仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜
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新生と復活
かろうじてゼクロスと引き分けたライダー達は滝や役に助けられ喫茶アミーゴへ戻った。そこには立花藤兵衛達が待っていた。
「そうか、バダンか。次の組織の名前は」
話を聞いて立花は呟いた。
「そしてゼクロスか。かなり厄介な奴だな」
「・・・・・・・・・」
ライダー達は一言も発しない。その通りだからだ。
谷源次郎もいる。滝や役、がんがんじい達もである。
「・・・そして御前達、まさか負けたままでいるわけじゃないだろ」
立花はライダー達に言った。その言葉に彼等は一斉に頷いた。
「・・・・・・よし、それでこそライダーだ」
立花は表情を変えずに頷いた。顔は笑っていない。だが心は違っていた。
「今から鍛え直すぞ。ビシビシ行くからな。覚悟しろよ」
長い間彼等と共にいたからこそ知っている。彼等の本当の強さはその心にあるのだと。
「おやっさん、けれどそれだけじゃあ駄目でしょう。新しいマシンも開発しないと」
滝が言った。
「任せろ、最高のマシンを作ってやる」
立花は満心の笑みで答えた。
「そしてライダー達の更なる改造も必要だ」
不意に誰かの声がした。
「その声は」
筑波とがんがんじいが店の入口の方を振り向いた。そこには二人がよく知る人物がいた。
「遅れてしまった、済まない」
優しい微笑と共に詫びる。志度博士だ。
「君達の強化改造は私に任せてくれ。知人の科学者達の協力も得られるし」
「おお、それは心強い」
谷が笑顔で言った。立花達も同じだ。
「しかし改造する場所が・・・・・・」
ふと滝が口にした。それに対し博士は扉の方を指し示した。
白髪混じりの眼鏡をかけた初老の男性が現われた。知的な顔立ちをしている。
「海堂と申します」
彼はそう名乗った。
「医者をやっている。生物工学の権威でもある。私の学生時代からの知人なんだ。彼もゲドンに家族を殺されている」
「そうですか、ゲドンに・・・・・・」
立花が顔を曇らせる。ゲドンは歴代の組織でも特に残虐な組織であった。
「だからこそ協力したいそうだ。大丈夫、腕の方は確かだ。それに」
そう言って博士は意地悪そうに笑った。
「美人の助手もいるしね」
「おいおい、志度君、ルミちゃんは僕の養子だよ、助手じゃない」
その言葉に海堂博士は困惑した。
「まあこういう人物だ。悪い奴じゃない、安心してくれ」
二人の科学者はそう言うと店の中へ入った。
「じゃあまずは強化改造か。わし等はマシンの開発に取り組むとしよう。おい滝、早速始めるぞ」
「えっ、今からですか?」
「何言ってやがる。思い立ったが吉日だって言うだろうが」
「まあそうですけど。ったくおやっさんは相変わらずせっかちだなあ」
「当たり前だ。のんびりしていられるかってんだ」
「それでしたらわしも協力させてもらいますよ。」
谷が言った。
「おいがんがんじい、御前も協力しろ」
「へえ、まあ」
パンケーキをせわしく口に入れつつ答える。
「じゃあ僕も手伝わさせて下さい」
役も協力を申し出てきた。
「あれ、あんたもバイクを扱えるのかい?」
「大学では工学部だったんです。それにいつも乗っていますので」
「おお、そりゃあ心強いね」
ふと役の目に強い光が宿る。しかしそれには誰も気付かなかった。
「ではライダー諸君は私と共に来てくれ。まずは君達のデータを見てみたい」
「はい」
海堂博士に言われライダー達は答えた。
「そして結城君・・・いやライダーマンと言った方がいいか」
博士の言葉に結城は黙って頷いた。
「データの分析及び強化改造には君の力も必要だ。協力してくれるね」
「はい」
結城は承諾した。
「悪いが君の改造は最後になると思う。だが安心してくれ。君にもとっておきのプレゼントを用意してある」
「有り難うございます」
結城はその言葉に微笑みで返した。
「さて忙しくなるぞ。今から寝ずにやるぞ!」
立花の声が響く。滝達を引っ張って店の裏のガレージへ進んでいく。
ライダー達はバイクを立花に預けると海堂博士と共に歩きはじめた。その先にどんな苦痛が待っていようと彼等は恐れていなかった。正義の為、世界の為ならばたとえどの様な苦しみにも耐える、それがライダーなのだから。
ライダー達への宣戦布告とゼクロスの名乗りを終えたバダンは次の作戦の計画を進めていた。
「マシーン大元帥よ、その策を申してみよ」
暗い巨大な一室に首領の声が響き渡る。壁にバダンの紋章が掲げられている。声はそこから発せられている。
部屋の中に幹部達が揃っている。その足下は白い霧で包まれている。
「はい。まずはライダー達をこの日本で一人残らず倒してしまうのです」
マシーン大元帥は紋章に一礼して話しをはじめた。
「ライダー達をか」
「はい。我等の計画の最大の障壁はやはりライダーです。奴等の為にこれまで多くの計画が水泡に帰してきました」
「そうだったな。世界各地での作戦は全て奴等に阻止されている」
