仮面ライダーディネクト その男、世界の継承者
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後編:時代が望むとき
大ショッカー秘密基地付近、山脈地帯。
そこでディネクトとグランザイラスはぶつかりあっていた。
グランザイラスの振り下ろす片腕の刃にディネクトドライバーで受け止めるディネクト。
かつて11人の仮面ライダー相手に大立ち回りをした上で圧倒したとされるこのクライシス帝国の怪人の強さをひしひしと感じていた。
一旦ディネクトから離れるとグランザイラスは腕から破壊光線、目から怪光線を同時に放つ。
その圧倒的な火力にディネクトがいた場所は爆発し、大きく吹っ飛ばされる。
土煙をかぶりながらもすぐさま立ち上がったディネクトは悪態づく。
「たっく、伝説の10人ライダーさんとRXさんを相手取った実力は今も健在かよ」
『グッハハハハ……』
「ライダー一人を圧倒して面白いか? だが生憎だったな、こっちには受け継いできた皆さんの力があるのさ。味合わせてやるから召し上がれってんだ!」
笑い声をあげるグランザイラスに対し、ディネクトはホルダーから新たなるカードを取り出す。
それを見たグランザイラスは燃え盛る炎の球と化して突撃していくが、その前にディネクトは二枚続けてスラッシュした。
【CALL-RIDE…RYUKI! BLAST!】
「行きますよ、龍騎さん! お熱いやつ、頼みます!」
ディネクトの腕に装着されたのは龍の頭を模した手甲。
――鏡の中の龍騎士・仮面ライダー龍騎の武装の一つ、ドラグクロー。
それを装着したディネクトは襲い掛かってくるグランザイラスの炎の球に目掛けて突き出す。
ドラグクローの口から噴き出した灼熱の炎がグランザイラスの炎の球へとぶつかって相殺。
効果がないとみたグランザイラスは今度は炎の球から竜巻の姿へと変えると、そのまま吹き飛ばそうとする。
それを見たディネクトは新たなるカードを用いて対応をした。
「ダブルさん、あなたのお力、披露しますよ!」
【CALL-RIDE…W!】
続いて発動したのは、緑と黒の色を纏った2つの風。
――二人で一人の探偵・仮面ライダーW、そのサイクロンとジョーカーの力を引き出した風の力。
合わさりあった2色の風を纏うと、ディネクトはグランザイラスの竜巻とぶつかり合う。
ぶつかり合う強風と強風……だが、暫しぶつかり合あった後、ディネクトが打ち負かした。
力でも武装でもこちらの方が上のはずなのに、何故圧されているのか……最強であるがゆえに理性が必要とない怪人でもあるグランザイラスに知ってか知らずか、ディネクトは答えた。
「言っただろ? こっちには受け継いできた皆さんの力があるってな」
『グゥ!?』
「お前が相手をしているのは俺だけじゃない……お前がかつて圧倒した伝説の11人ライダー、そのあとに続いた仮面ライダー達、それらの想いをすべて率いて戦っているんだ!」
『ナッッ!??』
「こちとら及ばずなら諸先輩方に恥じないよう頑張ってるんだ……今更最強の怪人程度で止まれるかよ!」
そう言いながらディネクトは鋭い斬撃を何度もお見舞いしていく。
グランザイラスの無敵の防御力によってダメージは防がれるが、それでもディネクトの剣戟は止めることを知らない。
一撃一撃の重たい一太刀にグランザイラスは少しずつ退いていく。
このまま気取られてはだめだと思ったグランザイラスは口から火炎放射を放とうと口を開く……だがそこを狙って、ディネクトは叫んだ。
「――ツバキ!!」
「ナイスタイミング! てぇーい!」
ディネクトの叫びと共に、彼の背後から現れたのはツバキ。
その手には幾重にも集めた水の塊があり、それをグランザイラスの口目掛けて放り込んだ。
水の塊が口の中へ放り込まれた途端、グランザイラスは苦しみだし、ジタバタと体をもがく。
『■■■■■■■■■■■■ッッ!?』
そした放とうとした炎と水が融合し、内部で水蒸気爆発を起こし……グランザイラスの内部から破壊され、その体はゆっくりと倒れた。
ディネクトはツバキの体をキャッチすると、彼女を横目で見ながら自慢げに言った。
「悪いね、切り札は最後まで取っておくものでね」
