仮面ライダータオ
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急:往け、我がライダー道!
「仮面ライダータオ、我が往く道を通させてもらう!」
龍李の変身した仮面の闘士・タオはヘルハウンドへと飛びかかっていく。
勢い良く突っ込んでくるタオにヘルハウンドは鼻で笑いながら、身構える。
「馬鹿か、無策で突っ込むなど!」
単純に向かってくるタオにヘルハウンドは再び口から炎を吐いて、燃やし尽くそうと撃ち放った。
だが、放たれたことに気付いたタオは勢いを落とさぬまま、タオベルトに手をかけた。
【Change Up】
「ライドルトンファー!」
タオベルトにつけられたグリップ型武器『ライドル』を引き抜くと、一対のトンファーの形へ変形させる。
そして自分目掛けて繰り出された炎をトンファー型武器・ライドルトンファーを振り回して防いでいく。
「なにぃ!?」
「覇ァァァァ!!」
ヘルハウンドの炎を防ぎ切ったタオは近くの道路標識を足場にして蹴り飛び、勢いを乗せた回し蹴りをお見舞いした。
「ふごぉ!?」
放たれた蹴りの一撃を叩き込まれ、ヘルハウンドは膝をつく。
「くぅ……!?」
「まだまだ行くぜ!」
「調子に乗るな!」
激昂するヘルハウンドは新たなる剣を自身の影から取出し、タオへと斬りかかる。
タオはライドルトンファーで受け止めて、暫しの間鍔迫り合いを繰り広げた。
「貴様さえいなければあの男は私の手で死んでいた! ヤツの研究は我らファントムが生まれる温床の妨げになる!」
「お前、そのために雨谷さんを狙ったのか!」
「あの男の研究は人々の希望となる……だから、我らが叩き潰す! 完膚なきまでにな!!」
「だったら、アンタは雨谷さんを恐れているってわけだ」
「……なんだと?」
ファントムであるヘルハウンドがイマジンと結託してまで雨谷を狙う理由が判明した今、タオは自慢げな声を上げた。
ヘルハウンドはその返事に眉をひそめ、次に言い放った言葉に激怒した。
「雨谷さんの命を狙っているほど切羽詰まっている……つまり、あの人の研究は人々を希望になるってこと確実じゃないか!」
「貴様……ッ!!」
「それに言うじゃないか、『「生きる」ってことは「美味しい」ってこと』って。あの人が生きるってことは、もっと美味しいことがあるってことだよな!」
「―――あの男より殺す前に貴様から始末してやるッ!!」
雨谷をつけ狙う理由を『希望的かつ前向きな内容』で指摘した言葉を聞き、怒号を上げるヘルハウンド。
狙いを目の前のタオへと変更し、自身は『影の中に潜む』能力を使用して、いったん姿を消した。
目の前から姿を消した今、タオは静かに構えを取る。
「…………」
(……馬鹿か! この私相手に隙を作りおって!)
