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神々の塔

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第九十話 最後の戦その十一

「やったか!?」
「その筈や」
 芥川は中里に応えた。
「これでな」
「そうやな」
「ああ、ただ相手は神霊さんでな」
「その中でも特に強い方やな」
「そやからな」
「若しかしたらやな」
 中里は今自分達が最も恐れていることをあえて言葉に出した。
「天照大神さんは」
「まだ戦えるかも知れへん」
「そして戦えるなら」
「僕等の負けや」
「そうなるな」
「さあ、どうなる」
 芥川は自分がもう動けないことを実感しつつ言った。
「女神さんはまだ戦えるか」
「果たして」
「安心するのです」
 ここで女神の優しい声がした。
「貴方達は勝ちました」
「そう、ですか」
「はい、これでです」 
 見れば十人の前に毅然として立っている、だが今は強い光を放っていない。
「貴方達はこの塔を踏破しました」
「最後の戦にも勝って」
「はい」
 まさにというのだ。
「完全にです」
「終わったんですね」
「貴方達のこの塔での戦は」
「よかったです」
 綾乃は全身から力が抜けていくことを感じながら言った、戦が終わりようやくとなりそうなっているのだ。
「ほんまに」
「後はです」
「はい、上の階にですね」
「行くのです」
「そうしたら」
「この塔での全ては終わります」
「そうですね」
「ですから」
 その為にというのだ。
「まずはです」
「下の階の宿屋に戻って」
「休まれて下さい」
「身体を清めて全てが終わる宴を開いて」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「ゆっくりと休まれてから」
「あらためてですね」
「上に進んで下さい、ただまだ終わりではありません」
 天照大神は一行に忠告した。
「そのことは頭に入れておいて下さい」
「まだ敵が出たり罠があったり」
「そうしたことはないですが」
 綾乃に答えた。
「まだ終わっていない」
「そのことはですね」
「しっかりとです」
「頭に入れて」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「最後の最後まで油断しない」
「そうしないとあきませんね」
「覚えておいて下さい、とはいっても」
「そのつもりです」 
 綾乃は確かな声で答えた、他の面々も確かな顔で頷いている。
「うち等全員」
「それでいいのです、例え最後の戦が終わってもです」
「油断せえへん」
「それが出来ていることは」
 まさにというのだ。
「見事です、成長している証の一つです」
「そうですか」
「ではです」
「これからですね」
「宿屋に入って下さい」
「そうさせてもらいます」
 綾乃が応えてだった。
 一行は神霊達に深々と一礼してから下の階に戻った、そして階段の傍にある宿屋に全員で入ったのだった。最後の戦が終わっても塔での冒険はまだ続いていた。


第九十話   完


                    2024・9・15 
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