| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

草原の赤き花

 神敬介はモンゴルに来ていた。彼は今大草原の中にいる。
「いつも川や海でばかり戦っていたからな」
 彼はカイゾーグということもあり水中戦が多い。だがこうした場所にいるのも嫌いではない。
「こうした草原も悪くはないな」
 彼は元々自然がすきである。そしてそれを守る為に戦っているのだ。
「敬介さん、そこにいたんですか」
 そこに馬に乗った佐久間がやって来た。
「ええ、ちょっとこの草原を見たくなりまして」
「それだったらいいんですけれどね、気をつけて下さいよ。バダンの奴等は時と場所を選びませんから」
「はい」
 彼は佐久間に従いその場所をあとにした。彼もまた馬に乗った。
 それを遠くから見る影があった。
「ギヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」」
 それはドクターケイトであった。
「まさか仮面ライダーⅩがここにやって来るなんてねえ。少し意外だったわ」
 彼女は無気味な笑い声を出して笑った。
「相手にとって不足はないね、いやむしろ中国での借りを返すいい機会だよ」
 彼女は長江での作戦失敗の恨みをまだ忘れてはいなかった。
 その周りに数人の戦闘員が姿を現わした。
「来たね」
 彼女は彼等の姿を認めて言った。
「ここでの作戦はわかっているね」
「ギィ」
 戦闘員達はそれに対して頷いた。
「なら問題はないよ。じゃあこの大草原を死の荒野に変えてやるよ」
 彼女はそう言うとその場から消え去った。だがそれを見る影がもう一つあった。
「フン、どうせまだ毒を使うつもりだろう」
 それは白いスーツに身を包んだ青年であった。
「芸のない女だ。所詮はその程度か」
 彼はドクターケイトの消えた方を侮蔑の眼差しで見ながら言った。
「Ⅹライダーはこの俺が倒す。他の誰でもない」
 彼は強い口調で言った。
「貴様などではない。それだけはよくわきまえておくのだな」
 そして彼もその場から消え去った。

 神と佐久間はこのモンゴルでバダンの行方を捜していた。この地に怪しげな影を見たとの話があったからだ。
「といってもモンゴルは広いですねえ」
 二人は馬に乗っていた。佐久間がふと神に対して言った。
「広いとは聞いていたけれどまさかこんなにだだっ広いとは」
「それがモンゴルですよ」
 神は遠くに見える地平線を眺めながら言った。
「この広大な草原こそがモンゴルです。何処までも続く青い空とこの草原がね」
「そうなんですか」
 佐久間はそれを聞いて神に顔を向けた。
「神さんってここに来たことはあるんですか?」
「ええ、一回だけ」
 神は答えた。
「といってもシベリアに行く時に横切っただけですが。ここで戦ったことはありません」
「そうですか。けれど何かここでは戦いたくはないですね」
 佐久間は草原を見下ろしながら言った。
「あまりにも綺麗な草が広がってますから」
「それは何処でもそうですよ」
 神は言った。
「誰でも戦いたくはないんです。ましてやそれで多くの人達の血が流れ命が失われるのなら尚更」
「そうですね」
 それは佐久間もよくわかっていた。彼は仲間達をデストロンとの戦いで失っているのだ。
「しかし自分達の野心の為に戦いを行なう者達もいるのです。幾ら倒されようと」
「・・・・・・・・・」
 それが誰か、言うまでもない。
「だけれどそんな奴等の野心を成就させたら大変なことになるでしょう?だから俺達も戦わなくちゃならないんです。戦える力があるから奴等の野望を打ち砕く、それが俺達の仕事です」
 それがライダーであった。
 佐久間はそれ以上何も語らなかった。二人は無言で草原の海を進んでいた。
 ふと馬が脚を止めた。神はそれに不穏な気配を感じた。
「馬が脚を止めたか」
 馬は繊細な生き物である。感覚も鋭く人が感じられないものを感じることが出来るのである。
「来るな」
 神はふと呟くように言った。すると馬蹄の響きが聞こえてきた。
