金木犀の許嫁
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第四十九話 忍者の水泳その十
「推理ものに憧れるなら」
「探偵はしない方がいいわね」
「そうです、ですが忍者は探偵にも向いています」
そうした仕事だというのだ。
「ですからそちらに進まれる方もおられます」
「そうなのね、じゃあ佐京君も」
「あまりなるつもりはないよ」
佐京は夜空に答えた。
「浮気調査とか好きじゃないから」
「ああいうのって人のドロドロしたもの見るから」
「そう、だから」
それ故にというのだ。
「あまりなりたくないんだ」
「佐京君の性格としてはそうよね」
「だから」
それでというのだ。
「他のお仕事に就きたいよ」
「忍術を使っても」
「うん、高い場所でも働けるし」
「じゃあ建設業とか高層ビルの窓拭きも」
「出来るよ」
夜空に即座に答えた。
「安全第一でね」
「出来るのね」
「うん、工事現場でもね」
「高い場所で働けるのね」
「そうだよ、アルバイトじゃないけれどやったことあるよ」
微笑んでだ、佐京は夜空に話した。
「そっちもね」
「そうだったの」
「命綱付けて」
「命綱は欠かせないわね」
「うん、そしてね」
そのうえでというのだ。
「やっていっているよ」
「そうなのね」
「そして」
佐京はさらに話した。
「アルバイトしようと思っても」
「窓拭きとか出来るのね」
「そうなんだ」
実際にという返事だった。
「工事現場でもね」
「それが忍者なのね」
「うん、だからね」
それでというのだ。
「いざという時は」
「窓拭きとかするの」
「するよ」
「私には無理ね」
夜空は佐京のそうした話を聞いて自分のことを振り返った、そうしてそのうえでこう言ったのだった。
「そうしたことは」
「高い場所で働くことは」
「肉体労働もね、多分ね」
「出来ないんだ」
「運動好きじゃないし」
だから先程も泳がず浮き輪の上にいたのだ。
「体力もね」
「ないんだ」
「家事やお料理が出来ても」
それでもというのだ。
「けれどね」
「それでもなんだ」
「肉体労働は無理だから」
自分で言うのだった。
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