その言葉を聞き大元帥以外の全ての幹部達は顔を曇らせた。
「だがどうやってライダー達を倒すのだ。ゼクロスは今他の作戦に従事しているのだぞ」
「ゼクロスは必要ありません。ライダーをそれぞれ誘き出し一人ずつ始末していくのです」
「成程、各個撃破か。だがどうするつもりだ」
「日本の九つの地域でそれぞれ作戦を同時に展開します。それにライダーを誘い込むのです」
「そうか、そのそれぞれの地にライダーを倒せるだけの戦力を配しておくのだな」
首領は満足そうに言った。
「面白い。その策採用しよう」
「有り難き幸せ」
マシーン大元帥は恭しく頭を垂れた。
「そしてライダーを倒す戦力だが」
「それでしたら私にお任せを」
不意に声がした。
「ムゥッ!?」
金と銀の蛇腹の如きバトルボディにファラオの如き兜を着けた男が進み出てきた。緑のマントと黒いブーツを身に着け右手には鞭、左手は五つの鉤爪となっている。地獄大使に酷似した風貌だ。
それでいて雰囲気は地獄大使のそれとは異なる。彼に比べて落ち着き知的な印象である。
彼の姿を認め地獄大使は露骨に嫌悪感を示した。相手もそれが解かっているのであろう。地獄大使の方へ視線を移し口の端を歪めた。
「暗闇大使か」
その名を呼ばれ暗闇大使は頭を垂れた。
「申してみよ」
「ははっ」
首領の許しを得て彼は口を開いた。
「ライダーを倒す戦力ですが我がバダンの怪人軍団こそそれに相応しいかと存じます」
「何っ、今あの者達を投入するというのか」
首領は驚きの声をあげた。
「はい。ライダーを倒すにはそれだけの戦力が必要です。それを担えるのは怪人軍団をおいて他にありませぬ」
暗闇大使は言葉を続けた。
「ライダーを倒すのに戦力を惜しんではいけませぬ。切り札を投入してこそそれが成るかと存じます」
「切り札、か」
首領は思案する声を出した。
「しかし怪人軍団が倒れた場合はどうする。責任は貴様にあるのだぞ」
「その点は御心配無く」
暗闇大使は不敵に笑った。
「今我等の野望を達成させ得る最強の兵器を開発しております。これさえあればよしんば怪人軍団が倒れたとしても十二分に釣り合いが取れまする」
「それは一体どういう兵器だ?」
「それは二つあります」
暗闇大使の顔が変わった。獣、いや悪魔の如き凄みのある笑みである。
「二つもあるというのか」
「はい。一つは全てを破壊し尽くす魔神の鉄槌、そしてもう一つは・・・・・・」
更に怖ろしい笑みとなる。
「私自身の中にあります」
そう言い終えるとニヤリ、と笑った。まるで地獄の奥底の魔王が笑ったかの様な顔であった。
「そうか、貴様自身がか」
その言葉を聞いて首領は満足そうに声を出した。
「面白い。それではこの日本における作戦はマシーン大元帥と暗闇大使に任せることにしよう。他の者はそれぞれの担当の地域を定めた後作戦を開始せよ」
そう言い終えると声は消えた。
会議の後百目タイタンは自室に戻っていた。そして壁に掛けられている地図を見た。他にはストロンガーの絵も掛けられている。そこには一本のダーツが刺さっている。
「この俺がストロンガーを倒す作戦を外され他の国に行くなぞ・・・・・・」
葉巻を口にする。だがすぐに口を離し手から出した炎で燃やした。葉巻は煙となって消えた。
「マシーン大元帥め、、忌々しい奴だ」
ダーツを手に取り投げる。それは壁に向かって飛んでいく。
筈だった。ダーツは空中で止まった。
「ムッ!?」
不意に白い影が姿を表わした。ゼネラルシャドウである。
「ご立腹の様だな」
ダーツを指で玩びつつタイタンに言った。
「・・・何の用だ、断りも無く部屋に入ってきて」
タイタンの声がさらに不機嫌なのものとなる。
「何、様子を見に来ただけだ。さぞ機嫌が悪いだろうと思ってな」
「それは貴様とて同じだろう」
無数の目でシャドウを睨みつけた。それに対しシャドウはいささかも怯まない。
「そう見えるか」
「貴様とマシーン大元帥の関係、俺が知らぬと思うか」
その言葉を聞いてシャドウの態度が一変した。
「・・・・・・そこまで知っていたか」
タイタンを見据えた。
「俺には百の目がある。この目に映らぬものは無い」
「成程な。だが俺も貴様とマシーン大元帥の事で面白い話を聞いている」
「それは何だ?俺は知らんが」
とぼけてみせた。彼等は水面下でマシーン大元帥の一派と激しい内部抗争を行なっているのだ。
「ほう、知らぬのか」
「全くな」
タイタンはそううそぶいた。
「まあ良い。ところで面白い情報を手に入れたのだが」
「情報?何だ?」
タイタンの顔色が変わった。
「ライダー達が海堂という男と接触したそうだ」
「海堂・・・・・・。医学、生物工学の権威の海堂博士か」
「そうだ。そして立花藤兵衛が何やら必死で動き回っている」
「フン、どちらにしても死に損ないの老いぼれではないか。奴等の始末はライダーの後だ」
「そうだな、そうなれば良いが」
シャドウが意味ありげに言った。
「それはどういう意味だ?」
「・・・・・・・・・」
スッと一枚のカードを見せた。
「トランプか」
「そうだ。カードは言っている。強敵が現われると」
その言葉にタイタンは無数の視線を向けた。
「貴様はそれがライダー達だというのか?」
