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金木犀の許嫁

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第四十四話 色々楽しんでその九

「読むにあたってね」
「マラソンですね」
 ここで白華はこう言った。
「長編は」
「そう、じっくりと長くね」
「読むので」
「だからね」
 その為にというのだ。
「一気に読もうと思わないで」
「時間をかけて」
「そうしてね」
 そのうえでというのだ。
「じっくりとね」
「マラソンみたいに」
「読むもので」
 そうであってというのだ。
「少しずつでもね」
「読んでいくことですね」
「途中で他の本でもいいし」
「そうしてもですね」
「一巻読んだらね」 
 そうすればというのだ。
「他の本読むとか」
「そうすればいいですか」
「大長編はね、ああ無情なんてね」
 またこの作品の話をした。
「文章がそうだから」
「暗くて」
「もうお説教されてるみたいだから」
「原文がそうだったんでしょうか」
「フランス語のね」
 ユゴー自身が書いたというのだ。
「それで訳した人の個性もあるし」
「その人の文章もありますね」
「それでね」
 その為にというのだ。
「もうね」
「暗くて」
「それでね」
 そうであるからだというのだ。
「四冊あったら」
「四冊一気に読まずに」
「少しずつね」
「一冊ずつですね」
「読んでいって」
「途中に他の作品読むんですね」
「テーマ自体はわかりやすいし」
 作品のそれはというのだ。
「三銃士でもああ無情でもですね」
「人間素晴らしいでしょうか」
「頑張る人はね、まあキリスト教は入るわね」
「宗教はですね」
「もうそれはね」 
 信仰の要素はというのだ。
「どの国でもね」
「ありますか」
「日本だってそうだしね」
 自分達の国もというのだ。
「源氏物語も平家物語も仏教の考えがね」
「強いですか」
「源氏物語は恋愛小説で」
 これはこの作品を現代語訳した作家の一人田辺聖子が言ったことだ、大阪で生まれ育ち作風はまさに大阪のおばちゃんの観点からきている。
「仏教小説でもあるのよ」
「仏教の考えも強いですか」
「そう言われてるわ」
「そうなんですね、そういえば」 
 ここで白華は気付いて言った。 
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