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当社単独

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第二章

「樽よりも瓶だな」
「バーボンを入れるのはですか」
「そうしますか」
「樽ではなく」
「瓶に入れますか」
「樽は隙間がどうしてもある」
 このことを言うのだった。
「だが瓶だとな」
「その隙間がないですね」
「密閉されますね」
「そうなりますね」
「だからその分空気やそこにある余計なものが入らずな」 
 そうなってというのだ。
「酒の質がよくなる、ただ品質をチェックするだけでなく」
「瓶詰めにもして」
「よりよい酒にしますか」
「そうしますか」
「そうしてだ」
 ブラウンはさらに言った。
「手書きの文章と署名を瓶にラベルで貼ろう」
「文章に署名ですか」
「品質はいいと」
「そう書いてですか」
「署名もしてな」
 そうもしてというのだ。
「売ろう、ただ品質を良くして瓶詰めにするだけでなくな」
「それに加えてですね」
「その文章と署名を書いたラベルを瓶に貼り」
「それを宣伝にする」
「そうするのですね」
「そうだ、これは質がいいと確かな宣伝になる」
 まさにというのだ。
「だからな」
「一本一本に貼ってですね」
「売りますね」
「そうしますね」
「そうしよう」
 こう言って実際にだった。
 ブラウンは自分の蒸留所で造ったバーボンの品質管理を徹底させそうして瓶詰にしてさらにだった。
「こう書くんだ」
「このウイスキーは当社単独で蒸留したものであり」
「豊かな味わいと優れた品質は我々が保証いたします」
「これこそ業界一番のものと自負いたします」
「こう書いてだ」
 そうしてというのだ。
「ラベルに印刷してな」
「一本一本に貼り」
「そして売りますね」
「そうしますね」
「そうしよう」
 こう言って実際にだった。
 ブラウンは自分の蒸留所のバーボンをそうして売った、すると。
「へえ、そうなのか」
「このバーボンはいいんだな」
「瓶詰だしな」
「このラベルに書かれていることは本当だな」
「手書きの一文だから説得力があるな」
 飲む者達はそれならと頷いてだった。
 その酒を買った、そうしてだった。
 ブラウンの蒸留所のバーボンは飛ぶ様に売れた、こうして彼は後にアーリー=タイムズという有名なバーボンを生み出すことが出来た。
「いいことをしたな」
「そうですね」
「お陰で飛ぶ様に売れています」
「我が社のバーボンは」
「そうなっています」
「そうだな、質のいい酒を造り」
 ブラウンはそうしてと話した。
「売り方を工夫すればな」
「よく売れますね」
「そうすれば」
「商売の基本ですね」
「その基本を守ることが大事だ」
 ブラウンは笑顔で言った、そうして自分の蒸留所のバーボンを飲んだがそれは実に美味かった。アメリカのバーボンの歴史の一幕である。店に何げなく並んでいるこの酒にもそうした歴史が存在しているのだ。


当社単独   完


                  2024・6・13 
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