「イィーーーーーッ!」
 バダンの戦闘員達が姿を現わした。皆馬に乗っている。
「神敬介、今日こそ貴様の命を貰い受ける!」
 その先頭には怪人がいた。ショッカーのテレパシー怪人ジャガーマンである。
 彼等は馬に乗ったまま突進してきた。そして鞍から剣を取り出した。
「ムッ」
 神と佐久間はそれをかわした。そして戦闘員達の手から剣を奪った。
 それで斬り合いをはじめる。二人は馬上で剣を振るった。
 二人は戦闘員達を次々と斬り伏せる。だが戦闘員達は次々に現われる。
「ジャガーマン、助太刀に来たぞ!」
 そこに新たな怪人が現われた。ドグマの竜頭怪人ヤッタラダマスである。
「死ねえっ!」
 ヤッタラダマスは口から火を吐いてきた。神はそれを上に跳びかわした。
「無駄なことだ!」
 今度は上に火を吐く。だがそれは弾き返された。
「ムウッ!」
 そこにはⅩライダーがいた。彼は空中で変身していたのだ。
 Ⅹライダーは馬の鞍の戻った。そして腰からライドルを引き抜いていた。
「行くぞっ!」
 ライドルはホイップにチェンジした。そしてそれで戦闘員達を斬り伏せる。
「ならばっ!」
 それを見たジャガーマンがやって来た。彼はその手にある爪でⅩライダーを切り裂かんとする。
 だがⅩライダーの動きの方が速かった。ライダーは怪人の馬の横を駆け抜けた。
「トォッ!」
 そしてライドルを一閃させた。怪人は胸を斬られた。
「ヒョーーーーーーオゥッ!」
 怪人は断末魔の叫びをあげ落馬した。そして草原の上で爆死した。
 二体の怪人は倒した。戦闘員達も佐久間が既に倒していた。
「やっぱりいましたね」
 佐久間がこちらに馬を進めてきた。
「はい。残念なことに」
 Ⅹライダーは自分達の考えが的中したことに苦々しさを覚えていた。彼は変身を解いても渋い顔のままであった。

「そうかい、ジャガーマンとヤッタラダマスは死んでしまったかい」
 ドクターケイトはパオの中で戦闘員達の報告を聞いていた。
 遊牧民であるモンゴル民族は家を持たない。このパオという羊の皮から作られたテントに似たもので生活しているのだ。
 その中は質素なものである。羊を追い草原を進む彼等にとって無駄な財産など不要だからだ。
 この生活は何千年も前から変わらない。彼等は長きに渡ってこの草原でこうして生きてきているのだ。
「残念だねえ。しかし死んでしまったものはしょうがないよ」
 彼女は口惜しそうに言った。
「今あたし達がしなけりゃならないことはこの草原を死の荒野に変えることだ。Ⅹライダーも大事だがね」
「とするととりあえずは無視しますか」
「そうだね。あの二人でやっつけられなかったからね。ここはあの男に見つからないようにすればいいだけだし」
「愚かだな。神敬介はそれを見過ごす程迂闊な男ではない」
 そこで誰かの声がした。
「・・・・・・またあんたかい」
 ケイトはその声を聞き顔を顰めた。
「そうだ。仮面ライダーⅩがここに来ていると聞いたのでな。わざわざギリシアから出向いてきたのだ」
 先程の白いスーツの青年である。アポロガイストだ。
「あんたも暇だねえ。あんなところからやって来るなんて」
「俺の望みはあの男との決着をつけること。他には何もない」
 彼はドクターケイトの皮肉を聞き流してそう言った。
「そもそも貴様は一度Ⅹライダーに作戦を破られているではないか。よくそれでそんな余裕が言えるな」
「余裕じゃないよ、自信ってやつだ」
 ケイトはそう言い返した。
「ほう」
 アポロガイストはその言葉に眉を動かしてみせた。
「あたしも誇り高き妖花アルラウネの末裔、この身体にはあらゆる生物を殺せる毒があるんだよ」
「そうだったな。その毒で貴様はこれまで多くの功績をあげてきた」
「知ってるじゃないか。じゃあ文句はないね」
「確かにな。それで炎に強ければどんなに良かったか」
 アポロガイストは彼女を挑発するように言った。ケイトの顔色がサッと変わった。
「喧嘩を売ってるのかい!?」
 彼女は立ち上がった。そして側に立ててあった杖を手に取りそれを向けた。
