痩せたスケ番
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第一章
痩せたスケ番
木藤今日子は昔ながらのスケ番である、金髪に染めたロングヘアで濃いメイクに短いセーラー服にくるぶしまでのスカートという恰好だ。通っている高校ではまさにスケ番と呼ばれている。
彼女の高校である八条学園高等部には様々な制服がありそうした制服も髪の毛の色もメイクも特に禁止されていない、だが。
その昔ながらのファッションにだ、クラスメイト達は言った。
「昭和過ぎない?」
「幾ら何でも」
「それじゃあ」
「あたしはこれがいいんだよ」
今日子はクラスメイト達にこう返すのが常だった。
「古いって言われてもな」
「昔ながらの恰好ね」
「スケ番ね」
「如何にもチェーン持ってそうな」
「そうした格好ね」
「そうだよ、それに別に喧嘩もしないしな」
今日子は実はそうしたことはしない。
「カツアゲも万引きもシンナーもしないだろ」
「いや、全部駄目でしょ」
「犯罪じゃない」
「悪いことしたら駄目でしょ」
「スケ番でも」
「授業もちゃんと出て勉強もしてるよ」
実は生活態度は真面目であり成績も悪くない。
「部活も出てな」
「女子バスケ部ね」
「そっちにも出てるわね」
「さぼらずに」
「そうだよ、あたしのはファッションなんだよ」
スケ番のそれはというのだ。
「それでだよ」
「悪いことしないのね」
「喧嘩とか万引きとか」
「授業にもちゃんと出て」
「勉強もしてるのね」
「そうだよ、曲がったことはしたら駄目だろ」
こう言うのだった、そのうえで学園生活を送っていたが。
ある日だ、家で夕食を食べている時に母に言った。家は学園がある神戸市から程近い西宮市にありそこで両親と三人暮らしである。
「また尼崎の祖母ちゃんのとこ行っていいよな」
「いいわよ」
娘がメイクを落とし黒髪にしてショートにした様な外見の母の裕子が応えた。
「行ってきなさい」
「やっぱり祖母ちゃんみたいにな」
「なりたいのね」
「ああ、それで痩せたしな」
母と一緒に夕食のハンバーグを食べつつ話した。
「あたしは」
「あんた子供の頃太ってたけれどね」
「けれど祖母ちゃんの若い頃の写真見てな」
「高校時代のね」
「これだってな」
母にまさにと話した。
「なったんだよ」
「お母さん昔はスケ番だったのよ」
母は笑って話した。
「大阪でも有名なね」
「そうだったよな」
「それでその時の写真見て」
「これだって思ってな、祖母ちゃん痩せてたしな」
「あんたバスケはじめて痩せたわね」
「それでファッションはな」
それはというのだ。
「祖母ちゃんみたいにだよ」
「スケ番ね」
「そうだよ」
「それであんたね」
母は娘にご飯を食べつつ話した、おかずはハンバーグの他にはもやし炒めに豆腐と若布の味噌汁である。
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