負けたと思った時
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第一章
負けたと思った時
大友和彦は桁外れの女好きである、資産家であり独身なので遊び放題だ、ナンパや出会い系に風俗と毎日だ。
女遊びをしている、長身で引き締まった身体に形のいい顎にきりっとした目鼻立ちと格好いい形の眉にセットした黒髪はまるでホストだ。
彼は親しい友人にだ、笑ってよく言った。
「彼氏持ち人妻さんには手を出さないからな」
「セーフか」
「そこはちゃんと守ってな」
そうしてというのだ。
「やってるからいいだろ」
「まあな」
「あとな」
こうも言うのが常だった。
「ちゃんとゴムも使ってるからな」
「子供もいないか」
「病気にもなってないしな」
「節度は弁えてるんだな」
「ああ、それで千人もな」
「いったか」
「いったよ、それでこれからもな」
笑顔で語った。
「遊ぶぜ」
「まあ頑張れ」
「守ることは守ってな」
そうしてと言ってだった。
大友は遊び続けた、だが。
ある日だ、井原西鶴の好色一代男の現代語訳を読んでだった、親しい友人にがっくりと肩を落として言った。
「俺はまだまだだった」
「千人達成でか?」
「ああ、凄過ぎたよ」
「好色一代男の主人公はか」
「浮世ノ介っていうけれどな」
それでもというのだ。
「十一歳ではじめてなんだよ」
「はっ!?」
友人は大友の今の言葉を疑った、それで彼に問い返した。
「お前今何つった?」
「だから十一歳でだよ」
「お前それ小学生だろ」
「今だとな」
「昔でもないだろ」
「もう精通してだよな」
「大体その頃だな」
友人も頷いた。
「精通って」
「そうだよな」
「それでその時にか」
「はじめてなんだよ、俺十七だぞ」
「俺二十歳だぞ」
「凄いよな」
「ねえよ」
友人は思わず叫んだ、バーの中で二人でカウンターで飲みながらなので目立った。
「何だよそれ」
「そこからはじまってな」
「まだあるのかよ」
「もうあちこちの人と遊んでな」
「好色一代男だけあってか」
「女の人で三千七百人位でな」
「お前の三倍強だな」
友人はこう返した。
「凄いな」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「男の方もな」
「昔の日本では普通だったな」
「そっちも八百人位だよ」
「凄まじいな、そっちも」
「それで還暦まで遊んでな」
そうしてというのだ。
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