実は高級車

　　　　　　　　　　　　　　　　実は高級車
　遠藤美祐は黒髪をボブにしている、穏やかな優しそうな顔立ちであり背は一五二位だ。高校生でそろそろ発育が目立ちだしている。左の前髪の黄色いヘアピンが目立つ。
　ある日高校帰りにだ、ある車を見て言った。
「あの車いいわね」
「えっ、あの車そんなものじゃないわよ」　
　クラスメイトで同じバイト先ゴルフ場に通っている天野佳代が応えた、黒髪を後ろでまとめていて太く濃い眉を持つかまぼこ型の目の顎の形のいい娘だ。背は一六〇程で見事な太腿が目立つ。二人共青いセーラー服を着ている。
「フェラーリじゃない」
「あのイタリアの」
「そうよ、凄い車よ」
　こう美祐に言うのだった。
「よく持ってるわね」
「私車のことはね」
「わからないのね」
「うちにもあるけれど」
　両親が乗るそれの話もした。
「軽四でね」
「日本の」
「車は燃費がよくて壊れなかったら」
　それでというのだ。
「いいわね」
「そうした考えね」
「駄目かしら」
「駄目じゃないけれどね」　
　それでもというのだ。
「まああの車はいいどころかね」
「凄い車ね」
「そうだって覚えておいてね」
「わかったわ」
　美祐は佳代の言葉に頷いた、そうしてだった。
　一緒にバイト先に行ってアルバイトに励んだ、そしてある日のことだ。
　二人は休日にアルバイトに来て駐車場にある車を見た、美祐はその車を見て一緒にいる佳代に対して尋ねた。
「あの車だけれど」
「えらく古い車ね」
　佳代もその車を見ている、そのうえでの返事だ。
「これまた」
「そうよね」
「何十年も前から」
「滅茶苦茶古いわね」
「車検よく通るわね」
「そこまで古いのね」
「ええ、よく乗っているわね」
　錆すらあっても不思議でなさそうな車を見て言った。
「ここまできて」
「そうよね」
　二人でこんな話をしてだった。
　ゴルフ場に入ってアルバイトに励んだ、そして昼休みにだ。
　それぞれの弁当を食べる時にゴルフ場の先輩にその車の話をすると。
「あの車プロゴルファーの小尾小次郎さんの車よ」
「あの世界で活躍している」
「このゴルフ場に時々来られる」
「今日も来ておられますね」
「あの人の車ですか」
「そうよ、それであの車はね」
　先輩は二人にさらに話した。