「それ以外にどう見るというのだ?」
その言葉には説得力があった。
「・・・・・・いや、他には見当たらんが」
タイタンは暫し思案した後で言った。
「ただ俺も一つ気になる事がある」
「何だ?」
「このカードを見てみろ」
シャドウはそう言うと三枚のカードを出した。タイタンはそれを見た。
「どういう意味だ?」
タイタンはカードは使わない。だからそれが何を意味するのか解からなかった。
「『新たなる人物』という意味だ。それも敵のな」
「馬鹿を言え。ライダーは全て日本にいる。普通の人間が出てきたところで恐れる必要は無い」
「そう、『人間』ならな」
シャドウは意味ありげに言った。
「何が言いたい」
「いや・・・まだよくわからんがな。ともかく俺の言いたい事はこれで全てだ」
そう言うとマントを翻した。
「では失礼させてもらう。マントフェイドッ!」
シャドウはマントで全身を包んだ。そしてそれに隠れる様に姿を消した。
「フン、気の小さい奴だ。今更雑魚が出ようと大した事は無いわ」
フフフフフ、と含み笑いをする。だが一つの事に気が付いた。
「・・・・・・まさかな」
だがそれを脳裏で打ち消した。そして彼も全身から炎を発しその中に消えていった。
「信じられん、まさに奇跡だ」
ゼクロスの部屋において伊藤博士は彼と向かいに座って言った。
「まさかこの様な事が起こるとは・・・・・・」
それは驚嘆の言葉であった。そして歓喜も含まれていた。
「博士・・・ナゼソンナ顔ヲスル・・・・・・」
ぎこちない、まるで機械の様な声である。しかしそこにはほんの僅かだが心の動きがあった。
「この顔か・・・ゼクロス、これは喜びというものだ」
「ヨロコビ・・・・・・」
その声には抑揚が無い。しかし何かを感じ取ろうとする意志はある。
「そうだ。嬉しい時にこういった顔になるんだ」
「嬉シイ・・・何ダソレハ・・・・・・」
「そうか、君は全ての感情と記憶を消されてしまっているのだったな」
博士は哀しそうな顔をした。
「マタ顔ガ、変ワッタ・・・・・・」
ゼクロスはまた言った。
「そう、人間は顔が変わるんだ。心というものがあるからね」
「ココロ・・・・・・」
「そう、心だ」
博士は毅然とした表情で言った。
「今から君に私が出来る限り全ての心を教える。そして自分で考えて欲しい」
「ココロ・・・考エル・・・・・・」
ゼクロスは無機質に声を出すだけである。だが博士はそこに大いなる希望を見ていた。
(そういえば)
博士は幼い頃読んだ本の事を思い出していた。
(人の世には多くの災厄があるが最後に人に残されたものがあるとあったな)
博士は心の中でその残されたものの名を読んだ。
(それは希望・・・・・・)
博士は笑った。そしてゼクロスに次々と声をかけていった。
海堂博士は城南大学の研究室にいた。そして結城と共にライダー達のデータを調べていた。
「皆随分ダメージが蓄積されているな。よくこれで今まで戦ってこれたものだ」
博士は煙草を口にくわえつつライダー達のレントゲン写真を見て言った。
「普通の人間ならそうでしょうけどね。我々ライダーは違うのですよ」
傍らにいる結城は微笑んで言った。
「そういう君もかなりダメージが蓄積されているぞ。あちこち悲鳴をあげているだろう」
「え、ええまあそれは・・・・・・」
博士に言われ結城は口ごもった。その通りだったからだ。
「だが安心し給え。これも全て治してやる」
「有り難うございます」
「ただアマゾンだけは違うな。彼は私が見ている間にも傷が見る見る回復していった」
「彼は全身のインカの技術で細胞を改造されて造られましたからね。他のライダーとは違うのですよ」
「そういえば彼はアマゾンへ戻っていったそうだね。姿が見えないと思ったら」
「なんでもガガの腕輪を取りに行くらしいです。あれを着けると本当のパワーが発揮されるらしくて」
「ふむ。では彼は改造する必要は無いということか」
「はい」
その言葉を聞き博士は暫し考え込んだ。
「彼は何時戻って来るんだい?」
「そうですね、三日前に日本を発ちましたからあと三日もすれば帰って来ると思います」
「そうか。では本格的な改造はそれからにしよう」
「えっ?すぐに始めるのではなかったのですか?」
「今は無理だ。君達の今の身体では強化改造手術を施すと命の危険がある。それでは元も子も無い」
「はい・・・・・・・・・」
結城は頷いた。その通りだった。今の自分達にはそれに耐えられるだけの余分な体力は無かった。
「今はこれまでの幾多の戦いで蓄積されたダメージを回復する。それが先だ」
「解かりました」
結城がそう言うと博士は二カッと笑った。
「まあ任せておいてくれ。悪いようにはしないから」
三日後アマゾンが帰って来た。その足で研究室に来た。
「お帰り、アマゾン」
「ただ今、博士」
笑顔で迎えた海堂博士と志度博士に対してアマゾンも笑顔で応えた。その左腕にはあの二つの腕輪がある。
「それがガガの腕輪か。インカ帝国の超エネルギーが秘められているという」
「そう。これさえあればアマゾン負けない」
アマゾンは左手で拳を作って言った。
