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星河の覇皇

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第八十七部第四章 首相官邸にてその十三

「それでね」
「マッコリも飲まれますね」
「実際によく合うしね」
「左様ですね」
「あの金内相も」
 連合で今最も有名な韓国人である彼女もというのだ。
「好きらしいわよ」
「マッコリが」
「彼女は無類の甘党でね」
「兎角甘いものを好まれますが」
「焼き肉もお好きでね」
 尚野菜もよく食べることで知られている。
「それでね」
「マッコリもですか」
「お好きとのことよ」
「そうですか」
「それで私もよ」
 伊東にしてもというのだ。
「マッコリはね」
「お好きですか」
「飲める時は飲んでいるわ」
「そうですか」
「とはいっても最近多忙で」
 それが極まっていてだ、一国の宰相が多忙なのは当然だがここ暫くの伊東はとりわけそうであるのだ。
「お酒自体をね」
「飲めないですね」
「首相官邸から離れられないわ」
「常にですね」
「あと数日で終わりそうだけれど」
「それまではですね」
「飲むなんてね」
 それこそという調子出の言葉だった。
「とてもよ」
「無理ですね」
「残念だけれどね」
「そうした時もありますね」
「いつも飲んでいるのはね」
 それが誰か、伊東は秘書官に笑って話した。
「若山牧水よ」
「あの酔漢詩人ですね」
「あの人はそれこそがね」
「持ち味でしたね」
「だからいいわ、あと南方熊楠もね」
 十九世紀後半から二十世紀前半にかけての博物学者である、極めて独特な学問と怪人物と言っていい痛快な人柄が歴史に残っている。
「何時でも飲んでいたわね」
「あの人もですね」
「けれど私はどちらの人でもないわ」
「だからですね」
「お酒はね」
「夜にですね」
「忙しくない時に飲むわ。飲み方もね」 
 これもというのだ。
「一人でね」
「静かにですね」
「飲むわ。それが好きよ」
「そうですね」
「ええ、主人と飲む時もあるけれど」
 それでもというのだ。
「やはり一番好きなのはね」
「お一人で、ですね」
「静かに飲むことがね」
 これがというのだ。
「好きよ」
「左様ですね」
「ええ、では今はね」
「ここで、ですね」
「頑張るわ」
「それでは」 
 こうしたことを話してだった。 
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