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マジカルティーポット

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第一章

               マジカルティーポット
 魔女のマリアンヌ=サガンは極端な面倒臭がりである、若い頃からそうだったが九十になった今はさらにだった。
「息をするのも面倒臭いのう」
「またそんなこと言って」
 曾孫で高校に通いながら彼女の弟子として魔法を教わっているジョゼフィーヌ=デュパンが言った。曾祖母が言うには長い巻いた巻き毛の髪の毛とはっきりした青い目と楚々とした顔立ちと白い肌に一五七センチの見事なスタイルである。二人共服は黒い魔女の長いローブと三角帽子といったものだ。尚マリアンヌは曲がった鼻に皺だらけの顔に白髪と如何にも魔女といった外見になっている。
「面倒臭がりなんだから」
「昔からだからのう」
「若い頃からよね」
「そうじゃ、それこそな」
 マリアンヌは自分の席からさらに言った。
「最近は起きるのもな」
「面倒臭いのね」
「ずっと寝ていられたら」
 そうであるならというのだ。
「どれだけいいか」
「何処も悪くないから動きなさいよ」 
 曾孫の言葉は厳しかった。
「さもないと本当に動けなくなるわよ」
「それで毎日散歩してか」
「魔法も使ってね」
「お前に魔法を教えるか」
「弟子だしね」
「それでお前がわしの跡を継ぐんじゃな」
「そう、魔女になるわ」
「そうじゃな、じゃあ今お前に譲ってな」
 ジョゼフィーヌに笑って話した。
「わしはもう一日ベッドの中じゃ」
「兎に角何もかもが面倒臭いのね」
「うむ、紅茶を射れるのもな」
 このこともというのだ。
「わし等の国フランスはコーヒーの国じゃが」
「ひいお祖母ちゃん紅茶派だしね」
「イギリス人の様にな」
「そうよね」
「そこは好みじゃ、しかし紅茶を淹れるのも」
 このこともいうのだ。
「面倒臭いのう」
「自分でしてね、私は私のを淹れて」 
 曾孫の言葉は厳しかった、見れば師でもある祖母の傍でせっせと作業をしている。それとともに口を動かしている。
「ひいお祖母ちゃんはね」
「わしの紅茶を淹れることか」
「そうして動いてね」
「運動にしてか」
「そして頭も使うのよ」
「動くとその分頭も使うからのう」
「だからね」 
 その為にというのだ。
「いいわね」
「厳しいのう、ではじゃ」
 マリアンヌはジョセフィーヌの言葉を受けて言った。
「魔法を使うか」
「魔女らしくっていうのね」
「うむ、このティーポットをな」
 丁度座っているテーブルにあったそれを手に取って言った。
「魔法を仕掛けてな」
「そうしてなの」
「自然とお湯を沸かしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「ついでにティーセットもここに飛んで来る様にしてな」
「魔法で」
「ティーパックもお菓子もな」
「魔法で飛んで来る様にして」
「わしが何もせずともな」 
 まさにその場から動かずにというのだ。
「お茶が淹れられる様にするか」
「魔法を使うなら」
 ジョゼフィーヌはマリアンヌにそれならと述べた。
「私もね」
「よいな」
「ええ、魔女だからね」
 自分達はというのだ。 
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