遠く離れていても再会出来て
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
この保安官は同じ頃にとある焦げ茶色の短い毛で耳が垂れた雌の中型犬を保護したが。
「マイクロチップをチェックするとですか」
「はい」
事務員が彼に話した。
「ゾーイという娘で」
「十二歳ですか」
「犬としてはお婆さんですね」
「その娘だったんですね」
「それで飼い主に連絡しますと」
そうすると、というのだ。
「今です」
「こちらに来てくれましたか」
「この通りです」
「信じられません」
ミッシェル=アーカヌムと名乗る初老の男がいた、仕事は葡萄農家だという。
「ゾーイが生きていたなんて」
「確かお家のケージの中にですね」
「いてもらっていました、この娘ホーイと共に」
「ワン」
焦げ茶色の短い毛の垂れ耳の中型の年老いた雌犬だ、その犬を見つつ言うのだった。
「二十分程買い物の間家の中にいてもらっていたら」
「その間にですか」
「脱走しまして」
それでというのだ。
「それが十一年前で」
「それからずっとですね」
「捜索願を出しても見付からず」
そうであってというのだ。
「どうなったかと思っていましたが」
「こうしてです」
「見付かったんですね」
「十一年どうしていたかわかりませんが」
事務員はアーカヌムにそれでもと話した。
「この度です」
「見付かったんですね」
「連れて帰られますね」
「当然です」
アーカヌムは笑顔で頷いた、そしてだった。
ホーィそっくりの年老いた雌犬ゾーイと再会した、すると。
「ゾーイ、帰ろうか」
「ワン」
「ワンワン」
双子の妹だというホーイと楽しくじゃれ合ってからだった。
彼女は尻尾を振りつつ家に帰った、保安官はそれを見てから事務員に話した。
「長い間別れていても」
「ああして再会することもありますね」
「そうですね、遠く離れていても」
「再会出来る」
「世の中捨てたものじゃないです」
「全くです」
事務員もまさにと頷いた。
「本当に」
「ではその世の中で」
「生きていきましょう」
「これからも」
二人で笑顔で話した、そして働いていくのだった。そうしてまた生きもの達を助けていくのであった。
遠く離れていても再会出来て 完
2025・1・20
ページ上へ戻る