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男の娘は傍にいる

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第一章

                男の娘は傍にいる
 俗に男の娘というものがある、所謂女装して外見は美少女にしか見えない少年である。その男の娘についてだ。
 エクアドルから日本に来て働いているマルコ=ボリバル彫のある顔に黒い癖のある髪の毛と黒い目を持つ頬が痩せた一七二位の引き締まった体格の彼は言った。
「僕はカトリックだからどうもね」
「抵抗があるかい」
「男は男らしくってね」 
 同僚の日本人の泳村文武優しい顔立ちで丸い黒い目と唇を持ち細面で黒髪をショートにした一七七程の痩せた体格の彼に話した。
「そんな考えもあるよ」
「そうなんだね」
「ISとかは知っていても」
 それでもというのだ。
「女装とかはね」
「好きじゃないんだ」
「抵抗があるのは事実だよ。遊ぶなら」 
 それならとだ、仕事帰りに居酒屋で二人で飲みつつ話した。
「女の子だね、それに同性愛になるしね」
「男の娘とならだね」
「そっちの趣味もないしね」
「カトリックだからだね」
「キリスト教は厳しいからね」 
 同性愛に対してだ。
「基本ね」
「死刑になる位だったね」
「普通に罪だったよ」
「そうだったね」
「今はよしと言う人が多くなっていても」
 それでもというのだ。
「やっぱりね」
「抵抗がある人もいるね」
「僕の様にね、ただね」 
 ボリバルは泳村にビールを飲みつつ話した、つまみには焼き鳥や卵焼きがあってそうしたものを楽しみながら飲んでいる。
「攻撃はしないから」
「自分は好きじゃないだけでだね」
「そうだよ」
「攻撃しないならいいよ」
 好きでなくともとだ、沖村は返した。
「それならね」
「そんなことはしないから」
 ボリバルもそれはと返した。
「絶対にね」
「人は人だね」
「自分は自分だよ、日本に男の娘がいても」
 それでもというのだ。
「僕はいいよ」
「そうなんだね」
「遊ばないだけでね」
 ただそれだけでというのだ。
「いいよ」
「それならね」
 ここまで聞いてだ、沖村はボリバルに笑って話した。
「このお店に男の娘がいてもいいのかな」
「まさか。ここは普通の居酒屋だよ」
 ボリバルは即座に否定した、その顔にもまさかと書いてある。
「そんなね」
「いやいや、それがだよ」
 だが沖村は笑ったまま返した。
「わからないよ」
「いるのかい?」
「そうかもね」
「いるとしたら何処だい」 
 ボリバルも乗って応えた。
「一体」
「お客さんの中にいるか」
 沖村は笑ってビールを飲みつつさらに話した。
「店員さんか」
「まさか」
 そう言われてだ、ボリバルは。 
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