情は人の為ならず
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第一章
情は人の為ならず
サラリーマンの久保田剛は一七〇あるかないか位の痩せた身体に少し面長の顔に優しい感じの顔がある、黒髪は
短く全体的に清潔な感じだ。
性格は誰にも優しい、それでだった。
「あんないい奴いないな」
「まるで仏様よ」
「誰にも優しくて親切で」
「怒らないし」
「人の悪口なんて絶対に言わなくて」
「笑顔で接してくれて」
兎角だった。
彼は評判がよかった、それで上司も彼に言った。
「君は幸せになれるよ」
「そうですか?」
「絶対にね」
太鼓判を押して言うのだった。
「そうなるよ」
「どうして僕が幸せに」
「君みたいないい人間はいないからだよ」
だからだというのだ。
「それでだよ」
「だからですか」
「世の中色々理不尽なこともあるけれど」
それでもというのだ。
「報われるものは報われるんだ」
「そうですか」
「だからね」
それ故にというのだ。
「君はいい人だから」
「報われて」
「それでだよ」
そうなってというのだ。
「幸せになれるよ」
「そうなればいいです、僕もです」
久保田は上司に応えて言った。
「幸せになれるなら」
「嬉しいね」
「はい」
こう答えた。
「やっぱりです」
「そう、君は絶対にだよ」
上司は言い切った。
「幸せになる、さっきはなれると言ったが」
「なる、ですか」
「そうならない筈がないよ」
微笑んで言った、そして実際にだった。
彼の周りには常に人がいてだった。
「何かあったら言ってくれ」
「力になります」
「困ったことはないか」
「何でも言って下さいね」
「いや、何か」
久保田はいつも周りに人が大勢いてだった。
力になろうとしてくれて実際に何かあると助けてくれるのでだ、戸惑ってとある知人に困惑した感じで言った。
「僕の周りにはいつも人が大勢いてくれて」
「いいことだね」
「助けてくれるんだ」
「そう言うけれどね」
知人は久保田に話した。
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