「うん。見たところ君は大丈夫なようだ。それではわし等の作業を手伝ってもらおう」
「頼むよ、アマゾン」
志度博士も言った。結城も研究室に来た。
「さて、ライダー達のダメージも取り除けたし次はいよいよ強化改造だが」
アマゾンは他のライダー達の所へ言った。研究室にいるのは二人の博士と結城である。
「基本的な弱点を克服し長所を改造するのは勿論だが」
海堂博士は他の二人に話し掛ける。二人は席に座りそれを聞いている。
「回復力の強化にも力を入れるべきだな。今までの戦いを見てみるとダメージが大き過ぎる」
「そうだな。今度の敵は一回の作戦に多くの改造人間を投入してくる。生半可な回復力では持たない」
志度博士も言った。そして結城の方を見る。
「結城君、君にもそれは解かっている筈だ。実際に戦うのは君達なのだからな」
「はい、私もそれは痛感しました」
結城は口を開いた。
「バダンはこれまでの組織とは比較にならない程の戦力を擁しています。それに恐るべき改造人間もいます」98
その時奇巌山での戦いが脳裏に甦った。ゼクロスの強さは圧倒的だった。
あの時は九人のライダー全ての力を結集してなんとか引き分けた。だが一人ならどうなるか・・・・・・。それは彼等自身が最もよく知っていた。
「ライダーの改造に回復力の強化は不可欠です。是非お願いします」
結城は大きく頷いた。
「ところでそれはどうやって改造するのです?機械による強化細胞ですか?」
「いや、実はある人物の能力を応用しようと思うんだ」
「ある人物?」
海堂博士の言葉に結城はきょとんとした。
「それは一体誰ですか?」
「アマゾンだよ」
海堂博士は微笑んでそれに答えた。
「アマゾン・・・・・・ああ成程」
その名を聞いてすぐに理解した。
「彼のあのインカの超エネルギーを応用するのですね。それなら問題は無い」
「どうだ、彼のデータを見て考えたんだ。悪くはない考えだろう」
「ええ、とても」
結城は大きく頷いた。
「さて、後はこれを彼等に承諾してもらうのだが」
「俺達なら構いませんよ」
後ろから声がする。見るとアマゾンと七人のライダー達がいた。
「君達・・・・・・」
その姿を見て二人の博士は思わず言葉を漏らした。
「今のままではバダンに勝てない事は俺達が一番よくわかっています。だからこそ・・・是非とも」
「そうですよ、古代インカのエネルギーってのも悪くないですしね」
本郷と一文字がライダー達を代表するように言った。
「いいかね?他にも君達の機械の部分もかなり改造される事になるが。かなりの大改造だぞ」
「ええ、それはもう解かっていますよ」
海堂博士に風見が答えた。
「そうでもしなけりゃあのゼクロスには敵いませんしね」
沖も同意する。
「あいつをサシで倒せないと・・・・・・。おそらくまた出てくるだろうし」
神の脳裏にあの時のゼクロスの圧倒的な強さが浮かぶ。
「あいつにはでかい借りがありましてね。この手でぶっ潰してやらないと気が済みませんよ」
城が拳を振り回す。眼には強い怒りの色が浮き出ている。
「博士、もう準備は出来ているんでしょう?早速始めましょう」
筑波が志度博士を急かす。その言葉に博士は頷いた。
「・・・・・・よし、君達の心、よく解かった。それでは早速手術を始めるぞ」
「はい!」
博士と九人のライダーは手術室へ向かった。扉が閉められ中には誰も残らなかった。ただ一つ、希望が残った。
喫茶アミーゴでは裏のガレージで立花が滝達と共にライダー達のマシンを改造していた。
「おい史郎、そこもうちょっとちゃんとやれ」
立花は新サイクロンのエンジンをスパナで調整しながら細面のひょうきんな顔立ちの若者に言った。
「はい~~・・・・・・」
その若者は情けない声で答えた。
「何だその情けない声は。それで世界が救えるとでも思っているのか」
「けど俺喫茶店のバーテンですよ。そんな事出来る筈ないじゃないですかあ」
「それを気合でやるんだよ。わし等がやらなけりゃあ誰がやるんだ」
「わかりましたよお・・・・・・。来てみたら閉店だから何してるかと思えば・・・・・・。とほほ」
史郎はまた情ない声を出した。
「何か史郎も変わらないな、本当に」
それを見て滝は笑った。
「おう、また喫茶店を開こうとしたらぶらっとやって来たんだ。使って下さいってな。昔の馴染みで置いたんだ」
立花は嬉しそうに言った。
「何でも勤めていた会社でリストラに遭ったらしくてな。どうしようかと悩んでいたらわしの事を思い出したらしい」
「へえ、そうだったんですか。そういえば五郎とかナオキはどうしてます?」
「二人共大学に行ってるよ。たまにうちへ来るぞ」
「それだったらまた会えるかも知れませんね」
「おう、楽しみにしとけ」
立花はエンジンをいじりながら答えた。どうもコーヒーを入れるよりもエンジンを触っている時の方が機嫌がいい。
「それにしても凄いマシンですね」
役がクルーザーのプロペラの部分を観ながら言った。
「どれも世界で最高レベルの博士が設計したものでっからなあ。当然ですやろ」
がんがんじいが言った。彼はマシンには詳しくないので手伝いをしているだけである。
