一パーセントからの結末
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六章
「ベイスターズが出来たなら」
「阪神もだね」
「カープに決まってるでしょ」
そこは譲らなかった。
「もうね」
「そう言うんだ」
「言うわよ」
負けないといった感じで返す。
「もうね」
「そう言うんだ」
「そうよ」
まさにというのだ。
「引かないから」
「阪神は奇跡を起こすチームなんだけれどな」
「どんな奇跡よ」
「まさかの逆転のな」
「いや、されてない?」
千佳はジト目になって言い返した。
「逆転って」
「そうかな」
「そうよ、毎年ね」
「気のせいだよ」
「違うでしょ、そこは」
「それ言うとカープもじゃないか」
兄も負けじと言い返した。
「そうだろ」
「否定出来ないわ」
千佳は歯噛みしつつ答えた。
「私もね」
「そうだよな」
「今年の九月のこと見たら」
「そっちも奇跡だけれどな」
「マイナス方面にもね」
「しかしな」
それでもとだ、寿は言った。
「いい奇跡だってな」
「起こせるのね」
「その筈だよな」
「それはね」
千佳も否定しなかった。
「そうよ」
「だからな」
「来年以降期待ね」
「そうだよ」
「結局そうなるわね」
「シーズン終わったらな」
それならというのだ。
「そうなるだろ」
「皆ね」
「終わったことは戻らないんだ」
寿は強い声で言った。
「もう絶対にな」
「時間は戻らないからね」
「戻るとしたら」
それはというと。
「タイムマインじゃないと無理だ」
「そうよね」
「だからな」
それでというのだ。
「来年のことを考えるんだ」
「希望を持って」
「そうだ、それで阪神は来年は奇跡を起こすか当然の様にな」
「勝って優勝ね」
「そうするからな」
「それ言うとうちも負けないわよ」
千佳は強い声で返した。
「九月の雪辱よ」
「二度とあんなことにならないか」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「来年こそね」
「優勝か」
「やってやるから」
「じゃあ来年も勝負だ」
「望むところよ」
兄妹で言い合った、そして牧選手の満塁アーチで勝った試合を観終わった。そうして上機嫌でそれぞれ予習と復習に向かったのだった。
一パーセントの結末 完
2024・11・27
ページ上へ戻る