金木犀の許嫁

「生國魂神社に行って」
「織田作さんの銅像見て」
「口縄坂行って」
「織田作さんのお墓参って」
「自由軒といづも屋も行って」
「それで夫婦善哉も行って」
「織田作さんの世界満喫出来たから」
　だからだというのだ。
「よかったわね」
「出身校の前にも行ったしね」
「高津高校ね」
「織田作死んでカレー残すって」
　佐京はこの言葉も出した。
「自由軒にあったね」
「書いてあったわね」
「織田作さんの写真もあってね」
「あれもよかったわね」
「そうだったね、雰囲気のあるお店だったよ」
「昭和のね」
　夜空は笑って応えた。
「そのまま残っていたね」
「それで美味しかったし」
「また行きたいね」
「そうね、そしてね」
　夜空はさらに言った。
「夫婦善哉もね」
「いいお店だったね」
「ああした懐かしい感じのお店はずっとあって欲しいわ」
「そうだね」　
　佐京も確かにと頷いた。
「自由軒も夫婦善哉も」
「あって欲しいわ」
「ずっとね」
「だからまたね」
　是非にとだ、夜空は応えた。
「二人でね」
「デートでね」
「行きましょう」
「そうしようね」
「絶対にね、時々でもね」
「行こうね」
「そして織田作さん関連以外でも」
　彼に縁のある場所に限らずというのだ。
「色々な場所をね」
「大阪の」
「行きましょう」
「大阪には色々な場所があるね」
「だからね。鶴橋なんかもね」
　この場所もというのだ。
「面白いしね」
「あそこもなんだ」
「都島もいいし天下茶屋もね」
「西成の方だね」
「あそこも面白い場所なのよ」
「だからだね」
「一緒に行きましょう、大阪は色々な場所があって」　
　そうであってというのだ。
「何処も何度行っても楽しいから」
「デートでだね」
「何度もね」
「行くといいんだね」
「そうなの。だからまたね」
「大阪に二人で行って」
「デートしましょう」　
　是非にというのだった。
「そうしましょう」
「それじゃあね。ただね」
「ただ？」
「出来たら」
　佐京はここでこんなことを言った、地下鉄は二人それに他の乗客達を乗せて漆黒の世界の中にある線路の上を進んでいる。