決戦前夜

「思ったわ」
「そうだったのね」
「けれどね」
　千佳がまた言ってきた。
「次の試合も勝ったわね」
「最初信じられなかったわ」
　その勝利がというのだ。
「嘘でしょってね」
「試合観てたのに？」
「思ったわ」
　そうだったというのだ。
「本当にね」
「そうだったのね」
「いや、三試合目も勝って」
　そうなりというのだ。
「そこでもね」
「思わなかったの」
「だってね」
　明日夢はこう言って一呼吸置いた、そうしてあらためて言った。
「昔中日が同じ状況になって」
「三連敗したな」
　ヤクルトファンの伊藤春華が言ってきた。
「そこからあそこの暗黒時代はじまったな」
「そうでしょ、だからね」
「あの時の中日みたいにか」
「三連敗してね」
　そうなりというのだ。
「終わりってね」
「思ったんだな」
「何度も言うけれど棚ぼたで出て」
　クライマックスにというのだ。
「勝ち抜ける程甘くないでしょ」
「まあな」
　春華も否定しなかった。
「うち連覇したけれど今はな」
「二年連続五位だからね」
　同じくヤクルトファンの橋口七々瀬が言ってきた。
「それも駆け込みで」
「世の中甘くないし」
　明日夢はさらに言った。
「野球だってね」
「甘くないから」
「まさかと思ったのは事実でも」
　それでもというのだ。
「ここでね」
「三連敗して」
「終わりってね」
　その様にというのだ。
「思ってたわ」
「そうだったのね」
「それで連敗して」
　巨人にというのだ。
「やっぱりねってね」
「思ったのね」
「今日も負けて」
　そうなってというのだ。
「よく頑張ったでね」
「終わりと思ったの」
「満足していたわ」
　そうだったこともだ、明日夢は話した。
「だって三位に運よく入って」
「そこからファイナルまで進んで」
「三勝してね」
　そうなってというのだ。
「健闘したことは事実だし」
「それでなのね」
「ベイスターズよくやったってね」
　その様にというのだ。
「思ったわ」
「そうだったのね」
「それがね」
　その状況がというのだ。
「まさかね、終盤ね」
「八回で追いついて」
「向こうのエースがよ」
「菅野さんがね」
「出て来て」
「難しいと思ったわね」
「ええ」
　明日夢はその通りだと答えた。