「別に。ただ本当のことを言ったまでだが」
 アポロガイストは悪びれない。相変わらず彼女を挑発するような口調である。
「グギギ・・・・・・」
 ケイトは歯噛みした。だが彼と戦っても何の利もないことはわかっている。無益な戦いをする程彼女は愚かではない。
「フン、まあいいよ」
 彼女は杖を収めた。
「それであんたはⅩライダーをやっつけるつもりなのかい?」
「当然だ。その為に来たのだからな」
 アポロガイストは不敵に笑ってそう言った。
「ドクターケイト、ここでの作戦に口出しするつもりはない。好きにするがいい」
「フン、当然だよ」
 ケイトは不満を露わにして言った。
「俺はⅩライダーをやる。あの男のことは考えなくていいぞ」
「じゃあそうさせてもらうかい」
「そうするがいい。俺は俺、貴様は貴様だ」
 そう言うと踵を返した。
「俺が言いたいのはそれだけだ。では作戦の成功を祈る」
 そして彼はパオを後にした。
「チッ、何時会っても腹の立つ男だねえ」
 ドクターケイトはアポロガイストの気配が去ったのを見計らって口を尖らせた。
「あれで岩石男爵や隊長ブランクみたいだったら何とでもなるんだけれどね。生憎頭まで切れるときた」
「ゴッドでは第一室長だったのでしたね」
 戦闘員の一人がケイトに対して言った。
「ああ。かなり辣腕を振るっていたらしいね。Ⅹライダーでも時には遅れをとる程」
「それは尋常ではないですね」
「そうだよ。だから今は下手に手出しは出来ない」
 彼女はそう言うとそこで表情を変えた。
「・・・・・・今はね」
 そして酷薄な笑みを浮かべた。
「いずれ思い知らせてやるよ。このドクターケイトを馬鹿にした奴がどうなるかを。その時に何て言うかねえ」
 彼女の目は燃えていた。暗い憎悪の念に燃えていたのである。

 神と佐久間はモンゴルでバダンの影を探し続けていた。彼等は相変わらず馬に乗っている。
「しかしこの馬ってのはいいものですね」
 神は佐久間に対して言った。
「いつもはマシンに乗っていてわからなかったんですけれど」
 青い空の下で彼は明るい顔で佐久間に声をかけている。
「何か世界が違って見えますよ」
「本当ですね」
 佐久間もそれに対し相槌を打った。見れば彼の顔も明るい。
「いつもより高いところから世界が広く見えますね。まあ馬の高さのせいですけれど」
「それに速いし。日本でも乗っていたいですね」
「神さん、それは無理ですよ」
「わかってますよ、ははは」
 彼等は草原の中で朗らかに笑っている。そして夕方になり二人は休息をとった。
「美味しいですね」
 火を囲んで座っている。佐久間が白いものを口にして言った。彼等は馬の乳から作ったチーズを食べている。
「ええ」
 神は赤いものを口にしちえる。これは羊の干し肉だ。
「馬の乳ってどんなものかかなり不安だったんですけれどこれは中々」
「牛のものと比べると少し癖がありますけれどね」
 神もそれを口にした。モンゴルでは乳製品が主食である。
「明日はどっちへ行きます?」
 食事を終え佐久間は寝袋に入りながら問うた。
「東に行きましょう」
 神は磁石を覗き込みながら言った。そして二人は眠りに入った。
 翌日二人は馬に乗り東に向かった。陽が次第に高くなっていく。
「それにしても雲ひとつない空ですね」
 その高くなっていく陽を見ながら佐久間が言った。
「ええ。けれどこうした日が続くのはあまり多くないそうですよ」
 神は言った。
「そうなんですか?」
「ええ。モンゴルは冬がものすごく長いですしね。一年の大半は雪に覆われるんです」
「そうなんですか」
「モンゴルの冬は凄いらしいですよ。寒さで牛の頭が割れるくらいだそうですから」
「そういえばここのすぐ北はシベリアでしたね」
「はい」
「だとしたら寒いのも当然ですね。それにここは高原にあるんだし」
「そうです。そして内陸地ですからね。あまり住むのにいい場所ではないでしょう」
「そんなところにモンゴルの人達はずっと生きているんですか。大変ですね」
