スーパーヒーロー戦記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第24話 偽りの宝玉
その日、ショッカー日本支部で死神博士は苦い顔をしていた。普段から苦い顔をしているのだが今回は更にその顔が苦々しい。
(不味い事になったぞ…まさかサボテグロンがライダーにやられるとは。しかも折角捕らえた一文字隼人も本郷猛により助け出されてライダー2号となってしまった。首領はその責任を負わせるつもりだ。そうなればわしは左遷されてしまう)
原因は以前起こったサボテグロンの敗北にあった。怪人サボテグロンがメキシコから持って来た新型爆弾。メキシコの花を使った日本ダム爆破作戦を計画していたのだが、その計画は仮面ライダーと魔導師達の協力の前に失敗に終わり、同時に貴重な基地を失ってしまったのだ。
これには首領も大変お怒りであり、更にショッカー東南アジア支部から新たな幹部を招集したという。
もし、その幹部が来たら自分は無能者のレッテルを貼られ左遷させられるか降格させられてしまう。そうならない為には只一つしか道がない。
「おい、例の物はどうなっておる!」
「はっ、順調です! 後は死神博士の点検が済めば完成かと」
「そうか」
それを聞き、意気揚々と死神博士はとある部屋に向った。其処には巨大なカプセルが一つ置かれており、その中には青く光る宝石が浮かんでいた。
「現状ではどれ程再現されておる」
「99%再現できてあります。最早オリジナルと然程違いはありません」
「そうか、Dr.ヘルから情報を貰っておいて正解じゃったわい。今に見ておれ仮面ライダー! この擬似ジュエルシードを用いて貴様等を地獄の底に叩き落してくれるわ!」
目の前に浮かぶ宝石「擬似ジュエルシード」を見ながら死神博士は一人不気味に微笑むのであった。
***
その頃、喫茶アミーゴでは新たに加わった一文字が席に座っていた。
「う~ん、相変わらずおやっさんの煎れてくれるコーヒーは美味いねぇ。他じゃ味わえない代物だぜ」
「褒めたって代金はまけねぇぞ一文字。にしてもお前がライダー2号になっちまうたぁなぁ」
「ま、これから大船に乗ったつもりで居てくれよ。ライダーが二人も揃ったんだし天下無敵も間違いなし! ショッカーなんざ叩き潰してやりますよ」
「やれやれ、ご大層な自信をお持ちで」
横に座っていた滝が愚痴りながらコーヒーを啜る。どうやら前回然程活躍出来なかった上に店の手伝いをさせられたので結構不満そうだ。
「おやおやぁ? FBIの捜査官殿がこんな所で油を売ってて宜しいのでしょうかなぁ? 私達善良な市民を守るのがお仕事なのではぁ?」
「別に好きで暇してる訳じゃねぇよ。本部から指示がなけりゃ動けないだけだっつぅの」
「だったら皿洗い位手伝え! フェイトちゃんやアルフちゃんの方がお前より何十倍も店に貢献してくれてるぞ」
現在フェイトとアルフは此処アミーゴに住み込みで働く事になってる。別に金には困ってないのだが飯には困っていたので此処で三食ありつけるのはありがたい事なのだ。
因みに今はお昼休みな為二人共外出中である。その為必然的に此処アミーゴは男しか居ない。
「……」
「どうした本郷。何時になくシンミリとしちゃって? クールは此処の空気にゃ会わないぜ」
「嫌、ちょっと考えててな。基地を一つ破壊したんだ。そろそろショッカーも俺達を本気で潰そうとしてくる筈だと思っててな」
猛の言ってる事は鋭かった。このままショッカーが本郷達を見過ごす筈がない。そろそろ幹部関係の人間が動き出す筈。そう思っていたのだ。
「そうだろうなぁ。何せ図らずも敵を二人も作っちまったんだ。あの死神博士とか言う野郎も今頃青ざめてるんじゃねぇの?」
「だと…良いがな」
そう言って本郷はカップに溜まっていたコーヒーを一気に飲み干した。
***
その日、フェイトとアルフは町に繰り出していた。久しぶりの休日を楽しむ為である。因みにアルフは犬形態になっている。
別に人間体でも良かったのだがまぁ念の為でもある。
「いやぁ、最近血生臭い事ばっかだったからたまにはこう言う日も良いよねぇ」
