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ドラキュラの末裔

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第一章

                ドラキュラの末裔
 ブカラスカ伯爵ブラド十三世は実はブラド賛成、あの串刺し公と言われた人物の末裔である。この人物は実は吸血鬼だったとの噂もあるが。
「何を隠そう私もそうだ」
「って吸血鬼実在したんですか」
「隠したことはない」
「隠せよおっさん」 
 黒髪をオールバックにした面長で丸い目で鷲鼻で痩せた長身の彼にだ、日本の大学生でルーマニアに留学に来ている荷田卓哉は即刻突っ込みを入れた。色白で太い眉にいささかバタ臭い顔をした一七〇位の背の黒髪の青年である。
「洒落になってないだろ」
「安心しろ、生物学的には人間だ」
「けれど今吸血鬼って言ったじゃないですか」
「だから血を吸ってだ」
 伯爵は平然として答えた。
「栄養と出来るだけだ」
「変身したりとかは」
「蝙蝠や狼にだな」
「そういうのは」
「魔術を学べば出来る、身体のこととはだ」
「別ですか」
「家宝でそうしたことを書いた魔術書があるからな」 
 だからだというのだ。
「私も読んだから出来るが」
「そうなんですね」
「うむ、だが身体はな」
「吸った血を栄養に出来るだけで」
「別にだ」
 これといってというのだ。
「普通の人間と変わらない」
「じゃあ日航も平気ですか」
「白人なので色素は弱いがな」
 それでもというのだ。
「大丈夫だ、ついでに言うと私はカトリックだ」
「十字架も大丈夫ですか」
「銀アレルギーもなくな」
 吸血鬼は銀が苦手だがというのだ。
「そして大蒜料理は好物だ」
「映画の吸血鬼とは違いますね」
「ドラキュラ伯爵とはな」
「だから人間と同じですか」
「実際に今は薬剤会社を経営してだ」
 そうしてというのだ。
「共産圏から資本主義になった祖国で資産家としてだ」
「知られていますね」
「伯爵であることもまた言える様になった」
 共産主義でなくなってというのだ。
「もっと言えば国王陛下も戻られて何よりだ」
「今女王陛下ですね、この国」
「大統領もいてな」
「そうした国家体制になりましたね」
「うむ、それで私に話を戻すが」
 伯爵はお忍びで入ったブカレストの飲み屋でたまたま知り合った荷田にさらに話した。
「別に人の血は吸わん、というか生ものはな」
「お嫌いですか」
「君達日本人は好きだな」
「刺身大好きです」
 荷田はカウンターの自分の席の隣にいるスーツ姿の伯爵に答えた、彼はラフな服装である。
「ルーマニアじゃあまりないですが」
「そうだな、だが我が国ではな」
「生ものはあまり食べないですね」
「どうしてもな、それで血もだ」
 これもというのだ。 
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