「もう、まったく無茶しちゃって……私が来なかったらジリ貧だったじゃないの」
「ま、相手がコイツだしそうだよなぁ……あーなんだ、その……いつもありがとう、ツバキ」
「ふふっ……うん、どういたしまして!」
嬉しそうな笑みを浮かべるツバキと、仮面の下で照れくさそうに感謝の言葉をディネクト/ハルマ。
強敵であるグランザイラスを倒し、安堵する二人……。
だがそこへ、大きな揺れが響き渡り、二人を襲った。
何事かと思えば、大ショッカーの秘密基地だった山が盛り上がり、その中から巨大な手が出現。
そこから盛り上がる鋼鉄の巨体と共に、タイホウバッファローの声が聞こえてきた。
『仮面ライダー! まだ終わりじゃないぞ!』
「ハルマ、あれ!」
「キングダーク……いや違う!? あれは……!!」
山を割るように現れたのは、鋼鉄の魔人。
見た目はGOD機関の大幹部・キングダークの様相をしていた。
全身が金色の装甲に換装された、より禍々しい姿となっている。
その黄金のキングダーク……否、『エンペラーダーク』はタイホウバッファローを要として、動き出した。
まず手始めに、その剛腕をディネクト達へと向けた。
『潰れろ、仮面ライダー!!』
「ハルマ!」
「なぁに、しっかり掴まってろ!」
【CALL-RIDE…SKY-RIDER!】
ディネクトドライバーの電子音声と共に、ディネクトはツバキを連れて大空へと高く飛ぶ。
――青空を飛ぶ戦士・スカイライダー、彼の能力であるセイリングジャンプ。
大先輩スカイライダーから受けついた飛行能力によってエンペラーダークの手に交わしてくディネクト。
彼の傍らにいるツバキは手をかざし、火球を生み出してエンペラーダークへと放つ。
だがその炎は容易に弾かれてしまい、ディネクトは驚きの声を上げる。
「マジかよ、あれ食らって平気とはなぁ。あいつも頑丈すぎるだろ」
「どうするの、このままだと町が蹂躙されちゃう……」
「させてたまるかよ。しっかし、どうしたものか……うん?」
ツバキを抱えながら飛んでいるディネクトはエンペラーダークの攻略法を考えていると、地上にある二つのものを見つけた。
一つは先ほど倒したグランザイラスの亡骸。
そしてもう一つは、――遠くでこちらへと向かってくるジャガイモ少年の姿だった。
その手には漫画用紙に書かれた一枚の絵が握られており、ディネクトの姿を見つけると思いっきり叫んだ。
「ハルマ! アンタ達の言う通り、姉ちゃん達は帰ってきた!」
「少年……!」
「オレは……オレ達は、アンタ達を信じる! きっと、大ショッカーを……そんなデカ物倒してくれるって!!」
少年は叫ぶ。誰かのために戦うヒーローを鼓舞するために。
ヒーローは戦う。愛と平和を謳歌する人々を守るために。
戦う理由はそれだけでいい……ディネクトは愛剣を構えて、傍らのツバキに自信満々で告げた。
「ツバキ、あそこにあるグランザイラスを回収してくれ」
「どうするつもりなの?」
「なぁに、爆弾として利用するまでさ! 大丈夫か?」
「わかった、大勝負、決めてきなさいよ!」
ツバキは笑顔でそう告げた後、ディネクトから離れ、自身の風に乗ってゆっくりと降下する。
ディネクトはエンペラーダークへと向き直ると、2枚のカードをディネクトドライバーへスラッシュした。
【CALL-RIDE…KIVA! ILLUSION!】
「キバさん、あなたのお力、披露します! ハァ!」
ディネクトが急降下しながらディネクトドライバーの切っ先をエンペラーダークの巨躯へと突き刺した。
深々と突き刺さったそれだが山をも超える巨大なボディには大したダメージにはなっておらず、ディネクトを叩き潰そうとする。
だが、じゃらりと擦れる金属音の音と共にエンペラーダークの剛腕は動きを止めた。
何故なら、体中を鎖状の拘束具・カテナによって体の動きを封じられていたからだ。
「どうだ? ファンガイア一族のレアな一品ものよ!」
『クソッ、ライダー貴様ぁ!』
「ツバキ!今だ!!」
ディネクトが叫んだ事を聞いて、エンペラーダークの内部で操縦していたタイホウバッファローは周囲を見渡した。
すると地上にてグランザイラスの体にたどり着いたツバキの姿があった。
ツバキは地面に両手をつくと、息を吸い込んで思いっきり手を上げた。