「そうだね、でもあんまり騒いだら駄目だよ」
互いにそう言いながら町を歩いていた。とは言うものの別に目的があると言うのではなく、単にぶらついているというのが正しい。
本来ならジュエルシードの捜索を第一に行うべきなのだが今は一人ではない。色々とあり、今はあの高町なのはと共同でジュエルシードの捜索を行っていた。これにより以前よりは多少楽に捜索が行えるようになった。
なので今はこうした余裕も生まれているのだ。
「ん?」
フェイトは思わず立ち止まった。それは町の中に用意された小さな託児所…基、主婦達の憩いの場とも言うべき公園であった。其処では数組の主婦達が楽しそうに会話をし、その回りでその子供達が楽しそうに遊んでいる。
ふと、フェイトはその光景をもの寂しそうに見つめていた。自分にも母親は居る。だが、あんな風に笑ってくれただろうか? そう思うと少し辛く思えた。
「ハ…ハ…ハックション!」
「???」
ふと聞こえてきた声。それは老人のくしゃみであった。見れば公園の近くを通っていた老人がくしゃみをしていたのだ。それも一回ではなく連発で。
「ハックション! ハックション! ハックション!」
「あのお爺さん…風邪でも引いてるのかなぁ?」
「にしても何だいあの格好。場違いも良い所じゃん」
アルフが言うのも最もであった。目の前で激しくくしゃみしている老人の服装は何処か、何と言うか古臭かった。地味な色のシャツにズボン。それに赤い色のベレー帽に似た帽子を被っている。
余りにも時代遅れと言えば時代遅れとも言える。しかしあのまま放っておくのも何となく可愛そうなので…
「あの、大丈夫ですか?」
「ハックション! ち、近づくな! ワシは子供が嫌いなんじゃ! 子供が近くに居るとくしゃみが…ハックション!」
「は…はぁ…すみません」
そうと分かるとフェイトは老人から下がった。だが、相変わらず老人のくしゃみは止まらない。嫌、寧ろ悪化しているのが分かる。
「ええぃ! 面倒だ! 此処で奴等をおびき出してくれるわ!」
そう言うと老人は纏っていた服装を取り払う。其処から現れたのは黒いマントを羽織ったマッドな科学者の姿であった。
「出て来い! 我がショッカーの精鋭達よ! この町の人間を血祭りにあげぃ!」
「な!」
手を振り上げると地面から数人の戦闘員と一体の怪人が現れた。
「やれぃ! 怪人ゲバコンドル! 貴様は今までの怪人の戦闘能力を元にワシが作った最高傑作! その力を遺憾なく発揮するが良い!」
「うおおおぉぉぉぉぉ!」
雄叫びを挙げて怪人は電柱をなぎ倒し、町を破壊していく。その光景を目の当たりにした町はパニック同然となった。逃げ惑う人々。
そんな人々を抹殺しようと武器を持った戦闘員が襲い掛かってくる。
「アルフ!」
「ったく、面倒な事に巻き込まれちゃったなぁもう!」
愚痴りながらもアルフは戦闘員を薙ぎ倒していく。フェイトもまたバリアジャケットを纏い戦闘員達を蹴散らしていく。
「ぬっ、貴様は我が基地を破壊した魔導師の片割れ!」
「何で罪もない人達を傷つけるんですか?」
「知れた事! 我等ショッカーの目的は世界征服。その前にこんな町一つ無くなったところで問題などあるまい!」
言い分からして話会いでと言うのは無理そうだった。相手は初めから戦う気満々だ。だったら容赦する必要はない。
「だったら、貴方を倒してこの騒ぎを鎮めさせて貰います!」
「ふん、小娘如きに何が出来る! ゲバコンドルよ! 手始めにこの小娘から血祭りにあげぃ!」
「そうはさせんぞ!」
その声と共に本郷、一文字、そしてなのはの面子が現れた。
「フェイトちゃん、アルフさんも大丈夫?」
「全然平気だって。戦闘員如きに負けるアルフさんじゃないってばぁ」
「こっちも平気」
どうやら間に合ったようだ。しかし折角の休日がパァになったのは事実でもある。
「やれやれ死神博士だとか抜かしてるからどんなマッドサイエンティストかと思ったら、只のオッサンじゃん。期待して損したぁ」
「油断するな一文字、相手は幹部だ! 今まで戦ってた怪人とは違うぞ!」
