| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン stylish・story

作者:黒神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十六話 温かさ


第58層 戦神の聖域

シュウとリズベットはレアメタルであるゴーレムの眼を手に入れるために【戦神の聖域】と言うフィールドにやって来た。しかし・・・

「は、は・・・はっくしょん!!!さ、寒ぃぃぃ!!!」

このフィールドは樹氷で囲まれた極寒のフィールドだった。リズベットは寒さに凍え、身体を震わせていた。しかしシュウは・・・

「これで寒いのか?リズ」

「さ、さ、寒いに決まってるじゃない!!て言うか。シュウは寒くないの!?そんなコート一枚で」

「寒くないって訳じゃねぇが、根を上げるほどじゃないな。俺はもっと寒い所を経験したからな。要は慣れってヤツだ」

「うぅぅぅ・・・」

ここはかなりの寒さがあったがシュウが以前訪れた、【霊峰】に比べればまだマシだった。シュウはリズベットの寒がっている姿を見ているとヤレヤレと思い、アイテムデータから【狼毛皮のコート】を取り出し、リズに着せる。

「あ、ありがとう。シュウ」

「気にすんなよ。備えあれば憂いなしってヤツだ」

「何か今の言い方・・・皮肉っぽく聞こえたわよ?」

シュウの言い方にリズベットはジト目で聞き返すがシュウはそんな心は持っていないみたいだった。リズベットの返答を軽く返すとシュウは一足先にゴーレムが居るとされる【氷結の丘】を目指して、ドンドン進んで行った。

(シュウって性格が分からないなぁ。チャラチャラしている奴かと思えば、いきなりあんな真剣な表情になったりするんだから・・・)

リズベットは自分の疑問を思い浮かべながらコートを身体に包む。そのコートは名前の通り狼の毛皮で出来ていたため、軽く、そして・・・

「温かい」

「お~い、リズ!置いていくぞ?」

「あ!待ってよ、シュウ」

リズベットは慌ててシュウに追いつくと、もう一つの疑問を問いかける。

「でもシュウの大剣・・・リベリオンだっけ?メンテもやってなかったのに来ちゃって良かったの?」

「俺の武器は大剣だけじゃねぇよ。あと4つは使えるぜ?例えば・・・」

シュウが途中で足を止めるとリベリオンからケルベロスに替えると後ろから迫って来ていた【何か】に向かって棍を放つ。

ギャイン!!

「っ!?」

そしてそれは泣き声を上げるとポリゴンと化し、消滅した。
リズベットは突然の事に少し驚きの表情を浮べていたが心を持ち直すとシュウのケルベロスを見始める。

「それって・・・ヌンチャク?でも棍が三つあるわよね?」

「ケルベロスって言うんだ。まあ、このヌンチャクは特別製なんだよ。それと・・・団体さんのお出ましだぜ!!」

シュウがケルベロスを構えると木の裏や背後から先程倒した白い狼【スノー・ウルフ】が10匹程現れ、シュウとリズベットを取り囲む。

「数が多いよ!!シュウ、どうするの!?」

「Ha!!少ないぜ!!これ位ならルシフェルを出すまでもねぇよ!!リズ。動いたり喋ったりするんじゃねぇぞ?俺が前でこいつらの相手をするからよ」

そう言うとシュウは狼の群れを前に、一歩踏み出し・・・

「C’mon,wimp(来いよ、ノロマ)!!」

挑発したその瞬間、狼達が一斉にシュウに襲い掛かった。

「危ない!シュウ!!」リズベットはシュウが襲われると思い、メイスを持って加勢しようとしたが・・・

「Too late(遅すぎるぜ)・・・It’s obvious(見え見えだ)!!!」

シュウは狼の爪や噛み付きを避けたり、ケルベロスで弾きながら、スノー・ウルフをケルベロスの牙の餌食にして行った。シュウの戦いぶりを見ているリズベットは呆然としていた。

(凄い・・・あれだけの敵を相手にダメージを殆ど受けない。これが真紅の狩人の力なの!?)

あまりに圧倒的なため、リズベットはシュウに声をかける。

「もう少しじゃない!早くやってしまいなさいよ!!」

「バカ!喋るんじゃねぇ!!」

シュウの警告は遅かった。一体のスノー・ウルフがシュウからリズベットにターゲットを替えると飛び掛った。いきなりの事にリズベットは対応に遅れてしまう。

「えっ!?」

リズベットは逃げようとしたがウルフが目前まで迫っていた。しかしそのウルフより早く動いた者がいた。

ガブリ!!

