてお前の愛しさに気が付いた!もうお前を離さないぞ…あんなヘタレとは別れて、僕の下へ戻ってこい!僕がお前を幸せにしてやるから」
しかも近親相姦発言で妹を離婚させようと目論みます。
「お、お前誰だー!!!」
焦るのは先に仕掛けたポピーお姉ちゃん…
帰還組以外、全員唖然と固まる中、大声を上げお兄ちゃんを突き飛ばし、ドリスさんの後ろへ逃げ隠れます。
「誰って…お前の大好きなお兄ちゃんだよ。さぁ…おいで…抱き締めてあげるから」
「ふざけんなー!そんな女の扱いに慣れた兄など私には居ない!あ、あの青臭いティミーを返せー!!」
なおも近寄りポピーお姉ちゃんを抱き締めようとするお兄ちゃん…まさかポピーお姉ちゃんがお兄ちゃんから逃げる日が来るとは…
「何か酷い事言われた。アイツから持ち出した話題なのに…どうしようかアルル?」
「イケメンのお兄ちゃんが帰ってきて、激しく照れちゃってるのよ。可愛い義妹が出来て私も嬉しいわ」
代わりにアルルさんが抱き締められ、まったりイチャつく兄カップル。
「くそーお前だな!私の大好きな青臭いお兄ちゃんを変えたのは!?」
マジで慌ててたけども、即座に冷静さを取り戻すポピーお姉ちゃん…
流石ですね。
「ふふ…どうやらステキな女みたいね。…でも予想外ね」
「え!?な、何が予想外なの?」
きっとオッパイの事だと思う。
「うん。ティミーは巨乳好きだと思ってたから…平均値以下よねソレ!」
ほらね…お兄ちゃんは、みんなに“巨乳好き”と思われていたから、アルルさんのソレを見て驚きを隠せないでしょう。
「ちょ…放っといてよ!」
「ポピー…お前は勘違いをしている。僕は父さんと違って、一部分だけにこだわりを持ってはいない!惚れたリュリュが巨乳に育っただけで、元々大きさなど気にしてはいない!お前の新しい義姉は、可愛くて優しくて素晴らしい女性だぞ!」
「アラそうだったの…でもそれじゃ物足りなくなるでしょ?そうしたら何時でも言ってね。私のオッパイを貸してあげるから!」
どうやら、まだ分かってないポピーお姉ちゃん…
自らの巨乳を見せつけ、お兄ちゃんをからかおうと試みる。
「ありがとう…では早速」
「ぎゃー!!お、お前何考えてんだ!?」
「え?だって何時でも貸すって……」
お兄ちゃんは目の前に差し出された巨乳を鷲掴み、ポピーお姉ちゃんに悲鳴を上げさせる。
「ふざけんな馬鹿!お前の乳じゃないわぁー!!マイダーリン専用だボケェ~!!」
ポピーお姉ちゃんにも恥じらいの心があったのね。
やっぱり一応は女の子だったのね!
「はいはい…だったら無闇に乳を差し出すな!もう少し女の子らしく振る舞いなさい…」
初めてこの双子が“兄と妹”なのだと思えました。
今まで立場が逆だったからなぁ………
「くそぅムカツク!童貞を脱しただけで、こうも変化するとは…面白くない!」
「ポピーお姉ちゃん…そんだけ女の存在は偉大って事よ。彼女の所為でお兄ちゃんが変化したんだからね!」
ふふふ…私達はこの冒険を通して、大幅に成長してきたのですよポピーお姉ちゃま♡
「ほ~ぅ…随分と言うようになったわねぇ…少女から女になって、貴女も随分と成長したみたいじゃないの。その男が貴女の彼氏ね!?」
「ペ、ペットじゃないわよ!」
ちょ、ペットじゃないってば!
「あはははは…まぁ似たようなもんですよ。初めましてお義姉さん、俺はウルフと言います。マリーの彼氏ではありますが、お義姉さんのバター犬にならなりますけどどうでしょう?」
うわっ…やっちゃったよ、この子…お父さんの次に喧嘩を売ってはいけない相手に、爽やかスマイルで売っちゃったよ…私フォロー出来ないからね!
「あ~ら…随分と面白い事を言うワンちゃんね。じゃぁ早速ペロペロしてもらおうかしら……ほら、跪いて顔を突っ込みなさいよ!」
こうなっては意地を通してペロペロし、ポピーお姉ちゃんにボコボコにされるか、プライドを捨て平謝りをし、一生ポピーお姉ちゃんに顎で扱き使われるか…選ぶのはウルフだ。
「ご、ごめんなさい…調子こいてました、ごめんなさい…もう言いませんから許してください…」
正しい判断だと思う。
きっとお兄ちゃんがやり込めたのを見て、軽い気持ちで発した台詞なんだと思う…
でもダメよ…この女は怖いんだから。
「ほらほら、もういいだろ?その辺で許してやれよポピー。そんな事よりも現状を教えて欲しいのだが?」
哀れな弟子に見かねたお父さんが、助け船を出した。
あのまま続いてたら、裸ひん剥かれ笑い者にされるまでポピーお姉ちゃんは許さなかったと思う。
そんな事を考えていると、ポピーお姉ちゃんやリュリュお姉ちゃん達が、私達の居なかったグランバニアをどの様に維持してきたのかを説明された。
まさかリュリュお姉ちゃんが女王様をやるとは………大胆ね!