「その通りよ! そして今日が貴様等の命日となるのだ! 仮面ライダーよ! ゲバコンドル! 仮面ライダーと小生意気な小娘共を地獄に叩き落してやれぃ!」
死神博士の命を受けた怪人が四人に迫る。
「本郷、此処は俺に任せな」
「待て、一文字!」
本郷の制止を振り切り一文字がゲバコンドルと対峙する。激しい乱打戦にもつれ込んだ。互いが拳を出し合い倒そうと殴り蹴り合っている。
「ちっ、こいつ今までの怪人とは一味も二味も違う」
「一文字、此処は二人で片付けるぞ!」
「そうするっきゃねぇか!」
一旦距離を開けてライダー1号と2号が並び立つ。そして空高く飛翔しゲバコンドル目掛けて突っ込んで行った。
「ライダー・ダブルキィィック!」
ダブルライダーの渾身の蹴りが炸裂した。その一撃を受けた怪人は数十メートル吹き飛んだ後爆発してしまった。残ったのは死神博士只一人だ。
「さぁて、残ったのはあんた一人だね? どうする、尻尾巻いて逃げ帰るかぃ?」
「馬鹿め! 貴様等などワシ一人で充分よ!」
そう言うなり死神博士の姿はミルミル変わっていった。それはイカを模した姿の怪人であった。
「貴様等などこのイカデビル様の敵ではない!」
「ならば受けてみろ! 俺達の渾身の一撃を!」
再び1号と2号が飛翔する。先ほど怪人を破ったのと同じ技だ。
だが、
「馬鹿め!」
二人の蹴りはイカデビルの目の前で止まってしまった。まるで見えない壁を蹴ったような感覚だ。
「な、何だこれは!?」
「攻撃が通らない? そんな馬鹿な!」
「貴様等の攻撃など通じないのだ! くたばれぃ!」
イカデビルの体についていた数本の触手がダブルライダーを弾き飛ばす。凄まじい力であった。
吹き飛ばされた後そのまま地面に叩きつけられてしまうダブルライダー。しかも、それだけではなかった。
「な、何だ…体から力が抜けている感じがする」
「どうなってんだよこりゃぁ!」
「貴様等のキックのエネルギーをワシが吸収したのよ! そしてそのエネルギーをそのまま反転して返してやっただけの事! このワシを倒す事など最早不可能!」
驚愕であった。まさかライダーのキックのエネルギーを吸収して打ち返すなんて。そんな事が今までの怪人に出来ただろうか。
「それなら、距離を開けて攻撃すれば!」
「魔力攻撃は吸収出来ない筈!」
今度はなのはが魔力弾を放ち、その直後にアルフが殴りかかり、フェイトが斬りかかった。だが、結果は同じであった。またしても見えない壁の様な物に阻まれてしまったのだ。
なのはの魔力弾はイカデビルの前で消え去り、二人の攻撃も直前で止まってしまった。
「こ、攻撃が通らない!」
「これは…まさか、結界!?」
「その通り、これは貴様等が集めているジュエルシードをワシが独自に再現した結果よ! 今のワシにはあらゆる攻撃が通じん! それは即ち、貴様等にワシを倒す事は出来んと言うことじゃ!」
「ならば攻撃が通るまで攻撃するまで!」
「おうよ! そんな薄っぺらな壁なんざ叩き割ってやらぁ!」
再び1号と2号が殴りかかった。だが、相変わらず壁は硬かった。何度殴っても結果は同じ事であった。
「無駄じゃ無駄じゃ! 貴様等の攻撃がそのままワシのエネルギーになると分からんのか? 戯言は仕舞いじゃぁ!」
横ナギに触手を振るい再びダブルライダーを吹き飛ばす。これではエネルギーの浪費に繋がる。エネルギーが尽きてしまえば変身が解けてしまう。そうなってはイカデビルに勝てない。どうすれば良い。
「諦めろ! 貴様等に残された道は只一つ。ワシに殺される事だけなのじゃ!」
「絶対お断りだね! イカ如きに殺されたんじゃ恥ずかしすぎるっての!」
正面からアルフの鉄拳が叩き込まれる。魔力を纏った拳を放った。しかしそれもまた見えない壁の前に遮られてしまい不発に終わった。それだけじゃない。周囲にあった内の一本の触手がアルフに襲い掛かって来た。
それは瞬く間にアルフの体を絡めとり持ち上げてしまった。
「んがっ、この、離せ! イカ臭いんだ…よぉ…」
段々アルフの元気がなくなってきている。彼女の魔力を吸い取っているのだ。
「前にも言ったじゃろう! 貴様等に残された道は只一つ。ワシに殺される事だけじゃ」
