狐と狸は親戚
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第二章
「その動画のチャンネル狐と狸が主人公なんだよ」
「狐と狸ね」
「人間みたいに描かれたな、狐が話して狸が聞く」
「そうして進んでいくのね」
「そうしたチャンネルでな」
それでというのだ。
「狐と狸って図鑑読んだらな」
「どうしたの?」
「イヌ科にちゃんと入ってるな」
「そのことはもう知ってたでしょ」
「ああ、狐や狸が犬の仲間だってことはな」
このことはというのだ。
「俺も知ってたよ」
「そうよね」
「それでな」
そうであってというのだ。
「ふわりのな」
「親戚よ」
「ふわりも犬だしな」
「けれどね」
ここで母はこう息子に言った。
「ふわりはトイプードルでしょ」
「ああ」
洋介はその通りだと答えた。
「それがどうしたんだよ」
「トイプードルは狩猟犬でしょ」
「水鳥を捕まえるな」
「狐や狸を捕まえる為じゃないけれど」
それでもとだ、母は話した。
「狩猟犬は狩猟犬だから」
「狐や狸の天敵か」
「そうかもね、ただふわりは狩りとは無縁でしょ」
ふわり自身はというのだ。
「だからね」
「狐や狸を見ても何もしないか」
「そうよ、安心してね」
「ああ、そういえばな」
「ワンワン」
気付くとだ、ふわりは図鑑を読んでいる洋介の傍に来てだった。
図鑑に興味がありそうだった、洋介はそのふわりを見てまた言った。
「ふわりも興味ありそうだけれどな」
「読んでいる本に興味があってね」
「狐や狸の絵見ても興奮しないな」
「狩ろうなんて思っていないわね」
「そうだな、親戚と思ってるかも知れないけれどな」
「狩るつもりは全くないわ」
母は確かな声で言った。
「安心していいわ」
「そうだよな、じゃあ一緒に読むか」
母に応えてだった。
ふわりと一緒に図鑑を読む様にした、するとふわりは目をキラキラさせて尻尾を振りつつ読んだ、そこに狩ろうとする意志は全く見られなかった。
狐と狸は親戚 完
2025・2・22
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