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八条学園騒動記

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第七百八十一話 もてるからこそその二

「あるかもね」
「そうなんだな」
「うん、ただね」
 ベンはそれでもと話した。
「江戸時代にそんな作品を書いた」
「井原西鶴さんは凄いか」
「とんでもない才能の持ち主だよ」
「そう言うしかないな」
「しかもそれが発行出来て」
 そうしてというのだ。
「発禁処分にならなかったことがね」
「想像を絶するな」
「まあ日本って発禁になっても」
「江戸時代でもか」
「よく言論弾圧があったって言われてたらしいけれど」
 二十世紀後半に日本を覆ったマルクス史観ではそうなっていた、江戸時代は搾取と弾圧の暗黒時代だったというのだ。
「実際は幕府の締め付けは忠臣蔵でもね」
「今は連合中でやってるな」
「あれ幕政批判でもあるから」
「そうなのか」
「幕府が浅野内匠頭さんを一方的に処罰したって」 
 その日のうちに切腹させたそのことがというのだ。
「どうかってね」
「批判しているのか」
「歌舞伎だと室内で切腹していて」
 仮名手本忠臣蔵である、浄瑠璃でもある。
「大石さん来るまで時間あったから」
「その設定がか」
「もうね」
「幕政批判か」
「けれどその人達を書いていなくて」
「別の人達か」
「吉良さんは高師直だから」
 足利尊氏の執権だった人物である。
「高家筆頭でね」
「高さんだからだな」
「もうね」
「丸わかりだな」
「浅野家は塩谷家だけれど」
「浅野家は塩で有名だな」
「そこでもわかるし」
 そうであってというのだ。
「家紋なんかね」
「そのままか」
「もう誰が見てもね」
 それこそというのだ。
「丸わかりだけれど」
「江戸時代じゃないからか」
「室町時代だから」
「よかったんだな」
「幕府は直接批判しないとね」
 例え忠臣蔵の様に露骨なものであってもだったのだ。
「何も言わなかったから」
「それは凄いな」
「明治時代だってね」
 この時代もというのだ。
「新聞は創作の話まで書き放題だったよ」
「言論弾圧どころかか」
「それにね」
 ベンはさらに話した。
「弁論でも傍に警官の人がいて」
「それでか」
「まずいこと言いそうになったら」
 その時はというと。
「止めていたし」
「思っていても言うな、か」
「言わないならいいってね」
「そうなっていたのか」
「言ったら捕まえるんじゃなくて」
「言うと捕まえるから言うな、か」
「そうだったんだ」
 明治の頃もというのだ。 
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