『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
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第五話
「姫様ッ!! 早くこの窪みに隠れて下さいッ!!」
「嫌だッ!! 貴様らを犠牲にしてまで私は生き残りたくはないッ!!」
連合諸王国軍の夜中による夜襲もほぼ失敗しようとしていた。
数人の兵士が何処かの国の姫に穴が空いている窪みに入ろうと促せるが当の本人は否定している。
「今姫が生き残らなければグリュース王国どうなるんですかッ!? 昼間の戦闘で王は戦死をしているんですッ!!」
「しかし……」
兵士の言葉に姫は躊躇する。
「えぇい御免ッ!!」
ドスッ!!
「ぐッ!?」
一人の兵士が姫の腹を殴る。
「き、貴様……」
「姫、今は御許しを。皆、姫を守るのだァッ!!」
『オォォッ!!』
兵士の言葉に周りにいた兵士は楯を持って姫を守ろうとするが、襲い掛かる銃撃に次々と倒れていく。
「み……みんな……」
倒れていく兵士の姿に姫は涙を流しながら気絶をした。
「……此処は……」
女性が立ち上がる。女性の髪はシルバーブレンドでショートヘアであり出るところは出ている。
女性は辺りを見渡すがそこは何処かの部屋だった。
「あ、目が覚めたようですね」
その時、扉が開いて赤十字の腕章を付けた衛生兵が入ってきた。
「ちょっと軍医を呼んでくる」
衛生兵はそのまま部屋を出て医師を呼びに行ったのであった。
「……大丈夫すか中尉?」
「何とかな。まだ痛いし……」
摂津中尉はあの女性にアッパーをされて気絶して医務室に運ばれていた。
「大分噂になってますから。アッパーで気絶させられたと……」
「……柳田大尉辺りがニヤニヤしながら言ってくるのが見えてくるな……」
摂津は溜め息を吐いた。
「ところで、さっきの女性が目を覚ましたようですよ」
「俺を気絶させた後に自分もまた気を失ったあれ?」
「はい。事情聴取するみたいですけど中尉がするなら譲ると言ってますよ柳田大尉が……」
「……計算されてないか?」
「気のせいです」
摂津はもう一回溜め息を吐いた。
「き、貴様はさっきの……」
「言っておくが俺は手拭いを巻いただけやからな」
顔が赤くなっている女性に摂津はそう釘を刺した。
結局は摂津が簡単な事情聴取をする事にした。柳田少佐はやっぱりニヤニヤされたが……。
「俺は日本帝国の特地派遣部隊の一員の摂津樹だ」
摂津は女性に自己紹介する。
「……私はグリュース王国のシント・ダ・グリュースの娘のヒルデガルド・ダ・グリュースだ」
「……てことはお姫さまというやつか?」
「そうだ」
摂津の言葉にヒルデガルドが頷く。ちなみに言語は銀座事件で捕虜にした貴族から教えてもらって派遣部隊全員に言語の本が配られている。
「それでお姫さまが何故戦っていた?」
「我が国は帝国からの支援要請を受諾して兵力八千で連合諸王国軍に参加した。我が国は領土も少ないし民も少ないからな」
ヒルデガルドはそう説明する。
「そして参加したが、貴様らの攻撃で我がグリュース軍は全滅した。恐らく帝国が今頃グリュース王国に侵攻して占領しているだろうな」
ヒルデガルドは苦々しくそう吐いた。
「……暫くは君の処遇は保護として扱う。食料や衣服は此方から提供する」
「……奴隷として扱わないのか? 戦争で捕虜になった人間は男性は奴隷として売られ、女性は貴様らの慰め物になるのが普通だが……」
「……俺らはそんな事はしない(てかそんなんしたら色々と問題が起こりそうだからな)」
摂津は心の中でそう呟いた。
そしてヒルデガルド・ダ・グリュースは大日本帝国で保護する事になった。
「……服は女性物を要請したのに何で男性物を着ているんだ?」
ヒルデガルドは普通の男性服を着ている。
「男が生まれなかったからな。私が男装をして民の前に出ていた。まぁ古くから知る兵士達は知っていたがな」
ヒルデガルドはしれっと言う。それに出るところ出てます。いやマジで御馳走様です。
しかし、今のところはそのままで過ごすしかないので内地に女性の下着等を移送するよう手配されるのであった。
「メシはどうしてるんだ?」
「さっきはお粥を食べさせましたが、軍医からの話では普通に食べても大丈夫のようです」
「それなら大丈夫か」
「食堂は今開いてますので」
「分かった。ありがとうな」
摂津は衛生兵に頭を下げて礼を言った。
「美味いッ!! 辛いッ!! けど美味いッ!!」
食堂でヒルデガルドが二杯目のカレーを食べていた。ちなみに特地では毎週金曜にカレーが出される事になっている。
金曜カレーで曜日が分かれば後は楽なのである。
「オリザルみたいな物だと思っていたがこれは美味いぞセッツ」
「そりゃあ良かったみたいで」
監視役をしている摂津がそう返事をした。なお、摂津自身もカレーを食べている。
「お、摂津は昼メシか?」
「あ、伊丹大尉」
その時を九〇式鉄帽(鉄帽)を被った伊丹大尉が食堂にやってきた。
「俺は今から偵察に行かないといけないんだよ。全く尉官は使われるぜ」
「第三偵察隊でしたね。頑張って下さい」
樹はそんな事を考えながら伊丹にそう返事した。
「ヤバくなったら摂津に救援してやる」
伊丹大尉はニヤリと笑って食堂を出た。
「仲間か?」
サラダを食べているヒルデガルドが聞いてきた。
「まぁ色んな意味で仲間だな」
樹はそう思いながら水を飲んだ。
後書き
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