明らかに隙ができていることにしめしめと考えているヘルハウンドは、見えない死角の影から飛び出し、その刃を振り上げようとした。
タオへと迫る凶刃、捉えたとヘルハウンドは確信していた……。
「凄ッ!」
だが、ヘルハウンドの放った剣は片腕の握っていたライドルトンファーの先端部分によって受け止められてしまう。
その類まれのない絶技に驚いているのもつかの間、もう一方のライドルトンファーによる一撃を叩き込まれ、地面へと転がっていく。
見えない刺客からの一撃を見切ったことにヘルハウンドは驚いていた。
「な、なぜだ!? 影の中を移動していたのに!?」
「アンタの気配は嫌でもわかるからな。相手の気を探るぐらい、なんてことないのさ」
「気を探る!? そんなもの信じられるか!」
「だったらもう一度やるか? 今度はドキツイのお見舞いしてやるぜ!」
自分の能力を見切ったことを信じられないヘルハウンドは、再び影の中に忍び込む。
見切れるはずがないと決めつけ、今度はタオの影から奇襲を仕掛けようとする
今度ばかりは勝利を確信し、勢い良く飛び出した瞬間……。
【Sky Up】
「セイリングジャンプ!!ハッ!」
自身の"気"を纏わせたタオが上空へ飛び上がり、まるで空を飛ぶかのように滞空し始める。
ヘルハウンドの奇襲を避けたタオは地上にいるヘルハンド目掛けて急降下していく。
「おらっ!らあ!ドラァッ!!」
「ぐぉ!?」
迫ってくるタオに至近距離に持ち込まれて焦るヘルハウンドはで斬りかかるが、逆にライドルトンファーで受け流される。
そしてお返しといわんばかりに回転した勢いを乗せた一撃に殴り飛ばされてしまった。
きつい一撃を受けて倒れこむヘルハウンドを見て、タオは両手に持つライドルトンファーを持ち直すとそれぞれ連結させ、一本の長棒形態・ライドルロッドへと変形。
ようやく体勢を立て直したタイラントが目を向けると、次の瞬間タオの姿が消失……気付いた時にはライドルロッドを引いた構えのタオが上空を舞っていた。
「一撃必殺……ライドル脳天落とし!」
タオが練り上げた『気』のエネルギーを溜めたライドルロッドによる払いの一撃がヘルハウンドへと炸裂。
脳天から体の芯まで炸裂したその一撃を受けて、よろめきながら後ずさと、膝をついて恨み節を口にする。
「バカな……こんな、ふざけたヤツにぃぃぃぃ……!?」
自身を打ち負かした相手が信じられず、ヘルハウンドはそのまま爆炎と化して散っていく。
巻き起こる爆発を背に、タオは一言だけ言い残した。
「こっちはいつでも真剣だぜ……って言ってる場合じゃなかった。早く先輩の元へ向かわないと」
ファントム・ヘルハンドを撃破したタオは、先輩ライダーであるアイアンライダーの元へ向かおうとした。
~~~~~
その頃、アイアンライダーとGポーター。
爆走するGポーターの上でアイアンライダーは襲い掛かってくるモールイマジンの対応に追われていた。
自慢の鉄拳で殴り飛ばし、車体から落としていくが、それでも向かってくる相手に辟易していた。
「こいつら、しつこい!」
「くるよ!」
「いるよ!」
「まだまだくるよ!」
「本当にしつこいっ!」
車体の屋根に降り立ったモールイマジン達をアイアンライダーは一騎に相手どる。
向かってくるモールイマジンの頭部を掴み上げ、別の個体のモールイマジンへ思いっきり投げつける。
だが、3人の時より多い人数に次第に押され始める。
「隙あり!!!」
「しまっ……」
他のモールイマジン達に気を取られて、背後に回った他のモールイマジンからの攻撃を受けようとしていた。
気づいたときにはもう既にモールイマジンの鉤爪が振り下ろされた……。
【Change Up】
「ライドルビュート!」
その直前、遠くから放たれたロープ状の鞭が不意打ちを仕掛けようとしていたモールイマジンを叩き落とした。
いったい何が起きたのか……一瞬戸惑うアイアンライダーの元へ一人の仮面の戦士が現れる。
その戦士――タオはライドルを変形させた鞭形態・ライドルビュートを構えて、残りのモールイマジンを叩き落としながら合流を果たした。
「お待たせしました!」
「その声って……お前、本当にライダーだったのかよ!」
「ハイっす! 仮面ライダータオ! 助太刀します!!」
『だから言おうとしたじゃないですか。龍李君、ちゃんと認可の降りた外部の仮面ライダーだって』
「……すまん」
