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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第四十三話





「――馬鹿な…有り得ない。…僕の催眠は完璧だった筈なのに…」


――サレは今、ただ一人…目前で起こったことが信じられずにいた。
自分が完璧にかけた筈である催眠、そして理性を奪う為に取り込ませた赤い煙。…その全てが今、目前で…『治されて』しまったのだ。


「くそ…クソクソクソクソクソクソォっ!アルヴィンっ!今すぐ捕まえたクレア共々奴らを殺せっ!」


目前で起こされた事。それを忌々しげに見ると、アルヴィンの方へと振り返り怒気の籠もった声で叫ぶ。だが……その向いた方向では、アルヴィンがクレアを、ジュードと共に衛司達の元へと送っていた。


「なっ…アルヴィンっ!何をしているっ!」


「ぁー…悪ぃなサレ。俺、降ろさせてもらうわ」


「…貴様ァッ!人質がどうなってもいいのか!」


「人質ねぇ…『やれるもんならやってみろよ』」


「何を……っ!?」


アルヴィンの言葉にサレは更に怒気を込めて叫ぶが、アルヴィンはニッと笑みを浮かべてそう言った。
サレはアルヴィンの言葉を理解出来ずにいたが…アルヴィンの肩に止まった一羽の鳥を見てその意味が分かった。
アルヴィンの肩に止まっているシルフモドキ…それは自分も見た…アルヴィンに取っての『連絡手紙』のような物。


「…まさか…アルヴィン…貴様ァッ!」


「おう。オメェが居ない研究所なんて…ただの人が集まっただけの家みてぇなもんだからな。しかも、重要な兵士は衛司に殺させて、残ってるのは研究員の奴らぐらいだ。ちょうど知り合いに…王族直属の幹部が居てな。悪ぃが…バランは返してもらったぜ」


「貴様…いつの間に…」


「人から隠れてコソコソすんのが、俺の得意分野だからな。ま…これからはそんな事する必要もなさそうだけどな」


サレの言葉に、アルヴィンはニッと笑ったまま手紙を見せてそう言うと、隣にいるジュードを見る。
ジュードはその視線に小さく苦笑を浮かべた後、サレの方を睨むように視線を向けた。


「…クソ…クソクソクソクソクソクソっ!どうしてだ…明らかに優勢だった僕がどうしてこうなっているっ!?」


明らかな優勢からの…突然の劣勢。その事に、冷徹で不気味表情は消え、荒れたような声を出すサレ。
それに対し、全員がサレを睨む中、ヴェイグがサレに一歩近付き大剣を構え直すと口を開いた。


「サレ…これが、お前の否定した…『絆』の…『仲間』の力だ」


「…っ!」


サレに大剣の切っ先を向け、ヴェイグが真っ直ぐとサレが否定していた言葉を告げると、サレは表情を歪ませた。





「…五月蝿い…五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿いっ!もういいっ!どうせ此処でお前達を殺せば万事解決なんだからなっ!殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺すっ!ヒャハハハハハハッ!!」



表情を歪ませたまま、怒気の混ざった声でサレはそう言うと、武器である剣を構え、再び不気味に笑い出す。
そしてそれと同時に…サレの周りに様々な色の輪が出現した。


「な…限界突破《オーバーリミッツ》した…っ!?」


「あの野郎…マジで俺達殺すつもりみてぇだなっ!」


サレがオーバーリミッツしたのを見て、アルヴィンとスパーダがそう言葉を出した。それに対し、全員が武器を構えようとするが…それをヴェイグが止める。


「ヴェイグ…?」


「衛司は目が覚めたばかりでスパーダは怪我をしてるんだ…カノンノとメリアについてもらっててくれ。ジュードと…アルヴィンは、クレアを頼む。アイツとは…俺が闘う」


「…ヴェイグ…分かった」


ヴェイグの言葉にそれぞれが頷くと、ヴェイグは再び一歩前に出てサレと向き合い大剣を構える。


「…サレ…お前の望んでる…俺との闘いだ」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すフヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」


壊れたように不気味に笑い続けるサレ。それと同時にサレの周りに膨大な魔力が集まり出す。



「サレ…来い…俺も一撃で決めてやるっ!」


「ヒャハハハハハハッ!楽に死ねるなんて思うなよォっ!吹き荒れろ、狂乱の嵐ィっ!シュタイフェエェ・ブリィイィィィゼっ!!」


ヴェイグの言葉と同時にサレは不気味に笑い続けて叫ぶ。
その叫びと共にサレの周りに集まった膨大な魔力が、巨大な暴風となりサレの背後に現れる。

「ヒャハハハハハハ…さぁ、さぁ、さぁ、さぁ、さぁ…死ねえぇえぇっ!」


「来い…サレエェエェェっ!!」


ヴェイグの迎え撃とうとする声に、サレは指先をヴェイグへと向けるとサレの背後に現れた巨大な暴風はヴェイグへと向けて轟音と共に放たれる。

ヴェイグはそれを迎え撃つように剣を構えたまま……暴風に飲み込まれた。



「ヴェイグっ!!」


「ヒャハ…ヒャハハハハハハ!これでおしまいだよヴェイグぅ!ヒャハハハハハハッ!」



暴風の飲み込まれたヴェイグを見てクレアは声を上げ、サレは勝利を確信したかのように不気味に笑う。
……だが……。


「う、おぉおぉぉぉぉっ!!」


「…な、何ィっ!?」


…それは一瞬の出来事で反転する。ヴェイグを飲み込んでいた暴風が、突然爆発したような音と雄叫びとともにかき消えると、かき消えた位置から冷気を纏ったヴェイグが、限界突破《オーバーリミッツ》を発動させて現れた。




