ソードアート・オンライン stylish・story
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第七話 オレンジギルド
翌日。キリト、シリカ、シュウは47層にある【フローリア】と言う場所に到着していた。そのエリアは様々な花が咲き乱れ、SAOのカップルでは有名な場所だった。
「うわ~~!!キレイ!!」
初めて来る場所にシリカは少しはしゃいでいた。キリトとシュウはそれを温かい目で見ていた。少し花を観賞した後に目的地である【思い出の丘】を目指して歩き出した。シリカは二人の後ろを付いていく。そしてキリトはある事を思い出したのかシリカに『転移結晶』を渡す。
「キリトさん。これは?」
「シリカ。緊急事態で俺達が離脱しろって言ったら、これで何処でも良いから町に飛ぶんだ」
「そんな事はねぇと思うが念のための保険ってヤツだ、シリカ。それに、あまりシリカを危険な目に合わせたくねぇからよ?頼むぜ」
「シュウさん・・・分かりました」
そう言うとシリカはキリトから結晶を受け取り、ポーチにしまう。そしてフラワーロードを歩き出す。そして道中は当然モンスターと遭遇したが以前シュウがやっていた峰打ち戦法をやり、シリカのレベルアップに貢献して行った。ここでシリカが気になった事を言う。
「あの・・・キリトさん。妹さんの事を聞いても良いですか?私に似てるって行ってたから気になって」
シリカの質問にキリトは自分の妹の話を始めた。
キリトの妹は本当の妹ではなく『従兄弟』である事。そしてそれが原因なのかキリトから距離を置いていたらしい。そして剣道をやめたキリトの替わりにその妹が頑張り、全国レベルまで達した事。しかしキリトの心の中ではその事がシコリとなって残り続けているみたいだった。シュウはその妹の心の強さに驚きを抱えていた。
「なるほど。シリカを見て助けたいって思ったのはその罪滅ぼしだって事か?キリト」
「そうだな・・・ゴメンな?シリカ」
キリトはシリカに謝ったがシリカは首を横に振り、自分の意見を言い聞かせる。
「妹さんはキリトさんを恨んでなんかいないと思いますよ?だって好きでもない事を続けられる事なんて出来ないですよ。本当に剣道が大好きなんだと思いますよ?」
「シリカには慰められてばっかりだな。ありがとう、シリカ」
笑顔のキリトにシリカはポッと頬を赤く染める。ここでシュウが自分の考えを口にし始めた。
「んでも、お前の妹って良い根性してるぜ。俺の妹なんか口すらろくに聞いてくれないんだぜ?」
「えっ?シュウにも妹がいたのか?」
「まあな。んで・・・SAOの中にいるんだ」
「「っ!!」」
それを聞いたキリトとシリカは驚きの表情を浮べる。
「シュウさんはその妹さんと一緒に居ようって思わないんですか!?」
「あいつも年頃だしな。自分の事は自分で決めさせようって思ったんだよ。それに・・・あいつはまだ自分の殻に籠ったまんまだからよ・・・」
「殻?」
「キリトも気になるか。んじゃ、今度は俺が妹の話をしてやるぜ。俺達は三人兄弟でよ?兄貴、俺、そして妹がいるんだ。そして俺ん家は良家でよ、決まった将来を歩かせられていたんだ。まあ・・・チャラチャラした俺やしっかり者の兄貴はそう言った事に関しては興味無かったんだけどよ?妹は耐えられなかったみたいでな・・・自分の夢を見る事すら許されない束縛感と恐怖感が妹の心を蝕んで行って、挙句の果てには心を閉じっちまったんだ。そしてSAOが正式稼動し始めたあの日、ここに逃げ込んだって訳だ」
その話を聞いていたキリトが疑問な点を上げる。
「ちょっと待って?どうしてその妹がSAOにいるって分かったんだ?」
「勿論。リアルで確認したからだよ」
「じゃあ!シュウさんは妹さんを助けるために、自分からこのSAOに入ったんですか!?」
「まあな。でも安心したぜ。あいつが生きているって分かった時はよ。何だかんだ言ってあいつは俺にとって大切な家族だからな・・・見殺しなんて出来ねぇよ」
この時キリトとシリカは普段チャラチャラした性格だが、その裏には強い信念みたいなものが彼の中にある事を思い知らされていた。
「さあ、早く行こうぜ?日が暮れっちまうよ」
シュウの先導の元に三人は【思い出の丘】に到着した。そしてその置くには台座のようなものがあり、そこには使い魔蘇生アイテム【プネウマの花】が咲いていた。シリカが手に取り、入手を確認すると三人は再び、フローリアに戻るために踵を返す。
