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雨後の筍の如く

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第二章

 彼は大人になって就職して家庭も持ってだ、息子で大学生の信一郎自分そっくりの顔で茶髪にしている彼がスマートフォンを見て憮然としているのを見て尋ねた。
「どうしたんだ?」
「いや、投稿サイトの小説読んでるんだけれど」 
 息子は家のリビングのソファーに座って父に話した。
「どれもなんだよ」
「どれも?」
「ああ、同じ様な小説ばかりなんだよ」
 サイトに投稿されているそれはというのだ。
「異世界に転生して何かする」
「そうした小説多いんだな」
「ばかりだよ、それで女の子が大勢出て来て」
 そうしてというのだ。
「ハーレムになるんだよ」
「成程な、今も同じなんだな」
 父は息子の話を聞いて頷いた、丁度仕事帰りでまだスーツを着ている。
「お父さんが子供の衣同じだったよ」
「そうだったんだ」
「ファミコンのゲームでも一つ当たったら」
 あの時遊んで母に言われたことを思い出しつつ話した。
「どの会社も同じ様なゲーム作って売ったんだよ」
「そうだったんだ」
「その時と同じだな」
「一つ当たったらなんだ」
「皆作ったり書くんだ」
 そうするというのだ。
「売れたりよく詠まれるからな」
「他のジャンルもあるけれど」
「主流はそっちになるんだな」
「そうだよ」
 その通りだというのだ。
「これが」
「そんなものだよ、世の中は」
「一つ当たるとか」
「皆やるんだ」
「成程な、そうしたものなんだな」
「それでまた別のが当たれば」
 今度はとあるRPGが当たった時をを思い出して話した。
「そちらにばかりなるんだ」
「流行なんだな」
「それにつられるんだ、それも世の中なんだ」
「成程な、じゃあ異世界もの読んでいくか」 
「そうしたらいいんだ、それでまた次に当たったジャンルを読めばいいんだ」
 こう息子に言った、そうしてだった。
 妻に晩ご飯は何かと聞いた、そのうえで着替えに言った。今の彼はもう丸坊主ではなく黒髪をセットして眼鏡もかけている、だが頭の中には子供の頃の思い出があった。


雨後の筍の如く   完


                  2025・2・16 
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