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彼は いつから私の彼氏?

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第8章
  8-1

 春休み4月の初め、3泊4日の合宿がいつもの琵琶湖沿いの旅館で。旅館に着くと、持ってきた各自のお弁当を琵琶湖を眺めながら食べて、しばらくしたらその砂浜を25分間往復して走らされた。それから、15分の休憩の後、体育館に集合して、柔軟の後、その壁沿いにうさぎ跳びで2周。すでに、脚もガクガクしていたのだ。

 この前卒業したクラブのOBで響先輩と美玖先輩も参加していて、私達中学の後、高校の連中が合宿に来るので、そのまま合流するんだと言っていた。

 練習には、主に私が燕キャプテンと朝咲先輩の相手をしていて、響先輩は主に花梨と香を相手にしていた。コーチはしきりに若葉を指導していたのだ。

 その日の練習の終わりの砂浜でのジョギングと全力疾走の後、私と花梨、若葉が監督に呼ばれて

「若葉 水澄とダブルスを組め 花梨はシングルに専念しろ お前はエースになるんだ」

 私達は若葉が言っていたように予想していたことだったので、素直に

「わかりました」と、3人が応えると、監督は反応が意外だったのか言葉に詰まっていたが

「コーチと響の意見も聞いたが 考えが一致した。 いいか? 今年は去年のリベンジだ 全国制覇だぞ お前等3人は主力なんだ 香も仲良いみたいだから ハッパ掛けろ!  お前等が引っ張って行くんだぞ そのつもりで合宿を迎えろ」

 若葉が予想していた通りだった。花梨も覚悟していたみたいなのだ。「ヨシッ」と気を引き締めているのがわかった。次の日から花梨は砂浜を走るのも先頭を切ってるし、練習中でも声がひときわ大きかったのだ。私は、別の意味で砂浜を走る時でも自分でステップを切るようにして鍛えていた。私は、身体も大きくないから、スマッシュの時にステップしながら勢いで打ち込んで、回転を掛けて、確実にイレギュラーバウンドさせようと思っていた。そして、次の日から私と若葉のダブルスの練習も始まったのだ。

 3日目、午後から個人の対抗試合をすることになって、私は朝咲先輩に勝って、燕先輩とは最終までもつれたけど、負けてしまっていた。新しいシューズも調子が良くって、飛ぶように跳ねていたんだけどなぁー。その後、花梨と燕先輩が当たって、やっぱり最終ゲームが取りあいになって16-15の時に燕先輩のミスで花梨が勝ち上がった。相手は、美麗先輩、香に勝って上がってきた若葉と決勝なのだ。だけど、花梨も疲れてしまっていたのか3-1で若葉が勝っていた。

 合宿も明日の午前中で終わりになっていて、その対抗試合の後、石切コーチから
「明日、打ち上げ後の帰りに京都で都女学院と練習試合をするのはみんなわかっているな 団体戦だ そのメンバーを発表する」

「トップ 燕 2番 美麗 3番ダブルス 水澄、若葉 4番 朝咲 5番 美雪 いいか? 先に3勝しても5戦やるんだ 全部取りに行くぞ」

 花梨の名前が呼ばれなかった。花梨のほうを見ると口を噛み締めるようにして、下を向いていたのだ。どうしてぇーとコーチを見ても涼しい顔をしているのだ。監督は花梨にエースになれって言ってたじゃぁない!  解散しても、私は花梨にどう声を掛けて良いのかわからなかった。だけど、響先輩が花梨を連れ出していたみたい。

「なぁ 若葉 どう思う?」

「う~ん ウチもわからんのやー でも、さっきの試合 迫力無かったなー いつもと違った 香 一緒に練習してたやんかー なんか・・・」

「そーやね いつものキレが無かったかなー 球が浮いたことが多かった 昨日の若葉との試合から・・・調子 悪いんやろな アレが来たんかな」と、呑気なことを言っていた。

 私達3人で入浴して、夕食の時に花梨が揃った。以外とすっきりとした顔をしていたのだ。最終日なので、食卓にはワンプレートでなくて、近江鶏という甘辛のとんちゃん焼きにサラダ、ビワマスのお造りと鮎の南蛮漬け、きのこと春キャベツのお味噌汁と合宿にしては、割と豪華なのだ。

「う~ん このとんちゃん焼き 柔らかくて、歯ごたえもあって美味しい!」と、普段の花梨に戻っていた。落ち込んでいるんじゃぁないかと心配するほどでも無かったのだ。私も香と「この ビワマス? 脂も乗っていて美味しいネ 初めて」と、話し合っていて花梨のことも忘れていたのだ。

 そして、次の日、合宿所を離れる時、響先輩が私と若葉を呼び寄せて

「あなた達は、実力的に言っても相手を上回ってるのよ いい? 水澄はアホやから、若葉がコントロールするのよ でないと、この子 調子に乗ってどんどん打ち込んでいくからー 今 あなた達の本当の実力を見せたら、全中までに競争相手から研究されるからネ」

「わかりました」と、若葉は言ってたけど

「先輩ぃー 私はアホですか?」

「ふふっ 言葉のアヤよっ! 花梨は成長したけど、あなたはまだ無鉄砲に相手に向かっていくのよ 少しは成長してるけど 水澄は卓球バカよ まぁ、試合 頑張ってネ」

 対校試合は我がチームは調子が良くって、5-0で圧倒的勝利を収めていた。その帰りの電車の中で花梨が

「みんな 心配させたと思うけど・・・ウチは落ち込んでへんでーぇ 響先輩が気付いていたんやー ウチ 無理し過ぎたんか、右の足首が痛かってん たいしたこと無いと思ってたんやけど 響先輩が 今 無理して、引きずったらどうするのよーって あなたは全中に向けてエースになるんでしょって それより、メンバーの試合を離れてじっくり観察しなさいっても だから、監督にも忠告したって そらぁー メンバーの発表を聞いた時はショックやったでー でも、響先輩に諭されてな スッキリしたんや」

「そーやったんやー でも 今は? 痛いんかぁー?」

「あぁ 大したことないと思うでー 疲労なだけやと思う 一応 病院で診てもらうけどー」 
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