「ええ。よくこれだけのものを作る事が出来たと思いますよ。将に天才です、これ等のマシンを作った人達は」
「そう言ってくれると皆喜んでくれまっせ」
がんがんじいはスカイターボに手を置きながら言った。
「その分整備は大変だがな。おかげで人手がいるってもんだ」
谷が役と共にクルーザーの整備をしながら言った。彼も実に機嫌がいい。
「だから俺達も呼んだんですか」
「仕事が溜まってるのになあ・・・。なんでこんな時に」
チョロこと小塚政夫と自称ルポライターの飛田今太が言った。飛田の方はいささか不満そうである。
「呼んでもらえるだけ有り難いと思え。二人共ライダーに会えると聞いて大喜びで来たんだろうが」
「そりゃあそうですけど」
「まさかマシンの整備までやらされるとは思いませんでしたよ」
不満を言っている割には手が動いている。しかもかなり手馴れている。
「おいがんがんじい、そこのペンチ取ってくれ」
「はいな」
谷に言われペンチを渡す。そしてクルーザーの中の破損部分を取り除く。
「クルーザーは俺と役君でやるからお前等はそっちのジャングラーを頼む」
「はい」
「わかりました」
谷の言葉に従い二人はジャングラーの方へ移った。
「また凄い外見のマシンですね」
滝がジャングラーを見て言った。
「ああ。アマゾンが高坂教授って人から受け取った設計図を基にわしが作ったんだ」
立花が言った。
「まあわしも完成したの見た時にはびっくりしたけれどな」
彼はそう言って笑った。
「けれど動きは凄いぞ。あれもインカの技術で動いているしな」
「へえ、そうなんですか」
史郎が言った。
「何で動いてるんです?ゴゴの腕輪とか何かでですか?」
「そんなもんあるか。『太陽の石』っていう秘宝のエネルギーらしい。何でもマシンが壊れない限り永久に動く事が出来る
ってえ話だ」
「そりゃあ凄いですね。流石はインカ帝国の技術だ」
「おい、それをこしらえたわしへの言葉はなしか」
二人のやりとりを面白そうに眺めていた役だがふと太陽の石という言葉に反応した。
(太陽の石・・・あれか)
何か知っているようである。
(それではジャングラーの改造は容易にできるな)
何か思いついたらしい。
「谷さん、ちょっと」
そう言うと谷の耳もとへ口を寄せた。
「?」
谷は不思議に思いつつも耳を寄せた。そして役の話を聞いた。
「ああ、そういうことなら俺は構わないが」
「それではいいですね」
「おう、どんどんやりな」
谷はそう言うと二カッと笑った。白い歯がこぼれる。
「おい二人共、こっち来て手伝え」
ジャングラーの整備をしている二人を呼び寄せた。
「えっ、けれどこれはどうするんです?」
「ジャングラーは役君がやってくれるそうだ。心配は要らないから来い」
「そういう事だったら」
二人は谷の言葉に従いクルーザーの方へ来た。それと入れ替わりにジャングラーへは役が来た。
(クルーザーもまだまだ改造出来るな)
ふとクルーザーの方へ向いてそう思った。だが口には出さない。
(後でいいな)
そしてジャングラーの横に来た。
「・・・・・・・・・」
黙ってジャングラーを見る。確かに奇妙な外見である。まるで魚の様だ。
スパナやドライバーを手にマシンの中を開ける。そして太陽の石を取り出した。
「そういえば南米にも行った事があったか」
ポツリと漏らした。
そして懐から何か取り出した。見た事もない器具である。
それを太陽の石に当てる。石の光が強くなった。
「これで動力はよし」
石を再びマシンへ戻す。
「後はその他の部分だ」
その危惧でマシンの各部を調べていく。
その日の夜だった。皆真夜中まで働いていたが流石に疲れ果て寝ている。アミーゴの二階のソファーで仮眠をとっている。
だが役だけは起きていた。そしてガレージにあるマシンを見ていた。
「新サイクロンはここをこうしたらいいな」
例の器具を使って色々と見ている。
「ハリケーンはこう、クルーザーは・・・」
それは数日続いた。そしてある日の朝立花達に数枚の設計図を手渡した。
「これは・・・・・・」
それはそれぞれのマシンの改造の為の設計図だった。細部まで実に細かく書かれている。
「少しマシンを調べてみまして。どこをどう改造したらいいか考えてみました」
役はそう言うと立花に微笑んだ。
「素人の考えなのでお話にもならないと思いますが・・・・・・。どうでしょうか?」
「いや、いいぞ役君、これはいいぞ」
立花は設計図を見ながら役に言った。声が喜びで上ずっている。
「ちょっと話し合ってみる。けれどこれで大体決まりだろう」
「ええ。わしもこれに異存はありませんね」
立花の横でその設計図を見ていた谷も同意した。
「この通りにやれば新サイクロンよりもずっと凄いマシンが出来上がりますよ。おやっさん、早速取り掛かりましょう」
「おう、やるぞ」
立花達は話合う事もなく早速改造作業を行なう為ガレージへ向かった。役はそれを見送っていた。
「マシンはこれでよし」
役は一言そう呟くとにこりと微笑んだ。
「後は・・・ライダー達の技量次第だが」
そこでこれまで見てきたライダー達の雄姿が思い起こされる。
「彼等ならば問題は無いな」
そう言うと立花達の後を追った。彼等は既にスパナ等を手に改造に取り掛かっていた。