「ぐっ!!」

「えっ!?」

それはシュウだった。シュウは他のウルフを片付けると瞬時に距離を縮め、自分の左腕をウルフに噛ませ、右腕でリズベットを抱き寄せていた。シュウのHPゲージはあまり減ってはいなかったが、噛み付かれているその光景は痛々しい程だった。

「俺の腕は美味しくねぇだろう?ウルフさんよ!」

シュウは右腕にべオウルフを身に付けると鉄拳をウルフに打ち込み、弾き飛ばした。そのウルフはポリゴンと化し、消滅して行った。そしてその場に少し沈黙が走った。そしてリズベットが口を開く。

「シュ・・・シュウ。あの・・・」

「リズ。俺はお前に言ったよな?動いたり喋ったりするんじゃねぇぞって・・・」


シュウの言葉にはふざけていることなんか一切感じられない程、声が低かった。

「ご、ゴメン。でもシュウを助けたくって・・・」

「その気持ちはありがてぇんだけどよ・・・そのせいでリズが危機に陥ったじゃねぇか!!」

ウルフ系統のモンスターはプレイヤーの言動でターゲットを変えてくるモンスター。つまり何もしなかったら襲ってこない事をシュウは経験で知っていた。そしてシュウは声を張り上げ、リズの肩を力強く握り、そして真剣な目線をリズに向ける。

