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故郷は大空にあり

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第二章 ミッションEX : 肩にある傷
  第十三話 通信が途絶えた。

 
前書き
「ああ、俺長期休暇とるから。その間は別の提督が来てくれるからね。よろしく」

「え?えぇ!?、まぁ、分かりました。」 

 
提督。執務室の部屋、消し忘れてるぞ。消しとくか?
 
んーん。大丈夫。まだ私がいるもん
 
……まだ仕事をしているんだな
 
一生懸命なのは勿論良いことだけど、度が過ぎるといずれ身体に支障をきたすぞ?
 
大丈夫。今すごい順調で、寧ろ気持ちがいいよ。成長している気がする!
 
……ならいいけど、駄目だと思ったらすぐ寝ろよ
 
提督は倒れる。私達は仕事で負担が増す。私は仕事とみんなの説教で負担が増す。
全体は安定しない。今言った通り、負の連鎖しか起こらないからな
 
そうだね……。じゃあもう少し頑張ったら寝ようかな!
 
これは、昨日行われた新しい提督とF/A18の会話だ。

そして現在、既に鎮守府には朝が訪れていた。
 光で照らされる鎮守府の執務室には、一体のゾンビが出来上がっている。
 
 
「あ、あう……」
 
 
 勿論これは比喩である。正しく言えば、
着任してすぐの人間が背負う量じゃない仕事を一身に受け、身も心も疲弊し切った提督だ。
 
 
「ゔぁぁ〜〜」
 
 
 乙女が出してはいけない声を出し、それでも指だけを動かし続ける。
 しかし打っているのはキーボードではない。PCの画面だ。
 机に突っ伏したまま、提督は腕を上げて指を動かしていた。
 
 
「……目を覆いたくなる光景だよぅ」
 
 
 鎮守府の執務室に入ってきたF/A18は、その惨状を見て溜め息混じりに呟く。
 昨夜、昼に支給されたばかりの端末を用いて、無茶をしないよう伝えた筈だが提督には伝わらなかったようだ。
 
 
「提督。起きて。そしてちゃんと寝て?」
 
 
 提督の側面まで移動し、肩を揺する。提督は身を起こしたかと思えば、F/A18の持ってきた枕に真正面からもたれかかった。
 
 
「おぉ〜。このキーボード、触り心地いい……でも何でカタカタ言わないの〜?」
 
「枕だから…なぁ、夢の中でも仕事なんて、労働者の鑑だねぇ全く……」
 
 
F/A18は提督を起こすことを諦めた。だが彼女の今の状態は、休んでるとも言えない。
そっと提督を椅子に座らせ、背凭れに体重を預けさせる。
そのうちに、ちゃんと睡眠を取れるよう折り畳まれたふわふわのタオルを机の上に置いて、
提督の顔を乗せる。書類は勿論避難させた。
 
両手は動かせないよう、菱形を作るようにタオルの下に敷かせる。
最後にソファに置いてあった毛布をかければ、眠れる環境の完成だった。
 
 
「ん〜……すー……すー……」
 
「よし。ゾンビ鎮圧だ!」
 
(なんか…私も眠くなってきちゃったなぁ…)

「でも、今私がやらないと終わらないから」

呆れたように言ってから……黙ってF/A18はその束達を自分の机に持っていく。
 
 
「ハァ……まずは書類整理からするかなぁ」
 
 
ワークフローの中に提督が必要なものと、そうでないものを分け、前者は彼女の机に戻して、後者は自分の机に残した。
海のように広く見えた書類が、二つのビルに様変わりしていく。
それでも量は多いのだが終わりが見える分、気が楽だ。
 
 
「……全く。本当に手の掛かる提督だ」
 
 
F/A18は黙々と、仕事に取り掛かった。

提督が目を覚ましたのは夕方であった。日は落ちて、空は薄いオレンジ色に染まっている。
執務室の窓から見えるその光景に、綺麗……と思った後に今の時間帯に気付き、提督は跳ね起きた。
 
 
「うっっっそ寝坊した!!?」
 
 
 やらなきゃいけない仕事が沢山残っている筈だ。
 そう思い部屋を見渡し……。
 
 
「……あれ? こんなにさっぱりしてたっけ」
 
 
海のように広がっていた、書類の束が無くなっていることに気付く。
自分の傍の床に毛布が落ちていること。先程自分が寝ていた所にある、ふわふわのタオル。
机の端に置かれた、前と比べて少ない書類の束。
そしてF/A18の机の上にある、整理された書類の山。
 