しかしその途中でキリトとシュウが足を止める。そしてまず手始めにシュウが呼びかける。
「そこの木の陰に隠れてんのは分かってるぜ。出てこいよ」
シュウが言い聞かせるとその裏から昨日会ったロザリアが出てきた。
「へぇ・・・私のハイリングを見破るなんて大した剣士さんね?」
「褒めても何もでねぇよ。ずっと俺達を監視してたのはアンタだったか」
「ロザリアさん!?どうして!?」
「決まってるじゃない・・・アンタが手に入れたレアアイテムを頂くためよ」
さっきまでの優しい表情は何処に行ったのか、悪人面に変わった。それを聞いたキリトはシリカを庇うように前に出る。
「そうは行かないな、ロザリアさん。いや・・・オレンジギルド【タイタンズハンド】のリーダーと言った方が良いかもな」
「オレンジ!?でもロザリアさんは・・・」
「簡単なやり方だぜ?シリカ。グリーンのメンバーがパーティに紛れ込み、オレンジがいる所まで誘導する。そして一斉に襲い掛かり、金品を奪う。シンプルだが、確実なやり口ってモンだ。差し詰め、今度のターゲットはシリカだったんだろ?」
「そこまで分かってて態々殺されに来るなんて、本当にバカなの?アンタ達。それともたらし込まれちゃった?」
ロザリアの質問にキリトは横に振る。
「いや・・・俺もアンタを探してたんだ、ロザリアさん。アンタ・・・【シルバーフラグス】ってギルドを襲ったな?リーダー以外はみんな殺された。そして残ったリーダーは最前線の転移門であだ討ちを・・・監獄送りしてくれと言い寄ってたんだ」
「お前の用事ってそれだったのか?キリト」
「まあね。それで・・・アンタに彼の気持ちが分かるか?」
キリトは目を細め、ロザリアに尋ねるがその言葉を貶すように答える。
「分かんないわよ。マジになっちゃってバカみたい」
シュウは外道的な言葉に苛立ちを抱え始める。
「それよりも自分の事を心配した方が良いんじゃない?」
ロザリアがパチンと指を鳴らすとその後ろから10人ほどのオレンジプレイヤーが出てくる。しかしシュウは装備などを見てどれ程の強さかを視解析していた。
「キリト。こいつら俺に任せてくれねぇか?流石に我慢の限界だぜ」
「そうだな。シュウに任せる」
「そ、そんな!!危険です!!シュウさん!!」
シュウはシリカを落ちかせるように頭を撫でる。
「大丈夫だ。俺はやられねぇよ!キリト。シリカを頼むぜ」
そう言うとシュウは背中のリベリオンを引き抜き、右肩に担ぎ、前に出る。
「丁度良いぜ。キリト。ここで俺の新武器を見せてやるよ!」
「それは楽しみだな、シュウ」
ここでオレンジプレイヤーから疑問の声が出てくる。
「キリト・・・?シュウ・・・?」
「黒ずくめに盾なしの片手剣士に・・・真紅の服装に銀の大剣・・・」
「まさか・・・【黒の剣士】と【真紅の狩人】!?」
「ロザリアさん。【真紅の狩人】は分かんねぇが、【黒の剣士】はソロで前線に挑んでいるビーターの『攻略組み』だ」
攻略組みとは文字通り、全層クリアを目指している団体の事でレベルは相当に高い人達が集まっている。キリトはその一人だと言う事にシリカはハッとした表情を浮べていた。
「攻略組みがこんなとこにいるわけないじゃない!もしそうなら、まずはあの紅い奴から倒せば良いじゃない!!ほらさっさと始末して、身包み剥ぎ取んな!!」
ロザリアの掛け声と共にオレンジプレイヤーがシュウに斬りかかる。
シュウはリベリオンを消すと左手に背丈ほどの刀身がある『日本刀』を持った。しかしシュウは刀で受けようとせずにその攻撃を身で受ける。その光景は一方的に見えていて、シリカは助けようとするがキリトが止める。
「大丈夫だよ、シリカ。見てごらん」
「えっ・・・っ!!」
シュウのHPは確かに減っているが・・・すぐに全快になっていた。
「どう言う事?」
そしてオレンジプレイヤー達は息がとうとう切れてしまった。
「あんた等何やってるんだ!!早く殺しな!!」
「終わりか?んじゃ、俺の番だな」
シュウはその場で『居合い』の構えを取り、目を閉じる。そして・・・
「Ha!!」
日本刀を引き抜き、その場で一回転するように刀を回す。そしてゆっくり刀を鞘に戻していく。
「何だよ?届いてないぜ?」
「今ので斬ったつもりかよ?」
「嘗めてんのか!?」
「Shut up(黙れ)・・・」
シュウが静かにそう告げ・・・
カチン!!