「馬鹿な…馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁっ!」


「これで終わりにするぞ…サレっ!」


「チッ…だが、僕にはまだ…っ!?」


徐々に冷気を身体に、大剣に纏っていくヴェイグの姿にサレは舌打ち混じりに後退しようとするが、いつの間にか足元から、ヴェイグの作り出した冷気により凍り付き、身動きが取れなくなっていた。


「なっ…馬鹿な…認めない…認めない認めない認めない認めない!こんな所で僕がぁっ!」


「認めろ、サレ。これが…俺達の力だっ!うぉおぉおぉぉぉぉっ!!」


「来るな…来るな来るな来るな来るな来るなあぁあぁぁぁっ!!」


ヴェイグの勢いに、先程までの余裕は消えサレは下がろうとするが、サレの身体はヴェイグの作り出す冷気で凍り付いていく。
そして…ヴェイグが動く。


「――絶対なる終焉、それが貴様の運命だ!絶氷の剣!」


ヴェイグの声と共に、サレの身体は完全に凍り付き、ヴェイグの大剣に集中した冷気はその巨大な氷の刃へと変わる。
そしてヴェイグはそれを構え、一気にサレへと切りかかる。


「――サヨナラだ、サレ!その身に刻め!奥義、セルシウスキャリバーっ!!」


「――ぐ…あぁあぁぁぁっ!!」


一閃。その一撃は氷付けとなったサレを切り裂き、一撃でサレを雪の地面へと倒した。



――――――――――――




「――よし、オイルツリーのドクメントを回収したぞ」


「おぅ、んじゃさっさとアドリビトムに戻るか。衛司とクレアを休ませねぇといけねぇし…それに、アルヴィンから聞かなきゃいけねぇこともあるからな」


――倒れたサレを横に、ヴェイグはオイルツリーからドクメントを回収して言うと、スパーダはそう言って来た道を戻るため振り返り歩き出す。
それに全員が頷き、皆がアドリビトムに戻ろうとした時であった。


「…待てよ。どこにいく…つもりだい…?」


倒れたままのサレが、視線だけを向けてそう口を開いた。


「…僕はまだ…生きている。情けの…つもりかい…?こんな終わり方は…認めない。…殺せ…殺せよっ!」


忌々しげに皆に視線を向けてそう言うサレ。それに対し、メリアが短刀に手を掛け、サレに歩み寄ろうとするが…それをヴェイグが止めた。


「…サレ…俺達は今、お前に構ってられる程、時間なんてないんだ…」


「…なんだよソレ…ふざけるなよ…!」


「…戻るぞ…。後は…ウリズン帝国がやってくれるだろう」



いまだに後ろで呪詛のように言葉を吐くサレを見ず、ヴェイグはそう言うと皆を連れてその場を離れていった。








――――――――――――




「――チクショウ…畜生畜生畜生畜生っ!」


――誰も居なくなったオイルツリーの樹の下で、サレは倒れたまま忌々しげに言葉を漏らしていた。


「クソ…クソクソクソクソクソォ!…殺せよ…殺せって言ってるだろう!!こんちくしょうがあぁぁぁぁっ!!」



呪詛のように言葉を吐き、叫ぶサレ。それは自分以外に誰も居なくなったその場所で、誰にも届くはずはなかった…。





「――それが、君の願い?」






―――『本来』であれば。




「っ!?…誰だ…お前ェ」


「僕はラザリス。…ねぇ、君の願いは…此処で朽ち果てる事?」


サレは倒れたまま、目前に現れた人物『ラザリス』に目を向け問うと、ラザリスはそう答えた後、サレに向けてそう問い返す。
その問いに…サレの顔は忌々しいものを見るような表情に変わった。


「僕の願いが此処で朽ち果てる事?…ふざけるな。僕の願いはヴェイグを…アイツらをこの手で殺してやる事だ…!」


サレの『願い』。それを聞くとラザリスは口元を吊り上げた。


「それが君の願いか。なら…僕がその願いを叶えてあげるよ」

「っ…何を…」


ラザリスは右手をサレへと向けてそう言うと、突如、『赤い煙』が出現し、サレの身体を包み込んだ。


「…これは…っ!」


「君に僕の力を分けてあげるよ。もし君にこれが制御出来れば…君は自分の意志で、願いを叶えられるよ」


「フ…フヒャ…フヒャヒャヒャヒャヒャッ!これだ…これこそが僕の求めた『力』だ!待っていろよヴェイグ…!それに…アドリビトムぅ!ヒャハ…ヒャハハハハハハっ!!」



赤い煙に包まれ、不気味に笑いながらそう叫ぶサレ。
その狂気の笑いは…霊峰アブソールに不気味に響き渡った――。





 
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