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永遠の宴

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第二章

「この様なことになるとはな」
「思いませんでしたな」
「夢にも思わなかった」
 まさにというのだ。
「幕府が倒れるなぞ」
「執権家の方々もことごとくとは」
「誰が思う、しかし」
「しかし?」
「まだ執権家の方で残っておられる方はおられるか」
「相模次郎様が」
 家臣はすぐに言った。
「どうやら」
「そうか、ではだ」
 彼はその話を聞いて言った。
「すぐにだ」
「次郎様をですね」
「お救いしてな」
 そうしてというのだ。
「盛り立てよう」
「そうされますか」
「そしてだ」 
 そのうえでというのだ。
「幕府をな」
「もう一度ですね」
「そうしよう、我が家はだ」
「諏訪家は」
「この信濃にあってだ」 
 そうしてというのだ。
「幕府にはよくしてもらったからな」
「そのご恩にですね」
「奉公で以てな」
「お助けしますね」
「そうしよう、よいな」
「わかりました」
「そうする、しかし」
 その彼、諏訪頼重は言った。
「まさかまことになるとはな」
「時の執権様が言われたことですね」
「鎌倉が焼け落ちてな」
「幕府が滅び」
「宴もな」
 これもというのだ。
「永遠でなくなるとはな」
「まさに諸行無常ですね」
「当家は神職であるが」
 諏訪家はというのだ。
「しかしな」
「御仏の教えも知っています」
「それで思うが」
「まさにですね」
「そうだ、永遠の宴はな」
「望んでもですね」
「ならないものだな」
「左様ですね」
「幕府は滅びるとは思っていなかった」
 頼重にしてもだ。
「そうした気配はだ」
「ありませんでした」
「多少傾いていてもな」
「多少程度で」
「帝がどうされてもな」
 それでもというのだ。
「滅びるとは思わなかった」
「しかしそれがとは」
「世の中はわからぬな」
「左様ですね」
「だが永遠の宴は望むもの」
 頼重はこうも言った、細面の整った顔で。
「だから次郎様を盛り立て」
「そうしてですか」
「今度こそな」
「永遠の宴をですな」
「果たそうぞ」
 こう言ってだった。
 頼重はすぐに焼け落ちた鎌倉に向かい北条時行を密かに救い出した、そのうえで彼を助けたのだった。
 そしてその時行の血が戦国時代に残り後北条氏になり江戸時代が終わるまで大名としてあったという、永遠の宴はならずとも長く続いたのかも知れない。


永遠の宴   完


                   2024・8・16 
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