| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

新オズのかかし

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八幕その五

「ちゃんと嬢ちゃん達も飲める子供用の酒もあるからな」
「飲んでいいんですね」
「そこにな」 
 そのラム酒にというのです。
「ライムを絞った汁を入れてな」
「飲みますね」
「それが船乗りの飲み方なんだよ」
「そうそう、そうして飲まないと」 
 ジムがここで言ってきました。
「壊血病になるからね」
「外の世界じゃそうだったな」
「それで今もね」
「わし等はそうして飲んでるんだよな」
「船の上だとね」
「それで今日も昼もな」
「副大統領が作ったお料理とね」
「そっちを楽しもうな」
「そうしようね」
 こうしたお話をしてでした。
 皆は船での時間を過ごすことになりました、船は出港して港町の傍の海を遊覧しはじめました。そうしてです。
 皆で甲板の上にテーブルと席を出してジョンが作ってくれたお料理を楽しみました、どのお料理もとても美味しくてです。
 皆青い海と空を眺めつつ食べてです、笑顔で言いました。
「いやあ、こうして海の上で食べるって」
「このこともいいね」
「ジョンさんのお料理も美味しいし」
「ライム汁を入れたラム酒もよくて」
「いいわね」
「喜んでくれて何よりだ、遠慮はいらないからな」
 ジョンも食べています、そのうえでナターシャ達五人に言うのでした。
「どんどん食ってくれよ」
「わかりました、ただ」
 ナターシャはオムレツ、大きくてケチャップをかけたそれを食べつつ言いました。
「ジョンさんは海賊で」
「ああ、大統領達とな」
「裏切ったりして」
「何度もやり合ったな」
「そうでしたね」
「それは昔のことでな」
 それでとです、ジョンはバーコンとジャガイモをバターで炒めたものを食べながらそのうえで答えました。
「今はな」
「ああしたことはですか」
「しないさ、わしは地獄に行くってな」
 その様にというのです。
「思っていたけれどな」
「オズの国におられますね」
「嬉しいことにな、多分な」
「多分?」
「わしを好いてくれる人が多くてな」
 そうであってというのです。
「オズの国に来られたみたいだな」
「そうなんですね」
「ああ、どうもな」
 そうだというのです。
「わしが思うにな」
「君は確かに悪人だったね」
 かかしも言います。
「けれどね」
「それでもですか」
「何処か憎めないところがあって」
 そうであってというのです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