「頼むから無理はしないでくれ。俺は仲間が傷つくのは見てらんねぇからよ」

シュウの眼差しに圧倒されたのか、リズはコクンと頷く。それを見たシュウは肩から手を離し、笑顔を見せる。

「分かってくれれば良いんだ。んじゃ、先に進もうぜ?このままじゃ日が暮れっちまうよ」

「うん!!」

笑顔をみたリズベットは元通りになり、シュウの横を歩き始めた。

~~~~~~~~~~~~

シュウとリズベットは足を進め、一つの広い場所に出た。そこには氷のような水晶が無数に生えており、光に反射してダイヤモンドダストのような輝きを放っていた。

「うわぁ!!キレイ!!」

「ああ!!凄くキレイだな。こんなキレイな場所があったなんて知らなかったぜ」

シュウとリズベットはその風景に心を奪われていた。しかしシュウは一時の心の癒しを堪能するとリズベットに転移結晶を渡す。

「念のために渡しておくぜ。俺が危険だと言ったらすぐに転移しろ。そしてリズが転移したのを確認したら俺もすぐに後を追うからよ?」

「分かった。シュウも無理はしないでね?」

「分かってるさ。んじゃ、俺の後ろに回ってくれ。リズはバックアップを頼む」

シュウの作戦にリズは頷き、メイスを構える。シュウはリベリオンから閻魔刀に替えるとゴーレムが居ないか周りを見渡すがそれらしい影はなかった。

(ここが氷結の丘の筈だ・・・なのにゴーレムがいねぇ。仕方ねぇ、おびき出すか)

シュウは閻魔刀からルシフェルに替えると剣を一本作り出すと水晶に向かって投擲し・・・

パパン!!と手を叩き、起爆させた。

「シュウ!?いきなり何を・・・」

「隠れてないで出て来いよ!!遊ぼうぜ!!」

シュウの狙いは起爆剣を爆発させる音と衝撃による陽動だった。
そしてその陽動に答えたのか、地面が揺れ始めると無数の水晶平原の中から体中に水晶をはめ込んだ全長10Mはあるゴーレム【クリスタル・ゴーレム】が地面から這い出てきた。

「お、大きいよ!シュウ!!」

「ゴーレムって言ったらこれ位はあって当然だろう?驚くまでもないぜ。っと、どうやら相手はやる気満々みたいだな?」

「えっ!?」

リズベットが呆気を取られた声を上げ、見てみるとゴーレムが二人を踏み潰さんと片足を上げていた。そしてそれが一気に二人に向かって襲い掛かった。

ドゴォォォン!!!振り上げられた足が地面に付くと地面は揺れ、衝撃波が二人を襲う。

「いやぁぁぁ!!!こんなのどうやって倒すのよ~~!!!」

「ハッハ!!こいつはCrezyだぜ!!あれ喰らったら一撃必殺だろうな!!」

「呑気に言ってんじゃないわよ!!死んじゃうわよ!!」

「慌てんな。良いか、作戦を伝えるぜ?俺がやつの気を引いている内にリズは打撃のメイスでヤツの下半身の水晶を砕け!俺は上半身を砕く。破壊が完了したら隠れていろ!分かったな?」

しかしその作戦には少し無謀があるように見えたのからリズベットが声を張り上げる。

「下半身!?無理無理無理!!私、潰されちゃうわよ!!」

「安心しな。あんな、でけぇヤツは自分の下半身よりも自分の目の前・・・上半身を気にするんだよ。後はヤツの動きは遅ぇが動き一つ一つ重く、衝撃波がある事とHPに気を配れば倒せるさ」

「それで・・・倒せるの?」

「俺を信じろ!リズ!!」

シュウのリズベットを信用している言葉と勇気付ける言葉にリズベットは泣き泣き答えた。

「わ、分かったわよ。やってやろうじゃない!!」

「そう来なくちゃな!!行くぜ!!」

シュウはべオウルフに替えるとゴーレムの目線まで飛び上がり、胴体に鉄拳を打ち込んで行った。

「Crash and bash(砕け散れ)!!!」

シュウの鉄拳は水晶の甲殻を砕いて行き、中の柔らかい筋が目に見えるほど露出させた。ゴーレムもやらせまいと両腕を豪快に振り回し、シュウを退けようとするが、シュウの目にはそれも遅く見えていた。

「Too late(遅すぎるぜ)!!!」

シュウは迫って来ていた腕にタイミングを合わせて飛び乗り、それを台座にして飛び上がる。

「流星脚!!!」

そして落下の勢いを乗せた飛び蹴りを喰らわせ、上半身の水晶を砕く。
数十分間経った頃には殆どの水晶は砕け散っていた。リズベットの方もシュウが気を引いててくれてたため、下半身の水晶の破壊を終えていた。

「こんなものかな。シュウ!!終わったわよ!!」

「流石マスターメイサー!!んじゃ、締めは俺がやっからリズは下がってろ。巻き添えを喰うかもしれないぜ?」

シュウがリズベットに言い聞かせるとリズベットはその場から隠れるようにシュウとゴーレムから離れた一本の樹氷の裏に身を隠す。
それを確認したシュウは地面に立ち、べオウルフを構える。

「OK!!テメェは運が良いぜ?何せ俺が考えた技の実験第一号なんだからよ!!」

シュウはまず地面に鉄拳を打ち込み、その土埃に身を隠す。そしてゴーレムが標的を見失ったその隙を突いて・・・

「Rising dragon(昇竜拳)!!!」

元祖・アッパーカットをゴーレムの腹部に直撃させ、身体を宙に浮かび上がらせると瞬時にべオウルフから閻魔刀に替えると・・・

「Keep cutting(斬りまくるぜ)!!!」

抜刀術から目で捉える事の出来ない程の無数の斬撃を飛ばし、ゴーレムを斬り崩して行った。
そして閻魔刀からケルベロスに替えると身体を回転させると三棍をゴーレムの顔に頭部に直撃させ、地面に墜落させる。

「Let’s make the end(終わりにしようぜ)!!!」

最後にケルベロスからルシフェルに替えると掛け声と共に起爆剣を作り出し、両手にも持つと一気に投擲し、ゴーレムの体に突き刺す。水晶を砕き、筋を露出させたのはこのためだったと言って良いだろう。ゴーレムは満身創痍の状態なのか身体を動かす事はままならなかった。シュウは無数の起爆剣を突き刺すと地面に降り立ち、銜えていたバラをゴーレムに向かって投げる。

「This’s my・・・showdown(これが俺の・・・ショウダウンだ)!!!」

バラが一本の起爆剣に当たるとそこから誘導爆発を引き起こし、巨大な爆発が氷結の丘に広まった。そしてそこにはゴーレムの姿は影も形も無く、シュウのアイテム欄には目的の【ピュア・アイズ】が入っていた。そしてリズベットと合流を果たし、目標を達成した事を確認するとリンダースに転移したそうだ。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