「ところがモンゴルの人達はここが一番素晴らしいと言いますよ。畑を耕すよりこの草原で羊をと一緒に生きているほうがずっといいって言います」
「それだけこの草原に愛着があるのですかね」
「そりゃそうでしょう。あの人達はこの草原で生まれ育ち、そして草原に帰るのですから」
 それはモンゴル人の宿命であった。かって世界を席巻したモンゴル帝国の偉大なる創始者チンギス=ハーンもまたその一生の最後をこの草原で終えている。
「俺達も日本って国に愛着心があるでしょう?」
「それは当然です」
 佐久間は答えた。彼は日本から長い間離れているがそれでも祖国を愛している。
「それと一緒です。モンゴルの人達もこの草原が好きなんです」
「そう言われるとよくわかりますね」
 彼は外国にいてはじめて自分の国の素晴らしさがわかった。愛国心を持たぬ者は馬鹿にされるということもわかった。彼はそれを嫌という程よくわかっていた。だから悪行の限りを尽くすテロ国家を擁護し祖国を貶めるような輩はバダンの次に嫌いであった。
 しかし今はそれを心の中に留めておいた。今はバダンを倒すことだけを考えることにした。
 昼食をとった。そしてさらに進んだ。
「何か感じましたか?」
 佐久間は神に対し尋ねた。
「はい、来ますよ」
 神の顔は真剣なものであった。そこへ砲弾が飛んで来た。
「危ないっ!」
 彼等は馬を走らせる。つい先程までいた場所を爆風が襲う。そしてその爆風は彼等を追う様に連なってくる。
「佐久間さん、馬達を安全な場所に!」
 神は馬から飛び降りた。そして佐久間に馬を預けた。
「わかりました!」
 佐久間はそれに答えた。そして彼は自分の乗る馬と神が乗っていた馬を連れて何処かへ去った。
「来い、バダン!」
 彼は草原の上に身構えて叫んだ。
「俺はここだ、逃げも隠れもしない、来るなら来い!」
 その彼の周囲を爆風が包んだ。
「フフフ、いい心掛けだ」
 少し丘陵になっている高い場所に彼等が現われた。
 そこにはアポロガイストがいた。隣にゴッドのナパーム怪人プロメテスを引き連れている。
「そうでなくては倒しがいがないというものよ。俺の生涯の宿敵としてな」
 彼は既に変身していた。そして右手のサーベルで爆風を指し示した。
「神敬介、いやⅩライダーよ」
 神の生死は不明である。彼の姿は爆風の中に消えている。だが彼は言葉を続けた。
「貴様を倒す為にこのモンゴルまで来てやったぞ」
「それは何よりだな」
 爆風の中から声がした。
「それも貴様がこの地にいるからだ。俺は貴様との勝負を決する為なら例え地の底でもやって来る」
「そして俺の首を取るということか」
 神の声は爆風の中から聞こえてくる。どうやら無事であるらしい。
「その通り、このモンゴルを貴様の墓標にしてくれる!」
「面白い、ならば今日こそ決着をつけてやる!」
 風が吹いた。爆風が消え去る。Ⅹライダーがその中から姿を現わした。28
「クルーザー!」
 彼はマシンの名を呼んだ。銀色の輝くマシンが何処からか姿を現わした。
「トォッ!」
 彼はそれに飛び乗った。そして丘陵に向かう。
「フフフ、来たな」
 アポロガイストは宿敵のその姿を見て笑った。
「行け、怪人達!」
 彼は叫んだ。ミサイルヤモリが身構える。そして遠くからもう一体の怪人がマシンに乗りやって来た。
「ムッ!」
 それは牙の形をしたマシンであった。そこに乗るのはデストロンキバ一族の偉大な祖先原始タイガーである。
「それだけではないぞっ!」
 アポロガイストは叫んだ。そして右手を挙げた。すると黒いマシンがやって来た。
「トゥッ!」
 彼は大きく跳んだ。そしてその黒いマシンに飛び乗った。
「Ⅹライダー、俺の攻撃に耐えられるかっ!?」
 マシンに乗った戦闘員達もやって来た。彼等はⅩライダーを取り囲んだ。
「ルルルーーーーーーッ」
 プロメテスの砲撃は続く。そしてそれをかいくぐる様にして原始タイガーと戦闘員、そしてアポロガイストが襲い掛かって
きた。
「ヌホーーーーーンッ!」
 原始タイガーは咆哮した。そして戦闘員達を引き連れⅩライダーに突進する。
