紋章持ちの転生者は世界最強
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プロローグ
「草薙信也さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなってしまいました。短い人生でしたが、あなたの生は終わりを告げてしまいました」
周囲の景色が真っ白の部屋の中で、俺は唐突にそんなことを告げられた。
突然のこと過ぎて意味不明だ。部屋の中には小さな事務机と椅子があり、そして、俺が死んだことを告げてきた相手はその椅子に座っていた。
もしも、女神と呼ばれる存在がいるとすれば、恐らく目の前にいる女性のことだろう。テレビのアイドルや学園のマドンナと呼ばれる人たちと綺麗さのレベルが異なる。別にアイドルや学園のマドンナが綺麗じゃないというわけではない……目の前の人が人間離れした綺麗さを誇るだけだ。
透き通る銀色の長い髪。年齢は恐らく俺の少し上くらいだと思う。身体は出過ぎず、足りな過ぎな完璧なモデル体型な躰。
水色の瞳をじっと俺のことを見つめて来ていたが、今の状況をあまり正確に把握できていない俺はこの場所に来る前の記憶を思い出す。
◯●◯
学校帰りに俺こと草薙信也は幼馴染の雪城美鈴と共に本屋に来ていた。俺は『呪術廻戦』という漫画雑誌のジャンプで連載されている漫画を買いに。美鈴はタイトルはやく知らないが異世界ものの漫画を買うようだ。
俺と美鈴は買ったものを鞄に入れて店の外に出て帰路を歩いていたら、可笑しな動きをしていた男が懐からナイフのようなものを取り出してこちらに向かって走ってきたのに気が付いた時に俺は咄嗟に美鈴を突き飛ばしていた。
そして予想通り美鈴が立っていた場所。つまりは俺が今立っている場所にナイフを持った男が突っ込んで来たばかりが、俺の腹にナイフを突き刺しってきやがった。
俺は意識が朦朧する中で美鈴の安全を最優先にするためにナイフで刺しってきた男を美鈴とは違う場所に蹴りを叩き込んで移動させる。すると、ナイフの男は一瞬だけ美鈴を見て舌打ちをして立ち去っていた。
俺は美鈴が無事なことを喜び、そのまま意識が失った。
◯●◯
俺は自分でも驚くほどに落ち着いた気持ちで、神様ぽい人に静かに尋ねた。
「1つだけ……聞いても良いですか?」
俺の質問に女性はこくりと頷いた。
「良いですよ」
「美鈴、俺が庇った幼馴染の女の子は無事ですか?」
命掛けで美鈴、幼馴染の女の子を助けたのだ。これで美鈴も死んでいたなんてことが起きていたら、無駄死にだ。
「貴方に突き飛ばされたことで擦り傷はありますが大した怪我はありませんよ」
俺は美鈴が怪我したことに対して罪悪感を抱くが、美鈴自身は無事だったことに安心した。
「本来であれば貴方は死ぬことは無かったのですけどね」
「はい?どういうことですか?」
「あなたのあの死はこちら側で起きた問題によって引き起こされてしまった事件なのです」
どうやら神様側で起きた問題とやらのせいで俺は死んでしまったようだ。まあ、前世では漫画を読んでるか、美鈴と雑談を話ってるしかやることが無かったからな。
「ちなみに俺が死んだ原因って聞いても良いんですか?」
「はい。貴方の死は私の部下である下級神の過失によって起きてしまった事態なのです。誠に申し訳ありません」
女神様に謝れても別に幼馴染の美鈴も俺の死に巻き込まれて死んでしまったというのなら、文句の1つくらい言ってたかも知れないが……犠牲者は俺1人だけだ。なら特に文句はない。
「それでその神様の過失で死んでしまった俺はどうすれば良いんですか?」
「怒らないのですか?」
「文句言っても生き返るわけじゃないし。あの行動によって死んだことに後悔とか特に無いので。こんな俺と一緒に居てくれた幼馴染や俺をここまで育ててくれた両親には悪いとは思います。だけど未来になりたいビジョンとかも無かったので、死んだって聞かされても『あ、そうなんだ』という感想しか抱いて無かったので」
俺の発言を聞いた女神様は悲しそうな表情を浮かべる。
「そのような悲しいことを言ってはいけません。どのような生にも必ずしも価値あるものなのです。そもそも本来の貴方の定められた未来ならばーーー」
「神様待って貰えますか。そこから先はif、つまりは訪れたかも知れないけど、今の俺からすれば関係の無くなった話しです。それよりも俺はこれからどうなるのかを聞きたいです」
俺の静止の言葉を聞いて女神様はなにやら言いたそうにしていたが、言葉を呑み込んで改めて口を開く。
「草薙信也さんがそう仰るのなら……では、草薙信也さんには並行世界。つまり、貴方の感覚的に異世界に分類される世界に転生していただきます」
「転生とはまたテンプレみたいなお話しですね」
「そして転生する際に、お詫びとして少しだけなら草薙信也さんの要望を聞き入れましょう」
「つまり、神様転生の作品ジャンルでよくあるチート能力を貰えるってことで、問題ありますか?」
「そうですか……それなら……」
俺の頭の中に2つの作品を思い浮かべるが、その中でもお気に入りの作品を口にする。
「Infinite Dendrogramに登場するプレイヤーのみ所持するエンブリオのマスターになりたいです」
「エンブリオの……マスターですか?」
「はい。ゲーム世界のシステムじゃない、デジモンみたいに現実世界で共に言葉と心を通わせられるマスターになりたい」
