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片目片腕の提督

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第二章

「それでな」
「ああ、そのことか」
「普通そうなったらな」
「もう引退だな」
「そうするだろ、名誉の負傷だしな」
 どちらも戦場で受けた傷だからだというのだ。
「貴族でもあられるしな」
「年金を頂いてな」
「余生を過ごせるだろうに」
「それでも戦いのさ」
 同僚の水兵は笑って話した。
「あの方は」
「イギリスの為にか」
「ああ、だからだよ」
「そうしたお身体になられてもか」
「戦われるんだよ」
 そうだというのだ。
「今もな」
「そうなんだな」
「片目片腕になられてもな」
 右目と右腕を失おうともというのだ。
「それでもだよ」
「そうなんだな」
「ああ、イギリスの為にな」
「イギリスの海を守る為にか」
「そうさ、だったらな」
 同僚の水兵は若い水兵に笑って言った。
「俺達もな」
「ああ、全力で戦わないとな」
「そうだ、提督がそうして戦われるんだ」
「それなら俺達もな」
「ああ、やってやろうな」
「フランスやっつけような」
「スペインもな」 
 笑顔で誓い合った、そしてだった。
 ネルソンの艦隊はトラファルガーでフランス、スペイン連合軍の艦隊との戦闘に入ることになった。ここでネルソンは言った。
「ここで決めよう、三列縦隊だ」
「艦隊をそう編成し」
「そのうえで、ですね」
「敵艦隊に突撃しますね」
「そうして戦う、ヴィクトリー号も先頭に立つ」 
 艦隊のそれにというのだ。
「そして戦おう、では行こう」
「了解です」
「ここでフランスとスペインの艦隊を叩き」
「敵の海軍力を奪い」
「彼等の上陸を阻止しよう」
「イギリスの為に」 
 ネルソンは強い声で言った、そうしてだった。
 戦闘に入った、この戦いで彼は戦死したが勝利を収めたことは歴史にある通りだ。片目片腕の英雄として歴史に名を残している。


片目片腕の提督   完


                  2024・12・21 
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