「来たかっ!」
 Ⅹライダーは腰からライドルを引き抜いた。そして身構える。
 怪人は口から火を吐く。ライダーはそれをマシンを捻ってかわす。
 間合いが離れる。咄嗟にライドルを換装する。
「ライドルローープッ!」
 そのロープで戦闘員達を叩く。ロープは鞭のようにしなり戦闘員達をマシンから叩き落とす。
 そして怪人の首に絡みついた。Ⅹライダーはそのまま思いきり放り投げた。
「ウオオオオーーーーーーーンッ!」
 怪人は絶叫しつつ天に舞い上がった。そして地面に叩きつけられ爆死した。
「やりおったな」
 アポロガイストはその爆発を見て言った。主を失くした牙のマシンも戦闘員達のマシンも倒れ爆発して草原の塵となっていく。
「これだけではないぞっ!」
 Ⅹライダーは叫んだ。そしてクルーザーDを大きく跳躍させた。
「ムッ!」
 それはアポロガイストの頭上を越えた。そしてプロメテスに一直線に向かう。
「ルルーーーーーッ!」
 怪人はそれを避けようとする。だが間に合わない。彼はマシンの直撃を受けて吹き飛ばされた。遠くで爆発が起こった。
「これで援護射撃もなくなったぞ、アポロガイスト!」
「そんなものは必要ないっ!」
 彼は下でⅩライダーを見上げて叫んだ。
「俺にはこれがあるっ!」
 そう言って右手を向けてきた。
「アポロマグナムッ!」
 その右腕から三連で銃弾が放たれる。そしてⅩライダーの周りで爆発した。
「ウォッ!」
 ライダーはそれを何とかかわした。しかしアポロガイストの攻撃は続く。
「ガイストカッターーーーッ!」
 今度は楯を投げてきた。それは唸り声をあげ激しく回転しながらⅩライダーに迫る。
「させんっ!」
 それに対してライドルを構える。そして換装した。
「ロングポーーーールッ!」
 ライドルを思いきり長く伸ばした。そしてそれでガイストカッターを叩き落とした。
「今度はこちらから行くぞっ!」
 丘陵を降りてきた。走りながらライドルをホイップに換える。
「望むところだっ!」 
 アポロガイストもそれを見てマシンを走らせた。右腕のサーベルを構える。
「死ねっ、Ⅹライダーーーッ!」
 ライドルとサーベルが打ち合った。鋭い衝撃音と銀の火花が散る。
 両者が交差した。そして機首を転じ再び向かい合う。そして激突する。
 また火花が散った。そして斬り合う。何時しかその打ち合いは百合を超えた。
 だが両者は疲れを見せない。草原の上で睨み合い斬り合っている。
「噂通りだな。さらに強くなっている」
「貴様こそな」
 二人は白銀の光が舞い散る中言った。
「面白い、それではドクターケイトに倒されることもないな」
 アポロガイストは間合いを離して言った。
「どういうことだ!?」
 Ⅹライダーは不意に間合いを離した彼に対して問うた。
「俺はここで退く。後はケイトと戦え、ということだ」
「どういうことだ、俺をここで倒すつもりではなかったのか!?」
「気が変わった。貴様と決着をつけるにはよりよい場所があるしな」
「よりよい場所!?」
「そうだ。貴様はいずれそこに来ることになる」
 アポロガイストは不敵に笑ってそう言った。
「その時までその命は預けておこう。それまで精々腕を磨いておくがいい」
 彼はそう言うと去って行った。こうしてアポロガイストとⅩライダーのモンゴルでの戦いは終わった。
 そしてドクターケイトの基地の捜索は続いた。だが中々見つからない。
「弱りましたねえ」
 佐久間は思わず顔を顰めた。このモンゴルにはパオが散見するだけで目立つようなものは何もないのだ。
「見渡すところ草原ですからね。これでは探しようがないですよ」
「確かにそうですね。まさかこんなに探しにくい場所だったとは」
 神もその言葉に頷いた。これは彼の予想以上であった。
「草の他にあるものといえば」
 彼は草原を見渡していた。
「花位ですね」
 ふと見ると足下に優しい赤い色をした花が咲いていた。
「それは目印とかにはなりませんね」 
 佐久間はその花を見て苦笑した。
「まあそれはそうですが」