「さて、まず一号だが」
海堂博士は手術室で横たわる本郷を前に言った。
「主に力をパワーアップさせよう。そうすればより技が生かされるようになる」
「そうだな。だがそれにより技の切れが落ちやしないか」
志度博士が危惧の念を漏らす。
「それは大丈夫だ。筋肉の動きがより活発になるからな。これでパワーも切れもこれまでとは比べ物にならない程凄くなる」
海堂博士は更に続ける。
「全体的な筋力がアップするからジャンプ力も当然強まる。まるで空を飛ぶ様になるだろうな」
「おお、それは凄い」
海堂博士はここで志度博士に尋ねた。
「ところで二号は君が改造を行なうのだったな」
「うむ。君と逆になるが私は彼のスピードを中心にアップさせていく。そうすれば彼のパワーがより生かされるようになる」
志度博士は自信をもって答えた。
「そして技の切れもジャンプ力もかなりアップさせるのだな」
「その通りだ。だが君の一号と同じ様なタイプにはならないだろうな」
志度博士はそう言うと海堂博士に微笑んだ。
「それはまたどうしてだ?」
「スピードをアップさせるからといって彼の個性を殺すつもりは無い。パワーはこれまでよりも更に上げていく。今とは比較にならない程にね」
「何だ、それでは私と考えが変わらないな」
海堂博士は笑った。
「それはどういう事だい?」
志度博士はその笑みに少し驚いた。
「私も一号のスピードはよりアップさせているよ。そうでなければ技は生きないからね」
「そうか。それにしても彼等は同じライダーだというのにかなりタイプが異なるな」
「だからこそ二人が揃った時凄まじい力を発揮するのだろう」
「うむ。伝説のダブルライダーの強さはそこにあるのか」
博士達は手術を始めた。二人のライダー達が今再び生まれ変わらんとしていた。
次に手術室に入ったのはV3とⅩライダーであった。
「また随分と内臓されている能力が多いな」
志度博士はV3のデータを見て思わず呟いた。
「26の秘密と言われていますから。その分多様性がありますよ」
二人の博士の助手を務める結城が言った。
「ふむ、それでは全体的な改造は勿論だがこの内蔵されている能力をアップさせていくか。これで更に多様性が強まるだろう」
「ところで結城君、逆ダブルタイフーンというのは何かね?」
海堂博士は結城に尋ねた。
「V3のダブルタイフーンを逆回転させる事により爆風を起こさせる技です。しかしそれを使用すると三時間は変身が不可能になります。彼の弱点の一つとなっています」
「そうか、それではそこを直していこう。かなり弱体化するが変身が不可能になる状況ではなくなる筈だ」
「有り難うございます」
結城は海堂博士に礼を述べた。
「ところで他にも弱点はあるのかい?確か他にもあった筈だが」
「はい、それは・・・・・・」
結城は二人の博士にそっと耳打ちをした。
「成程、その程度なら簡単に改善出来る。もう彼の四つの弱点は無いぞ」
次にXライダーの改造に取り掛かる。
「彼はマーキュリー回路の能力をアップさせよう。そして海中での行動能力も上昇させる。これでかなり違う」
志度博士がマーキュリー回路を手に取り言った。
「志度君、もう一つ改造すべきものがあるぞ」
「?それは何だい?」
「これだ」
海堂博士はそう言って一本のスティックを取り出した。
「ライドルか」
「そう、これも改造してはどうだろうか。何といっても彼のメイン武器はこれなのだし」
海堂博士に手渡され見る。赤い柄に四つのボタンがある。
「そうだな。まずはホイップに刃を付けよう。そうすれば切れ味が良くなる。そしてスティックやロングポールの硬度も上げるとするか。これでかなり違ってくる」
「後ロープだな。これも硬度を上げ電流をより通し易くしよう」
「そうだな、それがいい」
こうして更に二人のライダーがパワーアップした。
次に来たのはストロンガーではなくスカイライダーとスーパー1だった。ストロンガーの改造について二人は何やら思うところがあるらしい。だがそれは口には出さない。
「筑波君、いやスカイライダーは僕が改造したんだったな」
あの時の記憶が甦る。自らを改造人間した自分に感謝してくれた事を。
「悪と戦える力か。私のせいで死の淵を彷徨ったというのに」
その眼が温かくなる。この若者がいるからこそ今の自分があるのだ。
「彼は私が改造する。今よりもずっと強くしてあげるよ」
博士はそう言うとまず重力低減装置を手に取った。
「まずはこれだ。今は空を飛べるだけだがそんなものではない。自由に空を動けるようにしよう」
そして次は全身に取り掛かる。
「九十九どころじゃない。今度は千の業を使えるまでになる。悪と戦いそれに勝つ為には無限の力が必要なんだ」
スカイライダーの瞳が微かに光った。意識は無い筈である。しかし博士の心が伝わったのだろうか。
スーパー1が手術台に横たわった。
「彼は何といってもこの五つの腕だ」
海堂博士はスーパー1のファイブハンドを取り外して言った。
「彼の改造はこれの能力を上げる事があげる事が不可欠だ。これはかなり困難だがな」
「それではスーパー1の身体の改造は僕と結城君がやろう。君はファイブハンドに専念してくれ」