と完全に納刀すると、オレンジプレイヤー達の武器が一斉に真っ二つになった。突然の事にプレイヤー達は腰を抜かしてしまった。
「うわっ!!」
「俺の武器が!!」
「何が!?」
動揺しているプレイヤー達にシュウが説明を始める。
「分かんなくて当たり前だぜ?でもお前達の得物を斬ったのはこいつ・・・『閻魔刀』だ。こいつは真空波を飛ばすことが出来る。刀身は届いてなくても、その斬撃が斬ったってわけだ。んでお前達の総攻撃は10秒当たり400ってとこだな。でもな・・・俺のレベルは85。HPは16000。自動回復は10秒で800だ。簡単に言うなら、お前達がいくら攻撃しても俺を殺すことは出来ねぇよ」
戦意喪失したのを確認するとキリトが一つの結晶を手にシュウの隣に来た。
「これは俺の依頼主が全財産を叩いて買った『回廊結晶』だ。出口は監獄前に設定してある。これで全員、監獄に飛んでもらう!!」
それを見たロザリアは槍を構える。
「グ、グリーンの私を傷つければ、アンタ達がオレンジになるわよ!!」
「その点なら問題ないぜ?」
シュウはロザリアの質問を返し、ポーチから音声を録音出来る『録音結晶』を取り出した。それを見たロザリアはまさかと言う顔をし始めた。
「俺達とアンタの今までやり取りはこの結晶に保存してある。これを監獄の軍に渡せばアンタは一発で監獄行きだ。それによ・・・」
シュウとキリトは一瞬でロザリアとの距離を縮めると殺気を放ちながら首元に剣の刃を付きつける。
「「俺達はソロだ・・・2,3日オレンジになる位どうってことねぇ(ない)んだよ・・・」」
それを聞いたロザリアは槍を落とし、膝を着いた。そしてキリトが持っていた結晶でそのギルドは監獄送りとなった。
~~~~~~~~~~~~
「ゴメンな?シリカ。黙ってて。教えたら怖がれれると思ったんだ」
帰ってきて宿屋に入ってキリトはシリカにすぐに謝った。しかしシリカは気にしていないように首を振る。
「大丈夫です。キリトさんは良い人だから」
「おいおい。そんな良い方じゃ、まるで俺だけ悪人って言ってるみたいだぜ?シリカ」
「そ、そんな事無いです!!シュウさんも良い人です!!」
そんなやり取りに3人とも笑いを出していたが、シリカがキリトに尋ねる。
「前線に戻るんですか?」
「まあ5日も離れちゃったからな。戻らないと」
「こ、攻略組みなんて凄いですね!!私なんて絶対に無理ですよ!!」
少し空気が悪くなったの察したのかシュウがシリカに言い聞かせる。
「シリカ。ここでの世界はただの幻だぜ?そしてレベル何かよりもっと大事な事がある」
「そうだな。今度はリアルで会いたいな、シリカと。そうしたらまた友達になれるから」
キリトとシュウの言葉にシリカは笑顔で返す。そしてシュウがシリカにピナを蘇らせる様に促す。
「んじゃ。ピナを蘇らせようぜ?きっとピナもシリカに会いたがっているに違いないぜ?」
「あ、はい!!」
シリカは『ピナの心』をテーブルに置き、その上からプネウマの蜜を落とす。
(ピナ。一杯、一杯お話してあげるね?)
まずはキリトを見る。それを見たキリトは笑顔で返す。
(無口だけど頼りがいのある、キリトさん。そして・・・)
同様にシュウを見るとシュウも笑顔で返す。
(少し変な人だけど私を笑顔にしてくれた、シュウさん)
そしてピナの心が強く光り出し、蘇生の兆しを見せ始めた。
(今日の凄い大冒険。そして私の・・・たった一日だけの『お兄ちゃん』の話を♪)
後書き
シュウの第4の武器は【閻魔刀】です!!あと一つ、出そうと思っています!!ご期待下さい!!
感想と指摘。よろしくお願いします!!
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