 神はそれにつられて同じように苦笑した。その時だった。
「いや・・・・・・」
 彼はそこであることに気付いた。
「そういうわけではないかも知れませんよ」
「といいますと!?」
 佐久間はその言葉に顔色を変えた。
「ドクターケイトですよ。あいつは何の改造魔人ですか!?」
「花、それもケイトウの」
「それです、あいつは赤い花の化身ですよね、ということは」
「あいつのいる場所には赤い花が多量にある、ということですか!?」
「そうです、これは仮面ライダーストロンガーに聞いたことですが」
 ドクターケイトは人をケイトウの花に変える。その為彼女の基地の周りには多くの赤いケイトウの花が咲いているのだという。
「成程、それではその花を探せばいいんですね」
「はい、おそらくそこにドクターケイトは潜んでいる筈です。それを見つけましょう」
「はい!」
 こうして二人は赤い花の集まっている場所を探した。途中に出会う人々に聞きそれを探し回った。
 それはすぐに見つかった。この高原の辺境にその赤い花の咲く場所があった。
「ここだ、間違いない」
 二人は目の前に広がる赤い花の絨毯を見て言った。
「予想した通りだ。ケイトウの花だ」
 それは毒々しい、まるで血の様な色のケイトウであった。
「あとは何処に入口があるかですね」
 佐久間は辺りを見回した。
「ムッ」
 見れば一人の戦闘員が馬に乗りこちらにやって来る。
「貴様等はっ!」
 彼のほうでもそれに気付いた。馬を飛ばしてこちらに向かって来る。
 神と佐久間はその戦闘員に向かった。そして忽ち羽交い絞めにする。
「グググ・・・・・・」
 戦闘員は腕を押さえられ呻き声をあげる。
「言え、基地への入口は何処だ」
 神は戦闘員に対して問う。
「クッ、一体誰が貴様等なぞに・・・・・・」
 彼は口を割ろうとしない。だがそれに対し神はさらに手を締めた。
「ウオッ・・・・・・」
「さあ言え」
 彼はそうしたうえで再び問い詰めた。
「わ、わかった」
 戦闘員は止むを得なく口を割ろうとする。その時だった。
 緑の液がその戦闘員を襲った。
「ムッ!?」
 神と佐久間は慌てて彼から身を離した。液は戦闘員にかかり彼を瞬く間に溶かしてしまった。
「ギヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
 草原に無気味な笑い声が木霊した。
「その声はっ!」
 二人は声のした方を振り向いた。そこにはあの女がいた。
「よくあたしがここにいるってわかったねえ、大したものだよ」
 ドクターケイトは今戦闘員を溶かした液を発した杖を二人に向けながら言った。
「その花が教えてくれたのさ」
「成程、花かい」
 ケイトは神の言葉に反応し顔を花に向けた。
「かって仮面ライダーストロンガーが言っていた。貴様は自分の周りにケイトウの花を置いているとな」
「そうだよ。ケイトウはあたしの分身みたいなものさ」
 彼女はその言葉に対し目を細めて言った。
「だけれどねえ、何で花が一杯あるか知っているかい!?」
「当然だ」

 神はケイトの言葉に対して身構えた。彼女は人をケイトウの花に変えてしまう力があるのだ。
「この花は毒の塊だよ。これから毒ガスを作りモンゴルを死の荒野に変えてやるつもりなのさ」
「だがそれは俺がいる限り絶対に許さん!」
 神は彼女を指差して叫んだ。
「ほお、出来るのかい!?」
 ケイトは彼を侮蔑した声と顔で見下した。
「長江では遅れをとったが今度はそうはいかないよ」
 彼女の周りに戦闘員達が姿を現わした。怪人達もいる。ネオショッカーの亡霊怪人クチユウレイとブラックサタンの植物怪人奇械人モウセンゴケである。
「さあ、あんたも毒の花に変えてやろうか」
 彼女は左右に戦闘員達を従えて言った。
「倒れるのは貴様だ、ドクターケイト」
 神は言った。そして変身の構えをとった。

 大変身・・・・・・
 彼は両手を垂直に上げた。そして左右にゆっくりと開いていく。
 身体が白いバトルボディに包まれる。胸が赤くなり手袋とブーツが黒くなる。
 エーーーーーーックス!