「アルフ! 今助けるから!」
アルフを助けようとバルディッシュを振るうフェイト。だが、アルフにばかり目が行っていたせいか別方向から襲い掛かって来た触手に気づく事がなく、フェイトもまたイカデビルに捕まってしまった。
「しまっ…うぅ…」
フェイトもまた徐々に元気がなくなってきていた。急速に二人から魔力が抜けてきているのが分かる。このままでは二人の身が危ない。
「いかん! 一文字!」
「おう!」
1号と2号ライダーが二人を捕らえている触手を引き千切ろうと掴みかかる。だが、そんな二人を難なく触手は振り払う。最早残りパワーの少ないライダーでは話にならなかったのだ。
「どうしたら…どうしたら勝てるの…」
【マスター、あの怪人はどうやら余ったエネルギーを足を媒介にして地面に捨てています。恐らくエネルギーの吸収にも限界があると思われます】
「本当! だったら…」
最早最後の賭けだった。なのはは一直線にイカデビルに突っ込んで行った。当然そんな事をすれば忽ち触手の餌食となる。残っていた触手に手足を掴まれ、其処から同様に魔力を吸い取られて行く。
「ふん、命知らずな小娘め! まずは貴様から死ね!」
「な…なのはぁ…」
「フェ、フェイトちゃん…アルフさん…今、助けますから……そんなにエネルギーが欲しいんだったら、全部持って行けえええぇぇぇ!」
なのはは叫び残っていたありったけの魔力を放出した。それを感じ取った時、イカデビルは戦慄した。
「い、いかん! これ以上はワシの体がもたん。それにエネルギーの排出が間に合わん。ええぃ! 小癪な小娘めぇ!」
なのはのエネルギー吸収を断念したイカデビルはそのまま触手を大きく振るいなのはを地面に叩き付けた。そして、絡みつかせていた触手を離す。
だが、最後の一本だけをなのはは掴み離さないでいた。
「なっ、離せ! 離せぇ!」
「まだ私の魔力は残ってる。さっきも言いましたよ。全部持って行けって、これが、私の全力全開だあああああぁぁぁぁぁ!」
なのはは叫び、更に魔力を放出させた。危険な方法だった。下手したら魔力を全て放出しきってしまい命を落とす危険すらあった。だが、その戦法は奇跡的にもイカデビルに効果的であった。
「ば、馬鹿なぁぁぁぁ! ワシの作った擬似ジュエルシードは完璧だった筈。なのに何故じゃ! 何故こんな小娘如きに遅れを取るのじゃ! ぐおぉぉぉぉぉ!」
叫びを上げ爆発する。その拍子にフェイトとアルフの二人も拘束から抜け出し自由になれた。自由になった二人は急ぎなのはの元へと駆けつけた。
相当魔力を消費してしまったのか、なのは自身は既に半分意識が飛んでいた状態だったが、辛うじて命はあった。
「なのは、なんでそんな無茶を!」
「えへへ…これしか思いつかなかったからつい…」
「全く、あんたは本当に無鉄砲な子だねぇ」
心配から安堵へと変わる三人。だが、
「おのれぇぇぇぇ! まだワシは死なんぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
爆煙の中からボロボロになったイカデビルが出てきた。まだ生きていた。既に相当魔力を吸収されたフェイトとアルフ、それに魔力を放出しきったなのは。そしてエネルギーの大半を失ったライダー達では太刀打ちできる状態ではなかった。
「死ね、死ね死ね死ね死ねぇ! ライダーも小娘共も、皆纏めて殺してやる! 殺して殺して殺して殺してぇぇぇぇぇ!」
明らかに様子がおかしい。どうやら体内に組み込んだ擬似ジュエルシードが暴走したのだろう。最早かつての人格は無いに等しかった。
更に悪い事が起こった。イカデビルの背後の地面が突如割れ、其処から既に起動状態のジュエルシードが現れたのだ。
どうやら先ほどのなのはの魔力を得て起動してしまったようだ。最悪の場面であった。このままではジュエルシードは暴走し辺り一帯が吹き飛んでしまう。
だが、なのはにもフェイトにも既に封印するだけの魔力は残ってはいない。万事休すであった。
「一文字! こうなったらやるぞ!」
「おう、オチビちゃん達に負けてらんねぇぜ!」
