小さくてもお姉ちゃん
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第二章
「猫、犬もな」
「十歳になれば」
「還暦なんだ」
それ位の年齢になっているというのだ。
「もうな」
「速いわね」
「そうだろ、人間とはな」
「また違うから」
「そうなるんだ」
「そういうことね」
「そしてな」
それにとだ、文太はさらに話した。
「そのことはちゃんとな」
「頭に入れることね」
「犬と一緒にいるならな」
「すぐ大人になる」
「ああ、小さくてもな」
ふわりの小さな体を見つつ話した。
「大人なんだ」
「実は」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「それがわかっていなかったのがあいつ等な」
「あの人達ね」
「俺達の前にふわりを飼っていた」
「そうよね」
「もうずっとな」
それこそというのだ。
「ふわりが小さいからな」
「おもちゃだって思っていたわね」
「喋るな」
「大人になっているとか思わないで」
「心があるのさえわかっていなくてな」
百合子に実に忌々し気に話した。
「それでだ」
「おもちゃにしか思っていなくて」
「産んだ子供達ですらそうで」
「飽きたらほったらかしね」
「それで捨てたんだ」
そうしたというのだ。
「何でもない感じでな」
「そうしたわね」
「ふわりは大人になっていたが」
「あの二人は子供のままだったわね」
「心がな」
「だからなのね」
百合子はあらためて言った。
「犬のそうしたこともわからなかったのね」
「そうだ、大きさじゃないんだ」
「小さい種類の子でもね」
「ちゃんと成長してな」
「大人になるのね」
「身体もそうでな」
「心もね」
こちらもというのだ。
「なるのね」
「そうだ、だからふわりはな」
「もう立派な女性ね」
「母親位のな」
「お姉ちゃんであって」
「そうだ、あの娘達にとっては歳の離れたな」
「優しくて面倒見のいい」
そうしたというのだ。
「いいお姉ちゃんね」
「そうだ、だから今度あの娘達のところに行ったらな」
その時はというのだ。
「ふわりも一緒に連れて行ってな」
「あの娘達と一緒にいさせてあげて」
「立派なお姉ちゃんとしてな」
「頑張ってもらうのね」
「ああ、そうしような」
「わかったわ、ふわりもそうしたいわね」
「ワン」
ふわりは顔を向けて明るい声で鳴いて応えた、その彼女を見て夫婦もまた笑顔になったのだった。立派な大人である彼女を。
小さくてもお姉ちゃん 完
2024・12・23
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