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幸福侵害

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第二章

「奪う、覚悟するのだ」
「いや、今世の中の大変なことも気になってるし」
 今挙げたこと全てがというのだ。
「僕の家今厄介者が来てるし」
「厄介者?」
「叔父さんがね、働かなくてね」
 その不幸のことも話したのだった。
「図々しくて尊大で人の家に月一回行くと言って急に来てお邪魔しますも言わないでふんぞり返って来て」
「随分なおっさんなのだ」
「只で大飯食ってお風呂入って寝て人の部屋に勝手に入って本漁って」
「そこまでするか」
「一泊して朝飯も大飯食って親からお金貰って帰る」
「そんなおっさんが今家にいるとは難儀なのだ」
「それで物凄く不快だから」
 それでというのだ。
「幸せを奪うと言われても」
「幸せを感じていないのだ?」
「あまりにもむしゃくしゃして」
 それでというのだ。
「今まで憂さ晴らしでゲームしてたんだ」
「成程なのだ」
「しかもその叔父さんを甘やかす祖母ちゃんがうちにいるけれど」
 西はさらに話した。
「七十過ぎてちょっとしたことでヒス起こして喚き散らしてものを外に投げまくるんだよ」
「ヒステリー持ちか」
「物凄く我儘で家事も自分以外の生きものも大嫌いで遊んでばかりだよ」
「七十過ぎでそれはないぞ」
「それがあるんだ」
 自分の祖母はというのだ。
「人が胡桃食べてもプラモ作っても暴れるから」
「無茶苦茶なのだ」
「そんな人が家にいて」
 家族とは呼ばなかった。
「それでその叔父さん来たらべたべた甘やかすし」
「幸せじゃないのだ」
「はっきり言ってね、だから今の僕に幸せって」
「ないのだ」
「まあ生きてるしこうしてゲーム出来て」
 西はこうも言った。
「ご飯食べられてお風呂も入られて自分の部屋もあるよ」
「そうしたことは日本ではとりあえず普通なのだ」
「そういうのは奪って欲しくないな」
「普通は普通なのだ」 
 これがアオイの返事だった。
「だからなのだ」
「そういうのには何もしないんだ」
「ゲーム終わったら寝るのだ」 
 アオイは西にこうも言った。
「そうするのだ」
「そのつもりだよ、しかしね」
 それでもというのだった。
「僕そんなのだから」
「今は幸せを感じていないのだ」
「とてもね、その僕から幸せを奪うって」
「ううむ、無理なのだ」  
 アオイは左手を自分の顎に当てて述べた、右手はフォークを握ったままだ。
「それではなのだ」
「そうなんだね」
「そうなのだ」
 まさにというのだった。
「幸せを感じていない奴からは幸せは奪えないのだ」
「幸せって感じるものなんだ」
「そうなのだ」
 アオイははっきりとした声で答えた。 
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