ソードアート・オンライン stylish・story
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第四話 少女の悩み
第一層の攻略が行われ、一ヵ月後。シュウはソロでクエストをこなし、レベル上げと金銭を入手していた。しかしレベルは上がるが次の武器解放が中々、成らなかった。そしてSAOの中でもシュウの名前は少しずつ広まっていったみたいだった。それもその筈だった、真紅のコートで複数の武器を使いこなすプレイヤーはそんなに居ないだろう。
「俺もレベルが54か・・・そろそろ武器解放も良いタイミングだよな?どんな武器か正直、楽しみだぜ!!そのためにも頑張んねぇとな。さてと・・・んじゃ何時もの狩場に行きますか!!」
シュウはリベリオンを背中に担ぎならがら、第二十八層にあるフィールド『狼ヶ原』に赴いた。ここの敵は文字通り『狼』を中心としたモンスターが出没する場所だった。
「ここらのモンスターは動きが速ぇし、群れを成してるからなな。スピードと集団戦法に慣れるには持って来いの狩場だぜ!!」
シュウが丘を登っていくとそこには黒いコートを纏った人影が見えた。その人物はすぐに分かった。
「お~い!キリトじゃねえか!!」
「シュウ・・・」
「お前もレベル上げか?なら一緒にやらねえか?」
シュウがキリトに誘いをかけるとそこに赤を中心にした具足を付けた男子がキリトに気付いたのか近づき、声をかける。
「キリト!!」
「クライン」
「何だ?キリトの知り合いか?」
「うん。SAOが正式稼動し始めた時にな・・・」
キリトが説明するが元気がない。クラインはシュウを見ると自己紹介を始める。
「俺はクラインって言うんだ。よろしくな」
「クラインだな!俺はシュウ。よろしく頼むぜ!!」
シュウの名前を聞いたクラインは少し驚きの表情を浮べる。
「シュウって・・・最近噂になっている『真紅の狩人』のシュウか!?」
「何だその二つ名みてぇなヤツは?」
「様々な武器を使いこなし、フィールドのモンスターを瞬殺するほどの実力の持ち主だって聞いてるぜ?アンタ!!」
クラインはシュウを尊敬みたな目で見ていた。それはシュウ自身も悪い気はしなかった。ここでキリトがシュウに話しかける。
「悪い、シュウ・・・レベル上げは俺一人でやるよ・・・」
それだけ断ると、キリトは一人で奥に進んでいった。
「あいつ・・・まだ気に掛けてんのかよ」
その姿をクラインは心配そうに見ていた。シュウはこの時キリトのあの表情の謎を頭の中に浮べていた。
(キリト・・・俺達は確かにビーターだぜ。けどな・・・だからって言ってそんなに悩む事なんてないんじゃねぇのか?そのまんまだとお前・・・絶対に後悔する事になるぜ?)
その時のシュウの表情にはチャラ顔は一切感じられないほど、真剣な顔をしていたみたいだった。
~~~~~~~~~~~~
「ん~~、んあ!!やっと武器解放が出来たぜ!!まさか『あれ』を装備出来るなんて思ってなかったぜ!!」
シュウが背伸びをしながら何時も留まっている第11層の町『タフト』に戻って来た。
言動から新しい武器が解放されたみたいだった。その内容はまだ分からない。そして何時も泊まっている宿に向かおうとしていると一人の黒髪の少女が下水道のに向かって走って行っていた。シュウは何事かと思い、その後を追いかける。その少女は下水道の一番奥で膝を抱えていた。そしてその表情は何かに怯えている・・・そんな表情を浮べていた。シュウはなるべく怖がらせないようにその少女に近づく。
「何か悩み事か?お嬢さん」
「っ!!」
その少女はシュウを見ると警戒・・・と言うより恐怖の目をしていた。
「お~っと。これは失礼!いきなり話しかけられちゃ、怖がるのは無理はねえよな。でもな、こんなチャラチャラした奴でも他人の悩み事位は聞いてやる事が出来るぜ?それに不安や悩み事は、心の中に溜めとかないで・・・パァーっと吐いてしまったがスッキリするってモンだぜ?」
「そんなに・・・簡単な事じゃないから・・・」
そう言うとその少女は俯いてしまう。シュウはフゥと溜め息を付きながら近くの壁にもたれ掛かる。
「って事はこの世界の事か?お嬢さん。頷いてくれるだけでも嬉しいんだけど・・・」
シュウがその少女に問いかけると小さくだが頷く。
「まあ、そうだよな。ただゲームなのに本当に死んじまうデスゲームなるなんて・・・思いもしなかっただろうな。俺だって最初は驚いたさ」
シュウは上を見上げながら、自分の意見を述べていく。その少女も少しながらも聞いているようだった。
「でもな、お嬢さん。少しキツイ事を言わせてもらうぜ?そうやって現実から目を背けてると自分を破滅に追いやる事になるぜ?」
「分かってます。でも・・・怖いんです!死ぬ事が・・・殺されてしまう事が!!」
シュウの言葉を聞くとその少女は顔を自分の両手で隠し、涙を流し始める。だがシュウはとある言葉をその少女にかける。
「だがな・・・お嬢さんは一人か?」
「っ!!」
「お嬢さんのHPゲージの上にあるその紋章・・・それはギルドの紋章だろう?仲間がいるんじゃねえのか?中に、心から信頼できる奴がいねぇのか?そんなギルドだったら俺は真っ先にやめるね」
「そ、そんな事ないです!!みんな・・・みんな私を大切にしてくれます!!」
少女は勢い良く立ち上がり、シュウに力強く自分の意見を述べる。それを見たシュウはその少女に笑顔でゆっくりと近寄る。
「なら大丈夫だ。その信頼・・・絆がある限り、お嬢さんは死んだりしねぇよ。そして無謀な事をしない限り・・・な。そして信頼や絆も大切だけどよ、一番大切なのは『生きようとする心』だと思うぜ?」
「本当に私は・・・死なずに済むんですか?そして・・・現実に戻れるんですか?」
その少女の疑問にシュウは右手をその少女の頭の上に優しく乗せる。
「絶対とは言い切れねえ。けど、その心がある限りは死んだりはしねぇよ」
シュウの曇りのない笑顔にその少女も少しずつ笑顔を取り戻していった。シュウは自分のアドレスをその少女に渡す。
「それが俺のアドレスだ。何か悩み事があれば呼んでくれ。後、俺はシュウって言うんだ。じゃあな?お嬢さん」
シュウは踵を返し、その場を後にしようとすると・・・
「サチ・・・サチって呼んで下さい、シュウさん」
「サチか・・・良い名前じゃねぇか。じゃあまた会う時までアディオス、サチ」
シュウは右手でオッスの合図を少女・・・サチに送り、その場を後にした。
後書き
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