 左腕を脇に入れる。その手は拳となっている。
 右手は左斜め上に突き出している。その手は手刀である。
 顔の右半分が銀の仮面に覆われる。下半分は黒く、目は血の色である。そして左半分も。
 
 全身が銀色の光に包まれた。神敬介は仮面ライダーⅩとなったのである。
「変身したねえ、Ⅹライダーに」
 ドクターケイトはそれを見下ろしながら言った。
「遂にあの時の借りを返す時が来たよ。者共やっちまいな!」
「イイーーーーーーーッ!」
 戦闘員達が叫ぶ。そして丘陵を降りⅩライダーに立ち向かう。怪人達もいた。
「来たな」
「Ⅹライダー、雑魚は俺に任せて下さいっ!」
 佐久間が前に出て来た。そして戦闘員達に立ち向かう。
「お願いしますっ!」
「了解っ!」
 戦士達は二手に分かれた。Ⅹライダーは二体の怪人の前に行った。
「ギュアッヒャッヒャッヒャッヒャッ」
 奇械人モウセンゴケは右手の食虫植物の鋏を手にⅩライダーに立ち向かう。Ⅹライダーはそれに対してライドルを引き抜いた。
「その棒には気をつけるんだよっ!」
 ケイトがそれを見て叫ぶ。怪人はそれを受け間合いを離してきた。
 そして右腕から毒液を放つ。しかしライダーはそれをかわした。
「無駄だっ!」
 そして跳躍した。
「トォーーーーーッ!」
 ライドルはスティックとなっている。それを奇械人の脳天へ向けて振り下ろす。
「ライドル脳天割りーーーーーっ!」
 ライドルは怪人の脳天を叩き割った。怪人は毒液を撒き散らしつつ地に倒れ爆発した。
「カビィーーーーーーッ!」
 今度はアオカビジンが向かってきた。全身のカビを燐粉のようにして撒き散らしてくる。
「ムウゥッ」
 Ⅹライダーはそれを見て思わず呻いた。
「さあ、これはどうやって対処するんだい!?」
 ドクターケイトはそれを見ながらⅩライダーを嘲笑した。彼の敗北を確信しているようだ。
「・・・・・・・・・」
 Ⅹライダーは沈黙している。ただその燐粉の動きから目を離さない。
「これでどうだっ!」
 彼は急に叫んだ。そしてライドルを自分の胸の前で風車のように高速回転させた。
「そ、その技はっ!」 
 ドクターケイトはそれを見て思わず叫び声を出した。
「そうだドクターケイトよ、貴様もこの技は知っているだろう!」
 彼は叫ぶようにして言った。ライドルに炎が宿っていく。
「喰らえ・・・・・・」
 そしてそのライドルを怪人めがけ投げた。
「ライドル火炎地獄っ!」
 ライドルは炎を宿らせたまま飛ぶ。燐粉を燃やし怪人に突き進んでいく。
「ガビーーーーーーッ!」
 怪人はライドルを受け叫んだ。そして忽ち炎に包まれ爆死した。
「ドクターケイト」
 Ⅹライダーはそのライドルを手に取って彼女に顔を向けた。
「来いっ!」
「フンッ、望むところだよっ!」
 彼女はそう言うと下に飛び降りてきた。そしてⅩライダーの前に着地する。
「その身体、毒で全部溶かしてやるよ」
 そう言うと杖で殴り掛かってきた。Ⅹライダーはそれをかわした。
 Ⅹライダーもライドルを繰り出す。そしてその杖を受け止めた。
「ギヒヒヒヒヒヒ」
 ケイトはまたもや笑った。そして身体から毒の霧を発する。
「ムッ」
 Ⅹライダーはそれから身をかわした。ケイトはそれに対しナイフを投げてきた。
 しかしそれはライドルで叩き落とす。だが毒霧の為近付くことは出来ない。
「おやおや、さっきまでの威勢はどうしたい!?」
 それはケイト自身が最もよくわかっている。Ⅹライダーが近寄れないのを見て得意気に笑っている。
「また火を使うつもりかい?けれどいい加減見切らせてもらってるよ」
「クッ・・・・・・」
 彼女もデルザーの改造魔人である。一度どころか二度も見た攻撃が通用するとは到底思えなかった。
「さっきも言ったけれどあんたにゃあ借りがあるからねえ」
 彼女は無気味な声で言った。
「ゆっくりと苦しんで死んでもらうよ」
 その残忍な目が光った。
 毒霧は辺りを覆っていく。草を枯らし空気を汚していく。そしてⅩライダーにジワリ、ジワリと近付いてくる。