 
 
「まさか寝ている間に、F/A18が……?」
 
 
 そういえば、そのF/A18の姿が見えない。
 自分は大人だから耐えられたが、彼女はまだ子供である。
 この量の仕事をこなし、疲労で倒れていてもおかしくない。
 
 
「……ッ!」
 
 
 提督は立ち上がり、F/A18の机に向かう。その付近の床に彼の身体は見つからなかった。
安心すると同時に、どこにいるのか疑問符が浮かんだ。
 ふと、提督はソファに目を向ける。
 
 
「あ」
 
「……」
 
 
 そこには彼女が横になっていた。上下に規則よく動く胸から、ただ休んでいるだけだと分かる。
 
「すぅ……すぅ…すぅ」

「よかっっったぁ〜〜……!」

子を探す親鳥が子を見つけた時のように、提督は喜び、ゆっくりと近ずいて行った。

(可愛い寝顔だ)

F/A18のほっぺ、とても可愛い。同性だから、多分大丈夫。
ほっぺをぷに、と押してあげたいと思ってしまった。

人は好奇心には中々抗えない。提督はダメだと分かっていながらも
F/A18のほっぺに手を伸ばして、少し押してみた。
人肌の優しい温かさと、弾力。
なんだが、包み込まれるような感覚を、味わった。


────────────────────────

 F/A18の瞼がゆっくり開かれ、その瞳に見つめられる。
 
 
「私の寝顔なんて見ても、別に楽しくないよぉ?……
 寝坊だけに飽き足らず、人の寝顔にまで手を伸ばすなんざ、提督……さては反省してないなぁ?」
 
「ま、まさか! ちゃんと反省してるよ!」
 
「どうかねぇ……反省してるようには見えないけどな。ま、気にしない。
変に言いふらしたりする奴じゃないってのはあ、知ってるつもりだから」
 
F/A18が、ソファに横たわったまま、ジトッとした目で、こっちを見てくる。
見ていると、まるで吸い込まれるような気がしたので、目を逸らした。

「さて…この仕事を片付けないとね」

「提督、私も手伝う」

「いいよ。F/A18。頑張ってくれたし、ゆっくり休んでて」

ニコッと笑顔をF/A18に送ってあげると、F/A18もニコッと笑顔を返してくれた。
そうしたら、自分は資料のビルをばらし、仕事を始めた。

───────────────────────────

「えー…第1回定例会議を始めます」
書記役を務めているのは、EF-2Aだ。
会議室にあるホワイトボードには、定例会議の内容が書かれている。

「第1回なのに定例会議とは?」
そう発言したのはyak-131だ。

「議題に入りますが、1つ目は、鎮守府と大本営の連絡が途切れたことです。そしてその要因」

「なんだって!?」「ありえない」

会議室の中に鎮守府のメンバーの驚いた声が響く。
大本営との連絡が途切れることは普通有り得ないことだ。
離島でも海底ケーブルにて繋がっている。

「それで、途切れた理由を議論したいのですが」

「はい!」
最初に手を挙げたのはF15Sだ。
「ただ、連絡用の電線が切れただけでは?」

「んー…それもありえますが、それなら衛星経由で送られるはずなのですが、
最後に送られてきたのは、ただの状況報告で、何も無く……」

「はい!」
次に手を挙げたのはSU30だ。
「何かしら、大本営で停電が起きたのでは?」

「有り得ますね…」

「くぁ~…それは無いんじゃないかなぁ~」

反論したのはF/A18だ。眠そうにしながら、
机の上に資料を出し、詳しく説明し出す。

「これは大本営があるビルの設計図だよぉ~。
ここみたいにさぁ?内蔵電源があるからぁ~、…たぶん、それは無いんじゃないかなぁ~ぁ?」

そう言い終わると、腕を伏せて、寝ようとした。

「えーと…じゃあ、F/A18さんはなにか…」

「私かぁ…私はねぇ~、大本営が深海棲艦に占拠されたんじゃないかな~…って、思うけどね~」

「ふむ…有り得ます」

ピロロロロロロ

メールが届いた。
提督の携帯だ。

「ん、メール見たい。見てみるね。
えっと…」

提督は目を細めてみてから、一気に目を見開いて、
ゆっくりとみんなの方を見た。

「『大本営攻略サレ』」 
 

 
後書き
サレ:された、投稿主が作ったものです、すみません

こういう作り方はどうでしょうか?
個人的にはいいのですが… 
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