志度博士が提案した。
「えっ、いいのかい?」
「その言葉に海堂博士は少し戸惑った。
「君はスカイライダーの改造手術を執りおこなったばかりだろう。疲れているのではないか?」
「こんなもの疲れのうちに入らないさ。結城君、いいかい?」
博士は笑った。そして結城の方を見た。
「ええ、僕は構いませんよ」
結城もそれに対し微笑みで返した。
「という事だ。なあに、まだまだ若い者には負けはしないよ」
「おいおい、君より二月程遅く生まれただけじゃないか」
海堂博士はそう言うと笑った。
スカイライダーとスーパー1も新たな力を手に入れた。
「さて、と。いよいよストロンガーだが」
横たわるストロンガーを前に博士達は腕を組んだ。
「超電子ダイナモをどうするかだな」
海堂博士が言った。結城は既に自身の手術に備えここにはいない。
「確かに絶大な力だが稼働時間が僅か一分では。これを強化するか」
「そうだな。そうでなければこれからの戦いに勝てないだろう」
志度博士も同調した。
「だが問題は手術の成功の確率だ。これは城君自身から聞いた事だが超電子ダイナモの改造手術は極めて困難なものだったらしい。成功確率は10パーセントしかなく成功したのが奇跡だったという」
「10パーセント・・・・・・」
その言葉に海堂博士は表情を曇らせた。
「超電子ダイナモを開発し手術を行なった正木博士もこの世にはいない。手術の成功確率は1パーセントも無いだろう」
「そうか・・・・・・」
「ちょっと待って下さい、ゼロじゃないんでしょう?」
二人の会話を聞きストロンガーが起き上がった。
「ストロンガー・・・・・・」
「俺なら構いません。どんな痛みにも耐えきってみせます。それに超電子のデータは既にご存知の筈です」
「だが・・・・・・」
二人は顔を曇らせた。
「このままじゃバダンに勝つ事が出来ないのは俺が一番よくわかっています。今は僅かな可能性があればそれに賭けるしかないんです。・・・・・・だから、お願いします」
「・・・・・・・・・」
その言葉に二人は沈黙した。そして暫し考え込んでいたがやがて顔を上げた。
「解かった、改造しよう」
「君は安心して寝ていてくれ。私達が必ず成功させる」
「はい・・・・・・」
ストロンガーは再び寝た。そして彼に麻酔がかけられた。
「やるぞ」
「うむ」
二人は超電子ダイナモの改造に取り掛かった。
数時間が経った。二人は自分の全ての力を使った。そして手術は成功した。
「・・・奇跡だ。まさか成功するとは」
「ああ。だがまだ終わりじゃないぞ」
安堵の表情を浮かべる海堂博士に対し志度博士は厳しい顔で言った。
「ああ。だがいよいよ最後だ」
二人はベッドを見た。そこにはライダーマンがいる。
「彼はやはり生身であるのがネックか。今まではその頭脳で戦闘力の低さを補ってきたが」
「これからは難しいだろう。敵は複数の怪人を一気に投入して来る」
海堂博士は思案した。
「・・・・・・よし、思い切って全身を改造しよう。他のライダーと同じようにな。外見はそのままにして。これで他のライダー達と同じく複数の怪人を相手にしても充分戦えるぞ」
「そうか。ところで右腕のアタッチメントはどうする?」
志度博士の問いに海堂博士は笑みで以って答えた。子供の様な笑みだった。
「それはもう考えてあるんだ。まあ見ていてくれ」
「解かった、楽しみにしているよ」
ライダーマンの手術がはじまった。
「ふう、後は彼等が目覚めるのを待つだけだな」
「ああ、予想していたとはいえ困難な手術だった」
手術を全て終え二人の博士は研究室で休んでいた。
「お疲れ様です」
そこへ一人の少女がお茶を差し出してきた。
「ありがと、ルミちゃん」
海堂博士が笑顔で礼を言った。
黒くやや丈の長いワンピースの服を着ている。その上に白いエプロンをかけている。歳は十歳程であろうか。可愛らしい顔立ちの小柄な少女である。
「おや、これは・・・・・・」
志度博士はティーカップの中の紅茶を見て顔を少し明るくさせた。
「シナモンティーか。いいね、僕はこれが好きでね。いつも飲んでいるんだ」
「おや、そうだったのかい?学生時代はいつも酒ばかり飲んでいたじゃないか」
「それは君だろう。酒は百薬の長とかいつも言って」
「あれ、そうだったっけ」
志度博士の言葉に海堂博士はとぼけてみせた。
「よく言うよ。いつも三升は飲んでた癖に」
「ちょっと待てよ、いくらなんでもそんなに飲んでないぞ」
「・・・博士、昔からそんなに飲んでいたんですね」
ルミが厳しい顔をした。
「えっ、そ、それは・・・・・・」
ルミの言葉に博士はバツが悪そうな顔をした。
「そ、そうだちょっと学校のポストへ行ってくれないか?郵便があるかも知れないし」
咄嗟にはぐらかす。
「わかりました。けど博士、そんなに飲んだら駄目ですよ」
「・・・・・・はい」
博士は暗い顔をして頷いた。ルミはそれを見ると部屋を後にした。
「何だ、今でも飲んでいるのか」
志度博士は呆れたような顔で言った。
「・・・・・・ああ。幸い身体は壊してはいないしね」
それに対して海堂博士の表情は実に渋い。それも当然であるが。
