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東京紅茶舘

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第三章

「人界に戻って」
「こうしてですか」
「お茶を淹れてるんだよ」
「そうですか」
「紅茶を淹れて百年か」
「極楽で」
「それだけ経つからね」
 イギリスと日本の紅茶に必要な知識に加えてだ。
「それでね」
「これだけの熟練の味なんですね」
「あとジャムやアイスクリームも作れるよ」  
 そうしたものもというのだ。
「明治の頃からね」
「お好きで」
「そうだよ、まあ紅茶は最初は飲むだけだったよ」
「ですが当時かなり高価で」
「日本ではね、しかし今は自分でも淹れて」
「百年ですか」
「そうなれば」
 それだけの年季が経てばというのだ。
「凝ってるしね」
「あれだけの味にもなりますか」
「そうなるね、それじゃあ」 
 彼はあらためて言った。
「その紅茶飲むかな」
「お願いします」
「それでは。しかしミルクティーやストレートティーはよくても」
 その人は笑ってこうも言った。
「実はレモンティーはあまりね」
「お好きでないですか」
「淹れられるけれどね」
 そうであるがというのだ。
「スライスしたレモンを一緒に出して」
「終わりですね」
「うちではね」
 この店ではというのだ。
「そうしているよ」
「そうですか」
「あれはイギリスのものじゃないから」
 だからだというのだ。
「どうもね」
「苦手ですか」
「そうなんだ」
 実はというのだ。
「紅茶は淹れてもね」
「ストレートで」
「ミルクティーは要望あれば」
 客からのというのだ。
「作られるよ」
「とびきり美味しいのが」
「私はね」
「それでもレモンティーは、ですか」
「アメリカだからね」
「そうですか」
「そう、そして」
 その人は福本を見てこうも言ってきた。 
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