この場に誰かが居たら大爆笑される願望だろうということは分かっている。それでも、あの作品と出会ってから創作小説を作成したりして、夢想していた夢に一途の望みに賭けることにした。
「エンブリオというのは貴方の世界の創作作成のゲーム世界のシステムの1つである特殊システムのエンブリオのことでよろしいですか?」
「はい、よろしいです」
「ふむ………………特に問題は無さそうですね、宜しいでしょう」
「よっしゃぁっ!!」
女神様から俺の要望が通ったことに思わずガッツポーズを取ってしまった。そんな俺を女神様が優しい笑みを浮かべていた。
「他に何か要望とかありますか?容姿や才能なども多少は変更することはできますが?」
「容姿については今の容姿を引き継ぎで構いません。才能も今の俺のままで問題ありません」
他に要望とかめ無いしな。エンブリオのタイプカテゴリーを予め設定しておくのは面白くないしな…………あ、そういえば、俺を死なせた神様のどうなるか気になるな。
「あの、1つ気になることがあるんですが……」
「なんでしょうか?」
「今回、俺を死なせてしまった神様についてなんですが……」
「彼女については然るべき厳正な処罰を受けさせるのでご心配なさらず」
女神様が彼女と言ったということは、俺を死なせた神様も女神様なのかもしれないな
「ちなみにその処罰の内容を聞いても良いですか?」
「本来は人に神の事情を伝えるべきではないですが、草薙信也さんはこちらの不手際で死なせてしまったの特例で教えますね。本来であれば人の運命を狂わせることなどあってはならないことです。処罰としては音も光もない暗黒空間に最低でも数万年の期間は幽閉が、妥当でしょうね」
「ッ!?」
俺は思わず息を詰まらせてしまった。なんだその処罰は、俺を、ただの高校生を死なせた位でそんな重すぎる罰は!?
「あ、あの!俺は今回のこと気にしてませんのでそんなヤバすぎる罰は止めてください!」
「信賞必罰。例え過失とはいえ罪を犯した者に対して罰を与えなければなりません」
ああ、もう!俺なんか死なせてしまっただけで、そんなクソ重すぎる罰を受ける女神様がいると思うと、のうのうと転生していられるわけないだろうが!
「それなら、女神様!先ほど要望を変更します!今回、俺を死なせてしまった女神様の可能な限りの減刑をお願いします!」
俺たち人間の生なんて100年前後。その人間の中でも未来のビジョンを思い浮かべていないヤツを死なせてしまった程度で最低でも数万年も気が狂いそうな場所で幽閉なんて、どう考えても割に合うわけがない!
「草薙信也さん…………それは偽善ですよ」
「俺がしてることが偽善なことなんて分かってますよ!これは確かに自己満足だ!その女神様が辿るかも知れない結末に哀れみから来る一時的に感じる感情なのかもしれない、後で恐らく後悔する、でも、だけど、ほっとけないっておもっちまったんだから仕方ないだろ!」
俺は思ったことを感情のまま叫ぶ。女神様は静かに口を開く。
「先ほども言いましたが、彼女は草薙信也さんの未来を……人生を奪いました。それに対する罰は必要です」
「確かに俺を死なせた女神様が過ちを犯しました。だから罰を与えるというのは仕方ないと思います。でも、だからといって俺なんか死なせた位で暗黒空間で数万年も幽閉は重すぎるって言ってるんです!」
「本当にそう思いますか?あそこで貴方が死ななければ草薙信也さん、貴方は幼馴染の雪城美鈴さんと恋仲になって様々な研究をした結果、人類の科学レベルを数段引き上げた上に地球のエネルギー問題を解決した立役者になったことを皮切りに幸福が舞い込み、幼馴染こと本妻の雪城美鈴さんを含めた美女を侍らせ、最後には世界屈指の大富豪になるはずだったとしてもですか?」
女神から語られた内容は本当かどうかなど関係ない。確かに惜しいし、俺を死なせた女神様にマイナスの感情が一切ないか?と問われれば完全にゼロではない。俺を死なせたことは恨んでない、だが、美鈴の目の前で死んでしまったことが心残りだからだ。だけど……
「確かに惜しいと思います…………」
「そうですよね?そんな貴方を死なせてしまったのが彼女の責なのです。故にこの処罰は妥当だと思いませんか?」
「だけど、俺はその女神様が次はミスしないことに賭けたい。だから彼女の罰の減刑を再度お願いします」
俺は地面に膝を付いて頭を下げる。
「………まったく…………頭を上げてください。貴方のそのまっすぐな意思に免じて彼女の罰に対する処罰をできる限り減刑することをお約束します」
「女神様……ありがとうございます!」
「それから、貴方が最初に頼んだ要望も叶えましょう」
「え、良いんですか?」
「はい。貴方に伝えた未来のお話しは私がでっち上げた嘘なので。貴方の本気度を確かめさせて頂きました」
「でしょうね。ま、仮に生きていてもそんな豪運なら既に恋人を作れてるはずですからね」
俺は苦笑いを浮かべる。
「今回のことに対するお詫びとして最初の要望の他に幾つか追加で加護を送りますので」
「そんなことをして大丈夫なんですか?」
「はい。問題ありませんよ、では、来世は幸多からんことを」
女神様がそう呟くと視界が暗転していく。これが転生するということなのだろう。
「女神様……感謝します」
俺はなんとか意識を繋ぎ止めて女神様に感謝を述べて意識を手放す。
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