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八条学園騒動記

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第七百八十一話 もてるからこそその八

「六十になると」
「長生きか」
「そして七十になると」
 そこまで生きると、というのだ。
「古稀だよ」
「古来稀か」
「そうだったんだ」
「成程な」
「今じゃ七十なんてね」
「まだまだこれからだな」
「七十でお亡くなりになったら」
 それならというと。
「早死にだよ」
「それも結構な」
「元気に」 
 そうであってというのだ。
「背筋がしっかりして働くことも」
「普通だな」
「そうだけれどね」
 それがというのだ。
「当時はね」
「滅多にいなかったか」
「だから徳川家康さんも」
 江戸幕府初代将軍であった彼もというのだ、日本だけでなく連合全体で優れた政治家であり武将だったと言われている。
「当時はかなりの長生きだってね」
「言われてたんだな」
「それで還暦間際に」
 関ヶ原の直前のことである。
「歳のことを言ってたんだ」
「もうお爺さんだってか」
「そうね」
「そうなんだな」
「最期までぼけないで」
 そうであってというのだ。
「頭も冴えていたけれどね」
「それで優しかったんだな」
「そうそう、凄くね」
「女好きでも質素でな」
「いい人だったんだよ」
「豊臣家も滅ぼすつもりなかったな」
「大坂から出てもらったら」
 即ち大坂城からだ。
「二重三重に監視の目はつけても」
「それで終わっていたな」
「だから秀頼さんの息子さんも」
 その人物もというのだ。
「処刑したことにして」
「実は助けてたんだな」
「そのうえでお大名でね」
 豊臣秀吉、秀頼の父である彼の正室北政所ねねの実家木下家の分家としてだ、このことはこの時代では定説になっている。
「残らせてたんだよ」
「そうだな」
「だから案外以上にね」
「優しい人だったな」
「締めるところは締めたうえでね」
「無駄に殺生はしなかったな」
「そしてその考えがね」 
 まさにというのだ。
「江戸時代の日本にね」
「根付いたんだな」
「だから江戸の街でもね」
 幕府の締め付けが及ぶこの街でもというのだ。
「取り締まりはあっても」
「死刑にはならなかったか」
「手枷されたりしても」
 それでもというのだ。
「死罪にはね」
「ならなかったか」
「刑罰も穏やかで」
 江戸時代の日本全体に言えたことである。
「しかも軽くされるのが普通だったから」
「判決が出てもか」
「だから死罪ってなっても」
 判決、幕府の評定所が出したそれもだ。 
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