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物語で書かれた歴史

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第一章

                物語で書かれた歴史
 織田信長は苛烈で残虐で傲慢で人を人と思わない、髑髏で酒を飲みそのうえで比叡山も焼いたという、神仏を信じない。
 だがそう言われた信長は天国で行った彼より四百年後に死んだ日本人に仰天してそのうえで言った。
「わし酒飲まんぞ!」
「そうなのですか!?」
「飲んだらすぐに頭が痛くなるわ」
 極端な下戸だというのだ。
「一口位じゃ」
「それはまた弱いですね」
「だから髑髏で酒なぞ飲むか」
「けれど黄金のはしばみの」
「あれは供養じゃ、そんな惨いことするか」
「けれど残虐で裏切った者は」
「その者に都合がありこっちも都合をつける」 
 信長はその日本人に話した。
「それで許すわ」
「そうですか」
「悪人は成敗しても無闇に人を殺してそうなる」 
 怒って言った。
「せぬわ、あと気長に話を聞かねばな」
「なりませんか」
「人はついてこぬ、あと寺はな」 
 それはというのだ。
「焼いておらんぞ」
「比叡山を」
「揉めてちょっと燃えたところはあったが」
 それでもというのだ。
「惨いことはしておらん」
「そうだったのですね」
「あと神も仏もおる」 
 こちらのことも話した。
「織田家はそもそも神主の家だ」
「そうでしたか」
「知らんのか、越前の方のな」 
 そちらのというのだ。
「家だ、それが尾張に移り住んだのじゃ」
「そうでしたか」
「だから安土でもな」
 この城でもというのだ。
「放っておかれておる地蔵や墓石を集めてな」
「石垣にされていましたか」
「結界にした、天主に様々な神仏の絵を描かせたのもな」
「神仏を信じておられて」
「あらゆる神仏の力を集めたからじゃ」
「そうでしたか」
「頼らぬが信じておる」
 信長はやや憮然として言った。
「わしもな」
「そうなのですね」
「全く、えらく勘違いされておるな」
「いや、小説で読んで」
「作り話ではないか、わしは一切じゃ」
「そうしたことはされていないのですね」
「家臣も民も大事にしておったわ」
 そうだったというのだ。
「情なくしてどうして世を治められるか」
「それはそうですね」
「そうじゃ、何を間違えたらじゃ」
「そうなるのか」
「別人ではないか」 
 信長は憮然として言った。
「全く以てな」
「左様ですな」 
 信長と共にいたかつての家臣達も言ってきた、見れば織田家の名だたる家臣達が全員揃ってそこにいる。
「上様がそうした者なぞ」
「根も葉もない話」
「後の世でそうなっておるとは」
「あまりといえばあまり」
「困ったことですな」
「わしは六代様と違うぞ」
 信長は断った。 
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