| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

彼は いつから私の彼氏?

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

10-5

 地元の中学校のグラウンドだったので、私は胸にウサギピョンが描かれている黄色いトレーナーとベージュ色のショートパンツに紺のハイソックスで自転車に乗って出掛けた。

 グラウンドに着くと、智子達女子の姿が見えたけど、今日は彼女達が出るとは聞いていない。丁度、試合が始まったところで、お互い点が入らなくって、でも前半終了前に翔琉からパスが繋がって十蔵がシュートしたら相手にあたって、そのままゴールに入った。だけど、そのすぐ後に、反撃されてゴールを許してしまっていた。

 ハーフタイムの時、数人の女の子がタオルを持って、選手達に渡していたが、翔琉には、あの時見た女の子。翔琉の横でポニーテールの後ろ髪を振りながら、しきりにタオルで扇いでいるのだ。私には見たくない光景なのだ。

 後半にも、翔琉から十蔵にパスが渡って、今度は見事なシュートがゴールネットを揺らしていた。そのまま、終了かと思って観ていたら、終了間際に立て続けに2本決められて、結果2-3で負けていた。

 智子からは、帰りにマクドに行くから、先に行って待っててよと言われて、私はつばの長いキャップの下にタオルを被った恰好で自転車をこぎ出した。朝はジョギングとトレーニングを済ませてシャワーして、この前お母さんが あー言ってくれたので家を出る時には、ルンルン気分だったのに、今は、翔琉のバカと 気分的に面白く無かった。

 とりあえずコーヒーだけで時間をつぶしていた。日曜日のお昼時でテイクアウトやドライブスルーは混雑していたけれど、意外と客席は空いているところがあった。ここは、少し住宅街が離れているし、わざわざお昼ご飯として家族で来るなんてしないのかも知れない。

 最初に智子が一人で来て「あの子等 脚 洗ろーぉたりしてるからな先にきてん」

「ふ~ん そやけど・・・弱いんやなー」

「そー はっきりゆわんとってー それでも 2本決めたヤン」

「うん ゆーたら悪いけどな そのうちの1本はラッキーやったんやんかー」

「・・・水澄とはちゃうんやからー あの子等の前でゆわんよーにな! あれでも、一生懸命 強くなりたいと頑張ってるんやでー ウチの学校 ちゃんとした指導者おらへんやろー なかなかなー」

 そのうち二人がやって来て「お疲れ様 惜しかったネ」と、私は気を使ったんだけど

「ああ 最後 立て続けになー 俺が ボール 奪えんかったからー」

「翔琉 それはしゃーないでー ウチは ディフェンダーが弱すぎるんやー」

「まぁな 2人が1年でキーパーも1年やからなー」

「うん 3年が居らんよーになって 今はしゃーないで」

「二人とも 何 傷をなめ合ってるのよー 何か 食べよーよー」と、智子は少しイラ立っているみたいだった。プレートを前に十蔵が

「なぁ 水澄とこも もう 3年 居らへんねんやろー 1年生はうまいこといってるのか?」

「うん ウチは 春に入部してから、コーチも居るし ほらっ 主力で無い新3年とか2年が居るやろー 皆で指導していくやー 今の時期は 主力が1年の子のめぼしい子を重点的に指導するんやー それに、時々 ウチの高校に進学する3年生も受験勉強無いから教えに来てくれるしなー」

「そうかー やっぱり 伝統ある強豪校はちゃうのー 俺等 メンバーもギリギリやもんなー」

「そんでもなー 春休みに合宿があるんやけど 今の1年の子等も初めての合宿やんかー 地獄の合宿やねー 徹底的に足腰鍛えられるんやー 泣き出す子も居るでー そやけど そこで 皆 一段と うもぉーなるの 私等もそこで伸びたんやー」

「はぁー やっぱり ちゃうなー 俺等とは」

「そーやでー 水澄の脚 見てみぃなー 筋肉隆隆やー 又 ふとぉーなったんか?」

「智子・・・そんな 言い方・・・」

「あのな 水澄は毎日 トレーニングして脚力つけてるんやー そやから あんなステップ出来るんやで 必死の努力してるの! あんた等みたいに ちょっと走ったらヒィヒィーゆうとんのんとちゃうでー コーチとかの問題 ちゃう 目標に向かう姿勢や!」

「智子 厳しいのー」

「でも 智子のゆうてるのおーてるでー 試合中に女の子にタオルで扇がすんやったら もっと 走れって思う ボール取られる位やったら 何で 相手より早よー走って行かへんの? 体力も無いんちゃう?」

「うっ 水澄様のおしゃることは ごもっともでございます」と、十蔵は少しおどけ気味だった。

「なぁ その タオルで扇がしてるって 俺のことか? あれは、ちゃうで あいつが勝手に・・・」

「そしたら 何で その勝手させるんよー! 調子に乗ってるんちゃうの!」と、強い口調だったかも

「水澄 イライラするんはわかるけど あの子は翔琉のことが好きやねん けど 翔琉はいつも相手にしてへんでー ウチも見張ってるしな わかってあげてー そんでも あんた等 仲ええねんなー 水澄 自分のポテトをさりげなく翔琉のとこに置いたりしてなー」

「えへっ 見てたかー 私 あんなん 別に何とも思ってへんでー ちょっと 翔琉にイジワル言って見ただけ 私は翔琉のこと信じてるもん」

「おーぉーおー」と、言っていたのは十蔵だった。でも 翔琉は 何の反応もなかったのだけど、私は彼の手を取って、十蔵達にはわからないようにテーブルの下で繋いでいた。私達は、もう・・・と言う気持ちだったのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