「それにしても厳しい娘だな」
「ああ。生憎そういうところは父親に似なかったみたいだ」
「父親・・・・・・。一条君か」
志度博士の表情が変わった。懐かしさをいとおしむ気持ちと無念さを噛み締める気持ちが複雑に混ざり合った表情である。
「死んだと聞いたが。だから君が養子にとった」
「・・・・・・ああ、殺されたよ。バダンにね」
海堂博士はそう言うと俯き視線を下へ落とした。
「・・・・・・バダンか。やはりね」
「警察の捜査では強盗殺人ということになったが。間違い無い」
「ルミちゃんはその事を知っているのかい?」
「いや、彼女にはその事を伝えていない。本当の事を言っても信じられんだろうからな」
「だろうな。私も君からゲドンの話を聞いた時は信じられなかったからな」
志度博士も顔を暗くさせた。
「だが自分自身がネオショッカーに拉致され無理矢理協力させられてはじめてそれが解かった。この世界の裏で蠢き世を闇で覆おうとしている者達がいることにな」
「おそらくバダンは一条君に協力を要請したのだろう。だが彼はそれを断った」
「だろうな。彼はそんな事に首を振る奴じゃなかった。そして・・・・・・」
「消された。自分達の存在を知った者として」
二人は更に表情を暗くさせた。
「だからこそ彼等には戦って欲しい。これ以上私達やルミちゃんみたいな人間を出さない為にも」
海堂博士は顔を上げた。そして表情を毅然としたものにし力強く言った。
「うむ。その為に彼等を改造したのだしな」
二人は部屋を出た。そして地下の手術室のほうへ行った。
二人はガラス越しに手術室のほうを見た。その隣の部屋に置かれている八つのベッドを見る。
そこにはライダー達がいた。静かに横たわっている。
「彼等が目覚めた時、再びつらく長い戦いが幕を開けるだろう。だが彼等は戦っていかなくてはならない」
「我々が出来る事は彼等を改造しサポートする事だけだ。しかしそれだけしか出来なくても・・・・・・彼等を死なせるわけにはいかない。彼等の為にも、世界の為にも」
今ライダー達は眠っている。だが間も無く目覚めなければならない。それは彼等自身が最もよくわかっていた。
「暗闇大使は何と仰られている?」
暗い闇の中に声が響いた。
「日本に散れ、との事だ。ライダー達を倒す為にな」
別の声がした。
「そうか。ところであの男は一体どうなった?」
「あの男?ゼクロスの事か?」
また別の声がした。どうやら闇の中に多くの者がいるらしい。
「違う。奴を助けたあの男だ」
「あの男か・・・・・・。暗闇大使が改造手術を受けさせておられる」
「どういう事だ?ゼクロスならいざ知らず奴はただの人だろう」
「その人としてのとびぬけた力を気に入られたらしい。改造人間にするとの事だ」
「改造人間・・・・・・。すると我等と同じか」
先程の者達とは別の声が聞こえてきた。
「うむ。だが我等の中には入らぬらしい」
「どういう事だ!?まさか奴をゼクロスと同じように・・・」
「いや、違う。ゼクロスの補佐的役割を担わせるおつもりらしい」
「ゼクロスの・・・・・・。そうか」
声は急にくぐもった。
「九人のライダーのデータをもとに我がバダンの科学力の総力を結集した究極の改造人間・・・・・・。ライダー達と互角に渡り合ったというが」
「そう。そして一対一では奴等を遥かに凌駕していたという」
また別の声が聞こえてきた。
「かなりの力の持ち主の様だな。だが我等が相手ではどうかな」
挑発する様な声が響いてきた。そこには余裕の笑いが含まれていた。
「それは決まっている」
その声にそこに集まっていた気が皆賛同した様だ。
「そうか、そうだったな」
叶笑が闇の中に響く。そしてそれは闇の中に消えていった。
伊藤博士はゼクロスの部屋に通い詰めていた。彼のメンテナンス担当という事もあったがそれでもかなりの時間を彼の部屋で過ごしていた。時には彼の部屋で眠る事すらあった。
「よし、随分心を取り戻してきたな」
博士はゼクロスに話し掛けつつ笑みを浮かべた。
「博士、何故俺に言葉を教えてくれる」
ゼクロスが呟いた。話し方もかなり流暢になっている。
「それは君に真実を知って貰う為だよ」
「真実」
ゼクロスはその言葉を口に出して言った。
「それは・・・・・・何だ」
「・・・・・・君がこれから知るものだ」
「俺が・・・・・・・・・」
ゼクロスは表情を変えずに呟いた。
「知りたいと思わないか、それを」
「・・・・・・・・・」
ゼクロスは暫し沈黙していた。結論は出なかった。
「まだ次の作戦まで時間がある。ゆっくり考えてくれ。話はそれからでいい」
博士はそう言うと席を立った。
「だが」
出入り口に身体を向けたところで再びゼクロスの方へ顔を向けた。
「知りたくなったら私の所に来てくれ。何時でも待っているから」
「何時でも・・・・・・」
博士は出入り口の横のボタンを押した。シャッターが左右に開いた。
博士は部屋を出た。後にはゼクロスが一人無言のまま座っていた。
新生と復活 完
2003・11・20
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