ハッピークローバー
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第百四十八話 本物その十
「だから幽霊でいられるなら」
「まだいいのね」
「このお化け屋敷でも餓鬼はないでしょ」
「そうね」
ケニアの娘も確かにと頷いた。
「一人もね」
「妖怪と餓鬼は違うのよ」
「あれっ、そうなの」
ケニアの娘は富美子の話に首を傾げさせて返した。
「妖怪の本とかだとね」
「餓鬼は妖怪さんの中に入ってるっていうの」
「そうだけれど」
「本ではそうでもね」
餓鬼は妖怪に分類されているがというのだ。
「実はさらにね」
「卑しいの」
「妖怪さん達は卑しくないでしょ」
「そうね」
ケニアの娘も確かにと頷いた。
「言われてみれば」
「そうでしょ、コミカルで剽軽でね」
「怖い妖怪さんがいてもね」
「親しみ持てるわね」
「妖精さん達と同じ存在だからね」
「そうでしょ、けれどね」
妖怪達はそうであるがというのだ。
「餓鬼は徹底して卑しくて浅ましい」
「そうした連中なのね」
「もうとことんまで堕ちて」
人ですらなくなり無論妖怪でもないというのだ。
「それでね」
「そのうえでなのね」
「餓鬼は餓鬼で」
「妖怪さんでもない」
「そうした存在よ、人があまりにも卑しく浅ましく生きて」
「なるものね」
「なり果てるのよ、ほら性格が悪過ぎて」
そうであってというのだ。
「いいところなんてないって奴いるでしょ」
「ごく稀にね」
ケニアの娘はこう答えた。
「いるわね」
「そうした奴がよ」
まさにというのだ。
「餓鬼になるから」
「そう言われると妖怪さんじゃないわね」
「そうでしょ」
「屑ね」
「そう、人間の屑がね」
そう呼ばれる様な輩がというのだ。
「なるから妖怪さんとはまた違うから」
「お化け屋敷にもいないのね」
「そう、餓鬼は餓鬼であって」
それでというのだ。
「親しみなんて持てないのよ」
「妖怪さん達には持ててもね、あんたが知っている人間の屑がね」
「餓鬼になるのね」
「そう思っていいわ」
「そう聞くとわかりやすいわね」
ケニアの娘もそれならと応えた。
「私も人間の屑見てきたしね」
「生きてると見るわよね」
「生きる価値すらない」
それこそというのだ。
「もっと言えば生きていてはいけない」
「この世にね」
「人間の長所なんてなくて」
その中にだ。
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