「………なるほど、大まかには現状を把握出来た」
「ま、まぁ…そう言う訳で、概ね平和を維持してきましたよ。よかったですね~…で、では私はこの辺で「待てヒゲメガネ!」
確かに…大きな問題は起きてないし、概ね平和な状況であるみたいだから、“一件落着”と言っても良いのだけれど…
勝手に拉致った事をお父さんが許すはずない。
「お前…何しれっと帰ろうとしてんの?」
「な、何がですか!?も、もう私は必要ないでしょう!貴国の問題も解決したのですから…」
きっとポピーお姉ちゃんに酷い目に遭わされてきたのだろう…
神様なのに、心底逃げ出したい気持ちが滲み出ている。
「お前ねぇ…僕を拉致った事への償いはどうすんの?」
「そ、それは償ったではないですか!?蒸気機関に代わる新たな動力源の技術提供をする事によって!…ポ、ポピーさん…貴女からも言ってくださいよ。私は役目を果たしたって!」
神様なのに、人間の女性に助けを求めるヒゲメガネ。
「…はぁ………分かったわよ。そう言う約束だったしね………あのねお父さん、今回「ダメだよ。あんな技術を提供されても意味がない!」
だがしかし、簡単に許さないお父さん。
一体何がダメなのでしょうか?
「むしろ余計な事をしてくれたんだよプサン!」
「ど、どういう意味です?」
便利で素晴らしいと思うのですが…何がいけないの?
「いいかい…代理として任されたリュリュやポピーは、必死で現状維持を試みるから天空人の技術提供を強く要望するのは当然だ。でもね…僕のプランでは、末端への輸送手段は講じるつもりは無かったんだよ!」
「で、でもお父さん…各所で配送待ちの荷物が溢れて、結構な被害が発生してたんですよ!?特に食料品は直ぐに腐敗してしまうので、国家レベルの問題でした!」
そうよ…国家プロジェクトとして、輸送流通のシステムを構築した事に問題は無いはずよ。
「うん、そうだね。問題は解決しないといけないよね。でもね、それに神様の力を借りてはダメなんだよ。…つかプサンも断れよ!使い方次第で危険な技術の提供に反対しろよ!セーフティーを付けたからって安心出来る代物じゃねーんだぞ!」
スゲー…
普段は何でも丸投げにするのに、国家の事となるとちゃんと考えて色々行ってるんだ…
でも、どうすれば良かったのかしらね?
「じゃぁお父さんはどうするつもりだったの?私も色々考えたけど、他に解決方法が思い当たらなかったのよ!」
メインブレインを務めたポピーお姉ちゃんが、困惑しながらお父さんの真意を尋ねる。
「末端への移動手段を考えるのではなく、その場での保存手段を考えれば良かったんだよ。確かに民は少しでも早い流通手段を求めてくるだろうけど、全てを王国家で行う必要はないんだ」
「ど、どういう事ですか?リュカは国民が求める事を無視するつもりだったんですか?」
「これだから『神』とか呼ばれている連中は馬鹿なんだよ!」
「ぐっ…」
「国という物を造るのには、リーダとなる国王と、その下で働く国民との連携が必要不可欠なんだ。つまり、国王だけが頑張って国造りを行っても、国民にその意思が芽生えなければ、何れ国は崩壊する…だから、ある程度の道は築いても、その先は国民に任せる事も必要なんだ」
つまりは民営化ね。
競争相手を作る事で、事業に失敗すれば倒産するという危機感を植え付け、各企業間で切磋琢磨する状態を作りたかったのね。
「全てを国営化したって国は衰退して行く…半分以上を民営化する事で、国民同士が切磋琢磨して成長して行くんだ。国家はそのサポートを行うだけで、全てを我が物にしてはいけない。…何でソレが解んねーんだこの馬鹿神は!?」
「し、しかし…ポピーさんに頼まれて…その…」
「ふざけるなよ…俺の娘に罪を被せるのか!?お前が神として、人間の事を深く理解していれば今回の件は防げたんだろうが!お前は人間の事を知らなすぎる…人間を知らず、身勝手な振る舞いをするのが神というのならば、お前は正に神様だ!」
あ~あ…ポピーお姉ちゃんに罪を着せようとしたから、お父さんの怒りを買っちゃった。
「うっ…も、申し訳ありません…で、では今回の技術は返却という事でよろ「このバ~カ!出来る訳ねーだろ、そんな事!」
そうよ!