ダブルライダーは何を思い立ったのか突如飛翔し、ジュエルシード目掛けてキックを放ちだした。
「本郷さん、一文字さん、一体何をするつもりなんですか?」
「少しでも被害を抑える為にこれを破壊する!」
「俺達の残りのエネルギー全てをつぎ込んでこいつをぶっ壊してやらぁ!」
二人の渾身の蹴りがジュエルシードに命中する。ダブルキックのエネルギーを受けて崩壊するかと思われたジュエルシードはその直後、思いもしなかった反応をしだす。
何と、突如眩い発光を放ち、二人のライダーを包み込んでしまったのだ。その閃光はその場に居た全員の視界を塞ぐ。
その時間は約数十秒続いた。やがて、閃光が止むと、其処には二人のライダーが立っていた。だが、姿は変わっていた。
まず本郷の方は今までより明るい色のスーツとなり銀色のグローブを嵌めている。一文字の方は同じ色ではあるがグローブの色が赤くなっている。
「こ、これは…俺達がジュエルシードのエネルギーを吸収したと言うのか?」
「すげぇ…体全身から力が漲ってくる感じだぜ!」
信じられない事が起こった。暴走したジュエルシードを止めようと駆けつけた二人のライダーがそのエネルギーを吸収し、パワーアップしたのだ。正しくこれこそ奇跡の成せる業である。
「お、おのれぇぇぇ! 仮面ライダーがぁぁぁぁぁ!」
「本郷、やろうぜ!」
「おう!」
暴走したイカデビルを前にパワーアップしたダブルライダーが並び立つ。
「まずは俺からだ!」
最初に動いたのは一文字だった。空高くジャンプし、体を捻りながら蹴りを放った。
「食らえイカ野郎! ライダー卍キィィィック!!」
ライダー2号渾身の新必殺技を受けたイカデビルが吹き飛ぶ。其処へすかさず本郷ことライダー1号が飛翔する。
「最後は俺だ! 電光ライダーキィィィック!!」
右足に稲妻を纏ったライダー1号の新キックがイカデビルに突き刺さる。そしてそのままイカデビルを地面に突き刺した。
「ガハッ、む…無念……お許し下さい首領……我等ショッカーに勝利と栄光をぉ!」
その言葉を最後にイカデビルは爆発して散った。爆煙の中から現れたのは新たな装いとなったダブルライダーであった。
「や、やりましたね…本郷さん、一文字さん」
「あぁ、君達が居たからこそ得られた勝利だ」
「それとどうだい? 一段と格好良くなっただろう?」
相変わらず硬い本郷と優男風な一文字の会話を聞いてなのは達は思わず噴出した。
誰もがこのまま平和に終わると思っていた。その時だった。
沈黙していた筈のジュエルシードが突如再び起動し、大空へと飛び上がっていったのだ。
「何!?」
「ジュ、ジュエルシードが!」
上空へ舞い上がったジュエルシードは眩い閃光を放った後、粉々に砕け散ってしまった。
だが、その閃光がかがり火となり、地球全土に散らばっていたジュエルシードが一斉に起動してしまったのだ。一斉に起動したジュエルシードは地球全体を薄く無色な謎の結界で覆い尽くしていく。
「な、何だ? 何が起こったというんだ?」
「なのは、今ジュエルシードが全部起動した感覚が…」
「うん! 確かその場所は…あれ?」
発動した場所を割り出そうとするも、其処で異変に気づく。
「わ、分からない! ジュエルシードの場所が分からない」
「何だって!」
「それだけじゃない、探索魔法が一切反応しない! 何で?」
明らかに異常事態だった。発動した筈のジュエルシードの反応がしない。一体どういう事なのだろうか。
「本郷、ライダーレーダーならどうだ?」
「……駄目だ、さっきからレーダーが何も映らない。どうやら今の結界はレーダーを完全に遮断する能力を秘めているらしい」
一難去ってまた一難。新たなピンチがヒーロー達を追い詰めようとしていた。
そして、これを起に最初の出会いの物語は終わりへと向かっていく事となる。
つづく
後書き
次回予告
全てのジュエルシードが一斉に起動してしまった影響でレーダー類が一切使用できなくなってしまった。
今の人類は目を失ったも同然の状態である。
圧倒的不利な状況の中、ヒーロー達はどう戦う?
次回「ジュエルシード包囲網」お楽しみに
ページ上へ戻る