「いっせーの……せぇっ!!」
――ゴォン。
それと同時にグランザイラスがいた地表が盛り上がり、目にもとまらぬ速度でエンペラーダークへと飛んでいく。
それをディネクトはカテナの拘束を解除、同時にディネクトドライバーを引き抜いてエンペラーダークの体から降りた。
その瞬間、グランザイラスの体はエンペラーダークへと直撃。
無敵の体を持ったグランザイラスによって内部の一部は破壊したままめり込んでしまう。
エンペラーダークに突っ込んだグランザイラスの図……その惨状を間近で味わったタイホウバッファローは『敵の狙い』に気づく。
『貴様、まさか……グランザイラスを!』
それは、グランザイラスに仕込まれている『東京を一瞬で滅ぼす爆弾』でエンペラーダークを破壊する事。
亡骸となった今でもグランザイラスに仕込まれた爆弾は機能を有したままだ。
敵の破壊兵器を以て最大の敵を打ち倒す……その狙いが確かなように、地上へと降り立ったディネクトは一枚のカードを読み込んでディネクトドライバーを上段へと構えていた。
【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DENNECT!】
「いくぜ、豪華絢爛大一番! ――ディメンションダイナミック!」
ディネクトドライバーの刀身に集まるいくつものカード型エネルギー。
それは一枚の光の刃となり、ディネクトは思いっきり振りかざした。
一閃。
その瞬間、エンペラーダークの背後に出現したのは綺麗に斬られた巨大な時空の裂け目。
ディネクトの繰り出す剣での必殺技『ディメンションダイナミック』によって切り裂かれた時空の裂け目はエンペラーダークを飲み込もうとする。
何とか抜け出そうともがくエンペラーダークだが、そこへ放たれたのは……ディネクトが繰り出した二度目の斬撃。
「ハァァァァァァァ!!」
『おのれ……おのれぇぇぇぇ!』
ディネクトの放った二度目の斬撃は、エンペラーダーク……その中にいたタイホウバッファローやグランザイラスを断ち切った。
大きな火花をまき散らしながらエンペラーダークは時空の裂け目へと沈み、彼方の向こうで爆発しようとした瞬間、……時空の裂け目は閉じた。
爆発の振動だけが伝わる中、残されたのはツバキの前に降り立つディネクト。
そして、ヒーローの勝利を見届けた【ジャガイモ】と呼ばれた少年だけだった。
~~~~
その後、森の中を抜け出して、町へと戻っていくハルマ、ツバキ、少年の3人。
ハルマは少年から受け取った絵を嬉しそうに見ながら歩いており、その様子を傍で見ていたツバキは彼に質問をした。
「ねぇハルマ、なんでそんなに嬉しそうにしているの」
「嬉しいに決まっているさ。なんたってこれ以上のお宝はないってやつだ」
「でも、それってもしかしなくても……1号さんだよね? 仮面ライダー1号さん」
ハルマの持っている漫画用紙に描かれているのは、摩天楼の道を走るオートバイとそれを駆る仮面の戦士。
――仮面ライダー1号、原点にして頂点の最初の仮面ライダーだ。
自分達……少なくともハルマにとっては尊敬すべき大先輩でもある彼だが、何故その絵を少年に描かせたのか。
ツバキはそれが不思議でならなかったが、ハルマはやれやれといった表情で教えた。
「知らないのかい? 彼こそはある意味じゃ俺達が尊敬すべき人物さ」
「1号さん以上に? 誰なの?」
「ああ、それはね……」
もったいぶった表情を浮かべながらハルマがツバキに教えようとすると、その前に少年の足が止まる。
何事か、と思って二人がみると、そこには少年の仲間たちと、心配した顔のカナエの姿があった。
少年はぱぁと顔が明るくなると、カナエの名を叫んだ。
「姉ちゃん!」
「――ショウタロウ!」
姉に名前を呼ばれ、少年―――『小野寺ショウタロウ』はかけがえのない家族のもとへと駆け寄っていった。
この町……石森に迫る悪の脅威が消えた今、ハルマとツバキの二人は笑顔でその場を去って行った。
――世界の継承者・ディネクト
――いくつもの世界を巡り、その瞳は何を見る?
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