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有名人の吸血鬼

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第四章

「芥川龍之介という作家がな」
「ああ、羅生門とかの」
「私が生きていた頃より遥かに後の世に出たな」
「そうでしたね」
「ああして血を吸うのはな」
 そうした行いはというのだ。
「夜叉のそれとだ」
「鬼でしたね」
「ああして血肉を貪るからな」
「血もですか」
「吸血鬼の中には肉を貪る者もいるな」
「調べてみますと」
「そうだな、それで私は夜叉になるまではな」
 そこまではというのだ。
「怨みを持っておらんかったしな、未練もな」
「ないですか」
「世を去った時も今もな」
「そうなんですね」
「だからな」
 それでというのだ。
「吸血鬼になっておらん、今お主は大蒜の匂いがするが」
「それでもですか」
「別に苦手でもない」
「そうなんですね」
「これは吸血鬼の種類によるが」 
 業平もこのことを知っていた。
「しかしな」
「それでもですね」
「別にな」
 これといってというのだ。
「私も口にする時があるしな」
「今おられる場所で」
「そうであるからな」
 だからだというのだ。
「日差しを浴びても何ともないし十字架も銀もな」
「吸血鬼は銀も平気ですね」
「中華だと桃がな」
「その桃も平気ですね」
「あちらの世で和歌に詠うこともある」
「六歌仙だけあって」
「左様、餅米も何ともなく」
 こちらもというのだ。
「中華の吸血鬼と違いな、そもそも血が美味いとは全くだ」
「思われないですか」
「あの様なものが美味いのか」
 池山に首を傾げさせつつ言った。
「とても思えぬ」
「そうなんですね」
「どうせあれであろう」
 笑ってだ、業平は池山に話した。
「私の外見が整っているからな」
「吸血鬼になったら面白いって思いまして」
「言ったな」
「それだけです」
「実際は天草四郎は吸血鬼になっていない」
 業平はきっぱりと言い切った。
「今はあちらの世で静かに暮らしている」
「吸血鬼にならず」
「また転生もせずな」 
 そうであってというのだ。
「あちらの神に祈りつつな」
「暮らしていますか」
「そうしている」
 そうだというのだ。
「森蘭丸もな」
「吸血鬼になっていないですね」
「皆あちらの世で静かに楽しくだ」
「そうなんですね」
「私も本来はな」
 業平自身もというのだ。
「あちらの世でな」
「静かに暮らされていますか」
「そうしている」
「そうなんですね」
「人を外見で判断してはならぬ」
 業平は言い切った。 
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