どうやら本当に仮面ライダーだった模様にアイアンライダーはタオや有瀬に対して申し訳なさそうな表情を浮かべた。
だが当のタオは迫りくるモールイマジンへと目を向け、ライドルビュートを構えてアイアンライダーに叫んだ。
「行きますよ! 先輩!」
「たっく、考え改めないとな……おっしゃあ! いくぞ!!」
タオとアイアンライダー、二人の仮面ライダーは共に並び立ち、迫るモールイマジンを迎え撃った。
タオはライドルビュートを交えて拳や蹴りによる接近戦の攻撃を。
アイアンライダーは自慢の鉄拳によるパンチをお見舞いしながら。
それぞれの得意な戦い方でなぎ倒していく。
共に背中を守りあうダブルライダーに向かうところ敵なし。
数の有利をもものともしない連係プレイにモールイマジンは困惑していた。
「な、なんて強さだ……!!」
「へっ、どうだ見たか? ライダーの恐ろしさってのをな」
「さぁて、一気に決めますか!!」
自信満々にライダーの本気を見せたタオとアイアンライダーはそれぞれの腰のベルトを操作し、必殺技の一撃を放とうとする。
【Charge Up】
タオがタオベルトを軽く操作すると、太極図を象った気のエネルギーが目の前に出現。
そのまま腰を落としながら構えると、太極図は黒と白の二つのエネルギーに分かれて足元へ収束される。
そして最高潮にまで達すると高らかに足場を蹴り上げた。
【鉄・魂・創・作! ハンマーフィスト!】
アイアンライダーが触れた"大槌"のアイコンが変化した、両腕に装着された巨大なハンマー・アイアンハンマーが生成。
勢い良く地面を蹴り上げ、身体を回転しながら突撃していく。
それぞれの必殺技を繰り出さんとタオとアイアンライダーのダブルライダーがモールイマジンへと放った。
「いくぜ、ライダーキック……とりゃあああ!!」
「アイアンハンマーブレイカー! どっせぇぇぃい!」
タオが繰り出した上空から急降下しながら放つ必殺の蹴り『タオ・ライダーキック』。
アイアンライダーが繰り出したアイアンハンマーによる一撃『アイアンハンマーブレイカー』。
二人の一撃を食らって、Gポーターから投げ出されたモールイマジン達は空中で爆発。
モールイマジンの大群を撃破したタオとアイアンライダーはGポーターの上に着地、そのまま固い握手を握り合ったのであった。
~~~~~
数日後、ガーディアンライダーズ本部。
待機室のTVモニターには『食糧問題根絶へまた一歩か? 雨谷博士の記者会見』と映し出されていた。
その様子を見て、ソファーに座っていた尊はココアを啜りながら眺めていた。
「しっかりとしたいい顔になってるじゃねえか。あの時のおどおどしたのがウソみたいだぜ」
「あの人は誰かのために頑張れる人なんじゃないですかね。尊さんみたいに」
数日前の雨谷の姿を思い出す尊の元へ、にこりと笑みを向けながら愛依がお茶請けのお菓子を差し出す。
軽い挨拶を交わした後に口にし、尊はこめかみに皺を寄せて呟いた。
「誰かのために頑張るねぇ……俺はそんな立派な人間じゃねえよ、有瀬」
「そうでもないですよ。色んな尊さんの事を見ているつもりなので、私」
「おいおい……こりゃ立派な人間にならねぇといけなくなるなぁ」
「そうなるまで私や、私達が頑張りますよ!」
「あんがとよ。ところで龍李のヤツ、今日は顔見せてないが……」
「ああ、彼なら……」
互いに向かい合って座りながら、たわいもない話を繰り広げていると、ふと気になるのは先日入った新人ライダー・タオこと小桜龍李。
まだ出会って間もない彼を知らないことが多い。
これから先、どんな仲間との出会いも、どんな敵と遭遇するか分からない。
未来溢れる彼の元にどんなものが待ち受けているのか。
―――同時刻、某所。
そこには一人の男性の元にやってくる龍李の姿があった。
「先輩! ミハル先輩!」
「なんだ、龍李か。どうしたんだ?」
「また聞かせてくださいよ! 先輩と戦った仮面ライダーの話!」
彼の青春はまだ始まったばかり、今回の事件はこれで終わるが物語はまだまだ続いていく。
彼らには様々な出会いと未来があるだろう。様々な困難も待ち受けているだろう。
だが時に迷い、時に足を止めることもあるだろうが決してあきらめはしない。
――――これは『仮面ライダータオ』=桜木龍李が紡ぎ刻む、かけがいのない異世界での日常の一幕である。
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