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天主閣

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第一章

                天主閣
 織田信長は近江の安土の地に巨大な城を築かせた、名付けて安土城であるが城の普請を命じられ行っている丹羽長秀は主に対して言った。
「何かと驚く造りですが」
「特にじゃな」
「はい、本丸に築かせた」
「天主閣であるな」
「天守閣ではないですな」
「そこが違うのじゃ」
 信長は長秀に笑って話した。
「あの城にあるのはな」
「近頃城に天守閣を設けますが」
「本丸にのう」
「松永殿がそうされて」
「次第に広まっておるな」
「それでお屋形様はですか」
「天守閣でなくな」
「主、ですな」
「それを置くのじゃ」
 安土城にというのだ。
「そうするのじゃ」
「左様ですな」
「そしてじゃ」
 信長はさらに言った。
「言った通りのな」
「造りにしますな」
「そうする、よいな」
「わかり申した」 
 長秀は主君に真面目な声で答えた。
「それではその様に」
「天主閣もな」
「造りまする」
 こう述べて実際にだった。
 長秀は城の普請を進めその天主閣も築いた、信長はそれが完成するとすぐにその中に入り隅から隅まで見回った、そのうえで長秀に言った。
「見事、ではこれからはな」
「この天主閣で、ですな」
「わしは暮らす」
「そうされますな」
「本来御殿や屋敷で暮らすものであるが」 
 それでもというのだ。
「わしはな」
「これからはですな」
「ここで暮らす」
「そうされますな」
「こうした場所こそじゃ」
 信長は長秀に満面の笑みで話した。
「わしが望んでいた場所じゃ」
「平安楽土ですな」
「うむ」
 まさにというのだ。
「安土がその意味でな」
「城、そして」
「天主閣はな」
「その真ん中にありますな」
「そうじゃ」
 こう言うのだった。
「まさにな」
「左様ですな」
「ではこれよりな」
「天主閣の中に入られ」
「暮すとしよう」 
 信長は上機嫌で言ってだった。
 そのうえでその天主閣に入った、そこには日本の神や仏だけでなく耶蘇の神や天使達の姿が描かれていた、その絵達を見てだった。 
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