「一体どうすれば・・・・・・」
 Ⅹライダーはそれを見ながら考え込んだ。その間にも毒霧は迫る。
「待てよ」
 ここで彼はあることに気付いた。
「そうだ、この手があった!」
 彼はそう叫ぶとライドルのスイッチを入れた。
「エレクトリックパワーーーーッ!」
 ライドルの電流が走る。そしてそれは霧に向かってビームのように放たれた。
「フン、なにをするかと思えば」
 ケイトはそれを見て嘲笑った。
「生憎だけれどあたしは電流は何ともないのさ!」
「確かに電流にはそうだろう」
 しかしⅩライダーはそれに対し落ち着いた声で応えた。
「だがそれから発するものはどうかな?」
「何!?」
 ケイトは思わず首をかしげた。その時だった。
 霧の中に電流が入った。それは霧の水分に反応し伝わった。
 忽ち霧全体を電流が走る。そして激しい音が鳴った。
「こ、これはっ!?」
 ドクターケイトはその真っ只中にいた。そしてその電流に目を見張った。
「電気は水を伝う。そのことを知らないわけではあるまい」
 Ⅹライダーはそれを見てケイトに対して言った。
「そして電気が動くことによって何が生じるかも」
「まさか・・・・・・」
 ここに至りドクターケイトはようやく自らの置かれた状況を察した。その顔が驚愕に覆われる。
「そうだ、ドクターケイト、貴様はこれで死ぬのだ!」
 電流の熱がケイトを襲う。彼女はその熱により全身を激しく痛めつけられた。
「ギヤアアアアアッ!」
 人のものとは到底思えぬ異形の者の叫び声が木霊した。ドクターケイトはその電流の渦の中で絶叫していた。
「これで決まりだな」
 Ⅹライダーはそれを見て呟いた。霧は消えケイトは全身を痛めつけられた状態で片膝を折った。
「グググ・・・・・・」
 それでも彼女は立ち上がろうとする。顔をⅩライダーに向けた。
「よくもやってくれたね・・・・・・」
 その顔から闘争心はいまだ消えてはいなかった。
「だけれどねえ、あたしも一人で死ぬわけにはいかないんだよ」
 そう言うとふらつく足取りで立ち上がった。
「あんただけは道連れにしてやるよ、覚悟するんだね」
 そして前に進む。
「ウオオオオオオオオッ!」
 Ⅹライダーに向けて突進した。だがライダーはその動きを冷静に見ていた。
「無駄だ」
 ライドルをホイップに変える。そしてそれでケイトの胸を断ち切った。
「お、おのれ・・・・・・」
 これで動きが止まった。ケイトはそれでもまだ足を進めようとする。
「エ、Ⅹライダーだけは・・・・・・」
 だがそれが限界であった。彼女は地に伏すとそのまま爆発と共に消え失せた。
「改造魔人ドクターケイトの最期か」
 Ⅹライダーはその爆発と正対しながら呟いた。
「敵ながら恐るべき執念だった」
 彼は消えゆくデルザーで猛威を奮った改造魔人の最期を見送りながら呟いた。
 こうしてモンゴルでの戦いは終わった。ケイトウに変えられていた人々はドクターケイトの死と共に元に戻りⅩライダーと佐久間は彼等を保護した。基地は破壊されこれでモンゴルでのバダンの作戦は阻止されたのである。
「見事だ。流石は俺の生涯の宿敵」
 モンゴルの草原を馬で進む二人を見ながら白いスーツの青年は呟いた。
「そうでなくては面白くはない」
 アポロガイストはその冷徹そのものの表情で神を見下ろしている。
「俺もこれを出せないしな」
 彼は右手をサッと上げた。するとそこに一体の巨人が姿を現わした。
「貴様との決戦の時にはこれを使わせてもらおう。決戦に相応しくな」
 彼はそう言いながら不敵に笑っている。
「そして貴様は血の海の倒れるのだ。この俺の手でな」
 そう言うと踵を返した。
「その時まで腕を磨いておけ。俺を失望させない為にもな」
 アポロガイストは草原から去った。巨人も何処かへ姿を消していた。


草原の赤き花   完



                                2004・4・23

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