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ハッピークローバー

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第百五十九話 豚汁その七

「イギリスにないのってね」
「私もよ、イギリスの娘に言われるまで」
「そうよね」
「何でもね」
 一華は豚汁を飲みつつ言った。
「カツサンドもよね」
「あのハムカツを挟んだ」
「日本のものでね」
「イギリスにはないみたいね」
「そうみたいね」
「日本にも色々なサンドイッチあるけれど」
 それでもとだ、かな恵は一華に話した。
「日本にしかないのもね」
「多いわね」
「野菜サンドやハムサンドがあっても」
 それでもというのだ。
「ツナサンドやハムサンドはないみたいね」
「イギリスはね」
「ティータイムでも食べるけれど」
 ティーセットの中にあるものの定番の一つである、サンドイッチはそこまでイギリスではメジャーな食べものなのだ。
「何でもカジノでもね」
「サンドイッチ食べるのね」
「日本だと鉄火巻きっていうわね」
「博打する場所を鉄火場って呼んで」
「それでその場所で食べていたから」
 鮪を巻き寿司にしたものが日持ちするからだったらしい。
「鉄火巻きって呼んで」
「それであっちじゃね」
「カジノではサンドイッチね」
「トランプやルーレットしながら」
 そうしつつというのだ。
「食べるみたいよ」
「そうなのね」
「けれどツナサンドやハムサンドはないのよね」
「イギリスだと」
「そして」
 ここでだ、富美子はこうも言った。
「冗談でこう言うわね」
「冗談で?」
「サンドイッチは何でも挟めるから」 
 それで食べられるからだというのだ。
「砂と魔女以外は挟めるから」
「サンドとウィッチね」
「そう、それでね」
 そうであってとだ、富美子はお握りを手にしてかな恵に話した。
「そう言うってね」
「それは冗談ね」
「ええ、砂は食べられないし」
「魔女だってね」
「魔女なんて食べたら」
 富美子は童話に出てくる様な老婆の魔女を思い浮かべつつ話した。
「まずいわよね」
「絶対にね」 
 かな恵もそうした魔女を思い浮かべつつ応えた。
「痩せて骨と皮ばかりでね」
「お婆さんでね」
「人間じゃなくてもね」
「絶対にまずいわよね」
「だからサンドイッチね」
「砂と魔女以外挟める」
「そして食べられるから」
 富美子の話に乗って言った。
「そういうことね」
「ええ、ランチパックと同じで何でもいけるわね」
「ランチパックも色々あるしね」
「あれはサンドイッチから出来たのかしら」
「そうじゃないかしら」
 何となく思ってだ、かな恵は答えた。 
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