あんな便利グッズを手放せるわけないじゃん!
「人間って言うのは、一度でも便利な事に馴染んでしまうと、過去の不便には戻る事が出来ないんだよ!もう国内で出回っているんだろ!?」
「はい…大至急で配備しましたから…」
みんなお父さんの怒りは怖いのだろう…
何時もは説教する側のオジロンさんも、直立不動で即答大臣。
「だったら回収できるわけねーだろが!そんなことしたら暴動が起きかねないぞ!解ってて言ってるのか馬鹿!」
「で、では…どうすれば…」
「今更技術は返せない…だから未来において戦争利用などを防止するよう、今の内から子供達に教育して行かねばなるまい………義務教育がこういう風に役立つとはねぇ…流石は日本だ!」
私と違ってお父さんは、前世で色々考えて生きてたんだ…
「日本…?それは何ですかリュカ?」
「ん!…あぁ、お前は気にするな!それよりも、今回の賠償を払ってもらうぞ!」
「え!?技術を提供した上に賠償を迫るんですか?」
「当たり前だ馬鹿!余計な事をしたんだから、それが賠償になる訳ねーだろ!」
「わ、私はどうすれば…」
「うん。お前……新たに国を造って国王になれ!」
「……………はぁ!?」
まったく『はぁ!?』だ。
何を言ってるのでしょうか?国を造れって…どういう意味でしょうか?
「あぁ別に『国王』じゃなくてもいい…『神王』でも『皇帝』でもなんでもいい!ともかく天空城を地上に降ろし、領土を確保して国家を立ち上げろ!そしてそれを統治すれば、もう少し人間の事が解ってくる…国王を勝手に拉致る事の重大さも!」
国を統治する事の大変さを身を持って味あわせようって事かしら?
でも世界を統べる神様に、一国家を統治させても意味がないのでは?
あれ…でも神様って、一体私達に何をしてくれてるのかしら?
「そ、そんな事出来る訳ないでしょう!私は神として世界を統べなければならないのですよ…なのに、一国家だけに限定して統べるなんて…」
「何言ってんだお前…大昔に『世界は平和になったから、神の力を封印して普通のオジサンになりたい!』とか言って、世界を統治する事を放棄したのはお前だろ!その所為でミルドラースが台頭し、光の教団なるインチキ宗教が世界を混乱させたんだぞ!」
「で、ですが…「それにそうすれば、今回のように神の力を求められても、人間の力で解決する方法を提示する事が出来たんだ!」
確かにその通りだ。
人間と同じ目線じゃないから、助けを求められても余計な事をしてしまうんだ。
「もしくは天空城をよこせ!」
「な、何でそうなるんですか!?」
急に発生する無意味で無関係な要求。だがしかし…
「天空城をセントベレス山の麓に下ろし、リュリュに女王になってもらう!グランバニアと強い繋がりを持ち、国交を互いに支援し合って発展を促す存在になってもらう。天空城を渡したくないのなら、その役目をお前がやれ!グランバニアは国家として新たなる国に支援を惜しまない!共に未来を築いて行こうぜ!」
ちゃんと考えての発言に誰もが驚きます。
「か、簡単に言いますが…大変な事なんですよ…」
「そんなのは言われるまでもない!でもお前がやる気を出すのなら、直ぐにでもラインハットとテルパドールに使者を派遣し、共に支え合っていくよう要請する。どちらも即答でOKしてくれるだろう。あぁついでにルドマンにも商業面で協力を依頼しよう!」
お父さんはヒゲメガネに手を差し伸べながら、優しい口調で協力を約束する。
「後はお前が決めろ…天空城はセントベレス山の麓に下ろす事は決定事項だ。そこを統治するのがお前等天空人か、僕の手の者なのかはお前が決めろ!…それでも神として、国の統治など出来ないと言うのなら、天空城を捨ててこの世界から消えろ!力を封印して人間世界に浸るような神など、この世界には要らない!僕等の世界から出て行け!」
「……………」
お父さんの持論なのだろう…
“人の世界に神は要らない”人として成長をしていく事に意味があり、神が超人的な力で手を貸し、成長を阻害する事などあってはならないのだと、常に考えているのだろう。
「私に…国を統べる事が出来ると思いますか?」
「一つの国家も統べれないで、この世界全体を統べようとするのは止めてもらいたい…滑って痛い目を見る前にね」
お父さんのギャグが面白かったのではない…
でも、プサンは笑いながらお父さんと握手を交わす。
この世界に、新たな国家が生まれた瞬間だった。
後書き
次話は最終話です。
マリーちゃんの決意にご注目。
ページ上へ戻る